イベントレポート
Dell、SXSWでVR/MR製品を展示。AIセキュリティの基調講演も
2018年3月14日 13:00
Dellは、3月9日~17日(現地時間)に米国テキサス州オースティン市で開催されている「SXSW Conference & Festivals」(サウスバイサウスウェスト・カンファレンス・アンド・フェスティバル)に出展した。
ゲーミングPC、VR、MRなどのハードウェアを展示して、SXSWの参加者にアピール
「SXSW Conference & Festivals」は、もともとは音楽祭から発展したイベントだが、音楽、フィルム、インタラクティブ、ゲームという複数のテーマで行なわれる総合的なイベントに成長。現在では、インタラクティブのテーマにスタートアップ企業が多数参加するなど、IT系のイベントとしても注目を集めるようになっている。
SXSWのイベントそのものは、メイン会場のオースティンコンベンションセンターで、展示会と各種カンファレンスプログラムが実施されているが、それ以外にも周辺の会場で講演や展示などが行なわれている。
そして、Dellの展示会場となる「The Experience」は、オースティンコンベンションセンターの真向かいという好位置にあるため、オープンアワー(SXSWのバッジを持っていれば誰でも入れる時間)には多くの来場者で賑わっていた。
すでに述べたとおり、SXSWは音楽祭からスタートとしたという歴史的な経緯もあり、イベントそのものもかなり開放的で、Dellの会場にかぎらず、どこの会場でも来場者はビールを片手に陽気に回っていくという風景が繰り広げられており、Dellのイベントでも夕方になるとビール、そしてバンドによる生演奏などがはじまるなど、普段のPC系のイベントとは、だいぶ趣が異なっている。
Dellは今回の展示で、VR関連にとくに大きなスペースを割いていた。Alienwareブランドのゲーミングデスクトップ/ノートブックと、HTCのViveを利用したデモ、さらには昨年(2017年)発売が開始された、Windows Mixed Reality(以下Windows MR)のHMD「Dell Visor」を利用したデモといったVR/MR系のブースが置かれ、Dell Visorのデモではハンモックで横になりながら体験ができるコーナーが用意されており、来場者はリラックスしながらWindows MRを楽しんでいた。
また、“インスタ映え”しそうなLEDライトを多用したDJブースのようなVR体験コーナーも用意されており、SXSWらしい展示の形にもこだわりが感じられた。このほか、先日のCESで発表したNew XPS 13(9370)の展示では、コンシューマのライフスタイルを意識し、やはりこちらもインスタ映えしそうな展示を展開していたのが印象的だった。
AIやVRに関するプレゼンテーションやパネルディスカッション
メインステージでは、連日Dellのソリューションに関する各種のプレゼンテーションや、パネルディスカッションなどが行なわれている。会期4日目の3月12日には、AIに関するプレゼンテーションとVRに関するパネルディスカッションが実施された。
AIに関するプレゼンテーションを行なったのは、Dell Technologies(Dellの親会社に相当する)の子会社である、RSA社のCTO(Chief Technology Officer)を務めるズルフィカール・ラマザン氏だ。
ラマザン氏はサイバーセキュリティ分野の専門家で、2015年3月から現職で、おもにRSAでは技術戦略立案などを担当している。このため、ラマザン氏の講演ではAIをどのようにサイバーセキュリティに活用していくかという話が中心になった。
ラマザン氏は、「AIの歴史は半世紀以上、1950年代にAIは考案され、すぐに機械学習の仕組みが導入された。しかし、それから半世紀近くほとんど忘れられていたが、近年処理能力が向上して深層学習が実用になってきたことで、AIを巡る環境が大きく変わった」と述べ、AIが深層学習により大きく進化していると説明した。
その具体的な例として、1997年にチェスの世界王者に勝ったIBM Deep Blueの例と、昨年話題になった囲碁の世界チャンピオンに勝ったGoogle AlphaGoの例を挙げ、すでにDeep Blueの性能をスマートフォンが上回っているとして、AIが進化したことで、サイバーセキュリティの世界でも課題に直面していると述べた。
たとえば、CAPTCHA(Completely Automated Public Turing test to tell Computers and Humans Apart)について、「もともとCAPTCHAは人間とコンピュータを区別するために導入したものだったが、コンピュータにAIの機能が搭載されるようになれば、それが易々と破られるかもしれない」と指摘した。
CAPTCHAとは、Webサービスを利用するときなどに、コンピュータが機械的に行なっているのではなく、ユーザー自身が操作しているという証明のための試験プログラムだ。Webブラウザで、画面に表示されるアルファベットの入力を要求されるといった認証方式がそれだ。
コンピュータでは画像の認識はかなり難しい処理であり、CAPTCHAは有効に働いていた。しかし、AIにより画像認識は容易になりつつあり、スマートフォン用のSoCに深層学習のアクセラレータ機能が搭載されている例が増え、それらを活用すれば、CAPTCHAを破られる日も近いとラマザン氏は指摘。今後は対策方法を研究していかないといけないと述べた。
また、VRに関するパネルディスカッションでは、VRのメディア企業「VRScout」ファウンディングパートナーのマリア・プロブスト氏が司会進行を務めて、Dell関係者らによるVRの議論が行なわれた。
普段のDellのパネルディスカッションでは、どうしてもハードウェア寄りの話になるのだが、今回はVRのコンテンツの話が中心で、軍事目的でVRを活用するさいの課題、VRの体験に知覚体験を付加する4D体験などに関しての議論がなされた。また、防水のVR HMDを利用してプールに入れば、スキューバダイビングのVRコンテンツをもっとリアルに体験できるが、音をどのように再現したらよいかなどが興味深い議論が行なわれていた。