レノボ・ジャパン株式会社は2日、Android 3.1を採用したコンシューマ向けタブレット「IdeaPad Tablet K1」および企業向けとなる「ThinkPad Tablet」を発表した。それぞれ、8月下旬から9月上旬にかけて発売される。本稿ではその発表会と、その後に行なわれた担当者インタビューの模様をお伝えする。製品の仕様などは別記事を参照されたい。
発表会ではまず、Lenovo本社バイス・プレジデントMIDH事業部タブレット事業担当ジェネラル・マネージャーのシャオ・タオ氏が説明を行なった。
同社は、直近の7四半期においてPCメーカーとして最高の成長率を記録しており、好調が続いている。しかし、同社では今後、特にモバイルインターネットが成長するとみており、2011年1月にMIDH事業部を立ち上げた。
同事業部は、今回発表されたタブレット製品のほかに、携帯電話、スマートフォン、スマートTVなどをてがけている。タブレット製品としては、3月に中国で「LePad」を発表しているが、ワールドワイドで取り扱う製品は、今回の製品が初となる。
なお、IdeaPad Tabletはコンシューマ向け、ThinkPad Tabletは企業向けと明確な線引きがされており、後者については、将来的には直販で個人に販売する可能性もあるが、当初は法人だけに提供される。
タブレットの開発に当たっては、同社のPCの強みを活かすべく、中国・北京、日本・みなとみらい、米国・ラーレイの世界3カ所にある研究開発センターで連携を取って行なわれたことが紹介された。
Lenovo本社のシャオ・タオ氏 | 今後モバイルインターネットは成長が見込まれる | PCで培った技術をタブレットにも応用 |
●コンシューマ向けのIdeaPad Tablet K1
レノボ・ジャパンの大岩憲三氏 |
続いて、レノボ・ジャパン常務執行役員、コンシューマ事業担当の大岩憲三氏が国内でのIdeaPad Tabletの販売戦略について説明した。
前述の通り、同社の業績は右肩上がりだが、今後それを維持、あるいはさらに成長させるため、特に「リテールマーケットへの投資」、「ブランド認知の向上」、「優れた製品作り」、「NECとの連携」という4つの点において訴求、差別化を行なっていくという。
同社は先だって「FOR THOSE WHO DO」キャンペーンを立ち上げたが、店頭でもそのロゴを前面に打ち出した製品展示を行なう。また、ブランド・アンバサダーに起用した元サッカー日本代表の中田英寿氏によるTV CMも打ち、ブランドの認知度を高めていく。NECとの連携については、まずコールセンター対応をNECに委託し、国内最高レベルのユーザーサポートを提供するとした。
製品については、8月26日より発売する予定だが、その後何かしらの限定モデルも発売する予定があることを明かした。また、プロセッサは他社と同じものを採用しているが、ハードウェア・ソフトウェア双方で最適化をかけたことで、いずれの競合製品よりもベンチマークで高い結果がでることをアピールした。
また、Lenovo App Shopを用意し、独自のアプリ配信も行なうという。ここでは、同社が動作検証および最適化されたアプリが提供される。現時点で、日本語化されてないものも含めると200以上のアプリがすでに登録済みという。
コンシューマ市場戦略の4つの柱 | 競合製品との性能比較 | 独自のLenovo App Shopで検証/最適化したアプリを配信 |
次に、同社コンシューマ事業、製品事業部プロダクトマネージャーの櫛田弘之氏がIdeaPad Tablet K1の特徴をデモを交えて紹介した。
ThinkPad Tabletも含め、ホーム画面には四つ葉のような大きなアイコンが配置。このアイコンは、「見る」、「メール」、「聞く」、「リーディング」という、主要な4つの用途のランチャーとなっている。
OSの標準機能である「履歴」ボタンはカスタマイズされており、起動したアプリの履歴をアイコンで表示するだけでなく、その右上に×ボタンを配し、これを押すことで、バックグラウンドで起動していても、強制終了させることができる。
IdeaPad Tablet K1には、ハードウェアでも「Optical Finger Navigation (OFN)ボタン」と呼ばれる、他社にない機構を搭載。本体右端にあるこのボタンは、押し込み可能な光学センサーとなっており、「ホームに移動」、「戻る」、「アプリのオプションメニューを表示」、および「スクリーンショットの撮影」という4つの機能を親指1つで実行できる。
●企業向けのThinkPad Tablet
土居憲太郎氏 |
最後に、同社製品事業部プロダクトマネージャーThinkPad製品担当の土居憲太郎氏がThinkPad Tabletの解説を行なった。
前述の通り、ThinkPad Tabletは企業向けの製品であり、セキュリティ面でさまざまな配慮がなされている。1つ目がポート類の無効化。PCでも企業用では、USBメモリなどによる情報漏洩の防止策として、ソフトウェアでUSBポートを利用できないようにしているものがあるが、本製品でもそれができる。また、本体内のデータおよびSDカード内のデータを暗号化する機能や、McAfeeのセキュリティソフトを標準搭載する。
このほか、プロファイルによる一括Wi-Fi設定、Cisco/JuniperのVPN対応、ActiveDirectory対応、Exchange ActiveSync対応、最大3年間のオンサイト保証なども盛り込んだ。
顧客としては、店舗/倉庫管理や接客業を想定するが、オフィス内でのMicrosoft製品利用という用途に応えるため、CitrixのWindows仮想クライアント「Receiver」をプリインストールするほか、クラムシェル型で利用できるキーボード付きケースなどもオプションで用意する。また、独自に業務用アプリを配信する「Corporate App Shop」も立ち上げる。
このほかの特徴としては、IPS液晶とゴリラガラスを採用し、通常のUSB 2.0ポートとSDカードスロットを備える。オプションで発売されるドックには、ThinkPad用の充電器を接続でき、その場合、通常の半分以下の時間で充電できる。
なお、両製品とも今後OSがアップデートされた場合、少なくとも次のバージョンまではアップデートを確約するという。それ以降については、まだOSの具体的な情報も入ってきていないので、未定とした。
3G対応については今回は見送られたが、ThinkPad Tabletでは年内にも搭載機を出す予定があるという。
●日本独自の動画配信も検討中
発表会後に、シャオ・タオ氏に単独インタビューする機会を得た。以下に一問一答を記す(以下、敬称略)。
--Android 3搭載タブレットはすでに各社から国内でも投入されていますが、ここまで時間がかかった理由はなんでしょうか。
【タオ】我々は20年間PC事業に従事してきており、我々の製品に対して顧客から求められる要求がとても高いレベルにあることを理解しています。そのため、焦らず時間をかけて、完璧に近い製品を出せるよう、慎重を期しました。その意味では、むしろ予想よりも早く完成させることができたと思っています。
--Lenovoがタブレットについてもっとも重視する点はなんですか。
【タオ】現在ユーザーは、各タブレットに特別な機能を求めていますが、我々は1つの際立った機能を提供するのではなく、全体としての統一感を重視しています。それは、主立ったアプリで操作感が統一されているということだったり、ThinkPad TabletのようにPCの周辺機器(充電器)が使えると言った点だったりします。実際、「Social Touch」という独自アプリでは、1つでメール、カレンダー、Facebook、Twitterを確認できるようになっています。
もう1つ、動画の視聴も重視しています。というのも、タブレットにおいてこれがもっとも重要視される用途の1つだからです。我々は、例えば米国ではNetflix、欧州ではEM Sportと提携し、そこで配信される動画の著作権保護技術に対応させています。
--日本での動画配信サービスの対応予定はあるのでしょうか。
【タオ】まだ具体的な予定は言えませんが、国内で専任者を立てて、日本でどのようなサービスを展開できるか模索しているところです。
我々はタブレットについて、国毎にカスタマイズを施す必要があると考えています。実際、我々のグループには数百人のソフトウェアエンジニアがいますが、その2/3は各国/地域でどういうソフトが必要かといったことに力を注いでいます。中でも日本は、最重要市場の1つと捉えており、顧客の声に耳を傾けて、その要望に応えたいと思っています。
--今回、日本独自のアプリはあったりするのでしょうか。
【タオ】今回、日本独自のアプリは特にありません。ただし、我々の独自アプリケーションのローカライズについては、英語版が最優先といった決まりはなく、今後、日本から先に提供されるアプリも登場する可能性はあります。
--メーカーによっては、TVとの連携などを打ち出していますが、Lenovo製品はいかがでしょう。
【タオ】PCにつないで、データのバックアップを行なう機能を搭載しています。
--両製品とも8.9型ではなく10.1型を選んだのは理由があるのでしょうか。
【タオ】それが多数派だからというのが大きな理由です。ただし、我々はすべての顧客の要望に1つの製品で答えられるとは思っていません。ですので、7型や5型といった他のサイズについても、模索を行なっています。具体的なことは申し上げられませんが、今後も革新的な製品を出し続けていきたいと考えています。
--タブレットについて、ライバルと考えている企業はありますか。
【タオ】今タブレット市場は猛烈な勢いで広がっており、来年には今の2倍になっているでしょう。そこで重要なのは、顧客の需要を正確に把握することで、競争は二の次だと考えています。ですので、どこがライバルということは考えておらず、目標シェアなども定めていません。
--1月に行なわれたCESでは、中国市場向けにWindowsとAndroidのハイブリッド機である「IdeaPad U1 Hybrid」を発表しましたが、これを日本展開する予定はありますか。
【タオ】あの製品は、中国市場に特化して開発されたものです。それをそのまま他国に展開することは考えていません。各国に合わせたハイブリッド機を検討中ですが、日本への具体的な投入予定は今のところありません。
--今後タブレットとモバイルPCはどのように棲み分けしていくのでしょうか。
【タオ】発表会でも申しました通り、我々のPC事業は右肩上がりで成長しており、今後も中核の事業となります。一方のタブレットは、これとは違う新しいカテゴリになると思っています。例えば、ある調査によると、PCがもっとも使われる時間は10~11時頃であるのに対し、タブレットは17~22時頃がもっとも利用されます。私もPCを持っており、それで仕事をしていますが、家でちょっと動画を見る時に、わざわざPCを起動したくはないので、タブレットを使っています。このように、タブレットはPCに置き換わるのではなく、今後新しい用途も増え、PCとは完全に異なる位置づけがなされるでしょう。
(2011年 8月 2日)
[Reported by 若杉 紀彦]