イベントレポート

Qualcomm、Oculus/Xiaomiの協力でスタンドアロンVR HMDを開発

新しくなったQualcommのロゴ

 Qualcommは、CESのプレスデーにあたる1月8日(現地時間)に記者会見を開催し、オーディオ関連新製品や、Snapdragonを利用したスタンドアロンVR HMDなどに関する説明を行なった。会見には1月4日に同社の社長に就任したばかりのQualcomm 社長 兼 Qualcomm Technologies 社長 クリスチアーノ・アーモン氏が登壇した。

Snapdragon 821ベースのOculus Goの「兄弟機」をXiaomiが中国で販売す

 Qualcommは近年VR、ARそしてMRに注力しており、XR(VR、AR、MRのすべてを含むという意味)というキーワードで訴求を図っている。

 昨年(2017年)のハイエンドスマートフォンに採用されたSnapdragon 835、そして昨年の12月に発表され、今年(2018年)のハイエンドスマートフォンに採用される予定のSnapdragon 845(次世代ハイエンドSoC「Snapdragon 845」の詳細が明らかに)ではVR/AR/MRでの性能を引き上げるべく、GPUに多くのVR向け機能が追加されているのが特徴となっている。

 そうしたなかで、Qualcommの製品をいち早く採用したのが、Facebook傘下でVR HMDのパイオニア企業としても知られているOculusだ。Oculusは昨年スタンドアロン型HMDとしてOculus Goを発表して話題を呼んだ。Oculus Goは、HMDのなかにスマートフォンに相当するSoCやメモリ、ストレージなどが入っており、VRのコンテンツを直接ロードして、楽しむことができる。

 こうしたスタンドアロン型HMDのメリットは、Oculus RiftやHTC VIVEのようにPCに接続する必要がなく、かつトラッキングセンサーなどもすべて内蔵されているので、センサーとケーブルや無線で接続するという面倒もない。

 ただし、モバイルSoCに内蔵されているGPUは、ゲーミングPCで採用されているAMDやNVIDIAのGPUなどに比べると性能が高くないので、パネルの解像度をあまり上げられない。とはいえ、カジュアルなコンテンツを楽しむ場合には気軽に使えるVR HMDとなる。

 実際、OculusはOculus Goの価格を199ドルからであることを明らかにしており、ゲーミングPCも必要になるPC用のHMDに比べて気軽にはじめられると言える。

Facebook VR担当副社長 ヒューゴ・バラ氏
Oculus Go

 今回Qualcommの記者会見にはFacebook VR担当副社長 ヒューゴ・バラ氏が呼ばれ、バラ氏によりOculus Goに採用されているSoCがQualcommのSnapdragon 821だと明らかにされた。

 また、バラ氏は中国のスマートフォンメーカーのXiaomi(小米) Miエコシステム担当副社長 兼 Miラボ主任 トーマス・タン氏をステージに呼び、XiaomiがOculus Goを元に開発した(タン氏は兄弟機と表現したが、写真を見るかぎりはロゴを除きほぼ同じものだと思われる)スタンドアロンVR HMDを中国で販売するとした。

 よく知られていることだが、Facebookは中国のネット政策に反発しているため、同国でビジネスができない状態であり、それをXiaomiが代わりに販売してその穴を埋めるということだと思われる。

Xiaomi Miエコシステム担当副社長 兼 Miラボ主任 トーマス・タン氏
Xiaomiが中国で販売するMi VR Standalone
ロゴなど以外は基本的に同じに見える
会見の最後では、Qualcomm 社長 兼 Qualcomm Technologies 社長のクリスチアーノ・アーモン氏、バラ氏、タン氏が並んで記念撮影を行なった

QualcommのRFフロントエンドが多くのスマートフォンメーカーに採用される

 このほかにも、Qualcommは今回いくつかの発表を行なった。ただし、今年の製品向けの新SoCとなるSnapdragon 845は、すでに12月にハワイで行なわれたイベントで発表済みで、今回はとくになにも言及はなかった。

Qualcomm 社長 兼 Qualcomm Technologies社長のクリスチアーノ・アーモン氏

 今回新たに発表されたのは、Snapdragon 845などのモデム内蔵SoCと組み合わせて利用する、RFフロントエンドだ。

 RFフロントエンドは、SoCなどに内蔵されているモデムとアンテナの間にあってスイッチ、フィルタ、アンプなどから構成されており、その仕様によってスマートフォンやPCなどがどの帯域に対応できるかが決まってくる。

 2G/3Gの時代にはバンドといってもせいぜい数十だったのが、Gigabit LTEではキャリアアグリゲーションを含めると数千の組み合わせがある。そして5Gでは万を超えると考えられており、RFフロントエンドの重要性が高まっている。

RFフロントエンドの重要性は増している
QualcommのRFフロントエンドがセットメーカーに採用された
5G向けにチューニング可能なRFフロントエンドを計画している

 そこで、QualcommはTDKとの合弁会社RF360を設立して過半数を抑えるなどの投資を続けており、RFフロントエンドまで含めてセットメーカーに提供するという動きを強めている。

 この背景には、セルラーモデムでは競合他社であるMediaTekやIntelなどはそこまでのソリューションを持っていない(他社から調達している)ため、SoC、モデム、RFフロントエンドまでを一気通貫で提供できる体制にするという狙いがあるものと考えられる。

 今回アーモン氏はQualcommのRFフロントエンドを採用したセットメーカーとして、Google、HTC、LG、ソニーモバイル、そしてSamsung Electronicsが採用していることを明らかにし、RFフロントエンドのビジネスが進捗しているとアピールした。

QCC5100が発表され、60%の電力削減を実現

 また、アーモン氏はBluetoothオーディオ向けのSoCとして「QCC5100」を明らかにした。QCC5100は、イヤーポッド(両耳それぞれにつけるイヤフォン型のワイヤレスヘッドセット)をターゲットにしたオーディオSoCで、従来製品に比べて消費電力が60%削減することが可能だという。

 イヤーポッドのほとんどは消費電力が大きいため、バッテリ駆動時間が短い製品が多い。将来の製品にQCC5100を採用することで、消費電力を減らしてバッテリ駆動時間を延長できるため、イヤーポッド製品を計画しているメーカーなどにとっては要注目と言える。