イベントレポート

ルネサス、2ポートのUSB PDコントローラを出展

~充電しながら給電できるモバイルバッテリや、バッテリ内蔵USB Type-Cアダプタなどが実現可能に

ルネサスエレクトロニクスが展示した新しいUSB PDコントローラを採用したモバイルバッテリの試作機

 ルネサス エレクトロニクス株式会社は、6月5日~6月9日に台湾・台北市で開催されたCOMPUTEX TAIPEIのUSB Implementers Forum(USB-IF)のブースに出展し、同社のUSB関連の半導体ソリューションを展示した。

 このなかで、ルネサスは同社のUSB PDコントローラの最新製品となる「R9A02G011」と、同社が買収したIntersil由来のバックブーストNVDCチャージャー「ISL95538B」を組み合わせたリファレンスデザインのボードを展示した。

 ルネサスによれば、この2つの組み合わせを利用すると、USB PDに対応したモバイルバッテリの入出力ポートを2ポートにすることが可能になるという。

 現在市場で販売されている製品は1ポートの製品で、充電か給電かどちらかしかできない製品がほとんどだが、ルネサスの2つのチップを組み合わせると、充電と給電が同時に行なうことができるモバイルバッテリを設計することが可能になる。

USB PD対応モバイルバッテリ、新コントローラにより2ポートがデザイン可能に

 R9A02G011は、USB PD Specification Rev 2.0およびUSB PD Specification Rev 3.0に対応したUSB PDコントローラで、USB PDに対応したACアダプタ、モバイルバッテリなどを制御できる。一方でISL95538Bは、バックブーストNVDCチャージャーである。

R9A02G011とISL95538Bを搭載したリファレンスボード

 今回ルネサスが展示したのは、R9A02G011とISL95538Bを搭載した開発用のリファレンスボードで、これを利用してバッテリセルを接続して、モバイルバッテリとして動作するように構成となっている。このシステムの特徴は、充電および給電それぞれに利用できるポートが2ポート構成になっていることだ。

左側のモジュールがUSB Type-Cアダプタからの充電、右側のモジュールがPCへの給電となっている

 現在市販されているUSB PD対応モバイルバッテリは、1ポート構成になっており、充電と給電が同時にできない仕様だ。つまり、USB Type-Cに対応したACアダプタを使ってバッテリを充電しつつ、そのモバイルバッテリから出力してPCやスマートフォンも充電することは、同時には行なえない。

左側のモジュールでPCに給電、右側のモジュールでスマートフォンに給電という形のデモ。2ポートをサポートしたコントローラならこういう使い方が可能

 しかしこのシステムでは、充電と給電が同時に行なうことができる。つまり、ACアダプタ→モバイルバッテリ→PCのように直列に接続すれば、モバイルバッテリを充電しながらPCにも給電を行なえる。

 さらに、どのポートも充電、給電ができるので、2ポート使用してPCとスマートフォンを同時に給電という使い方も可能。たとえば、バッテリが45Wの給電が可能であれば、PCに30W、スマートフォンの15Wを供給するなどを、コントローラが自動で調整して給電する。さらに応用すれば、ACアダプタにバッテリをを統合して、ACアダプタ内蔵のモバイルバッテリのようなソリューションも実現する。

 ルネサスによれば、すでに顧客に対して出荷も始まっており、今後リファレンスボードを参考にしながら顧客が設計して製品として出荷されるという。来年(2019年)あたりに市場に登場するUSB PDに対応したモバイルバッテリに、こうしたコントローラが採用され、より便利な使い方ができることになりそうだ。