BCN、PCは3月以降台数/金額共に前年同月増に
~iPad初速はiPhone 3G発売時の3倍に

BCNアナリスト道越一郎氏

6月9日 発表



 株式会社BCNは9日、iPadと3D TV発売直後の販売動向など、デジタル機器の市場動向を発表した。

 iPadの販売台数はiPhone 3Gの3倍となるなど好調で、2010年5月のノートPC販売台数の1割を占める。3D TVは好調な出足を見せているものの、発売メーカー数、モデル数が少ないことから、2010年5月のTV販売台数の1%、金額で3%を占めるのに留まっている。また、ワールドカップ効果でレコーダは販売増、前年割れを続けてきたデジカメも販売台数、金額共に前年を上回り、「デジタル機器市場全体に明るい兆しが見えてきた」(道越一郎BCNアナリスト)としている。

 BCNではiPadをノートPCの1つに分類。今後他社から登場することが見込まれる同様のデバイスについて、道越アナリストは次のように分析している。

 「ネットブックがPCの構造変化の第1幕で、iPadは第2幕となるのではないか。ネットブックは、安さを追求し、あのスタイルとなった。iPadは、記者の皆さんのようにキーボードを頻繁に利用する作業には向いていないかもしれないが、ウェブを見る、メールを何通か送るといった個人のライトユースを快適にこなすための形状を追求した仕様となっている。マウスやキーボード操作がうまくできないなど、これまでの入力方法ではうまく操作ができない、PCリテラシーが低い人が利用できる情報端末として、利用者の裾野が爆発的に広がる可能性を秘めている。また、個人のライトユース機器は、従来のPCにもう1台買い足しとなる新需要を喚起する可能性もあり、PCメーカーにとっても大きなチャンス。ただし、同様の形状の製品がiPad 1つでは訴求力が弱いので、これから年末にかけ、各社からどういう製品が登場し、切磋琢磨していくのかが市場拡大の鍵となるのではないか」。

BCN指数によるデジタル製品全般の販売動向iPadが市場をどう変えるのか?

 実際の販売数量は、2008年7月に発売した「iPhone 3G」の発売初日の販売台数を1として、2009年6月に発売した「iPhone 3GS」、2010年4月に発売した「Xperia」、iPadの4製品について、発売日から10日間の販売台数を比較した。iPad発売日、5月28日の販売台数はiPhone 3Gに比べ2.84倍となり、iPhone 3GSの1.00倍、Xperiaの1.08倍を大きく上回った。

BCNアナリスト森英二氏

 さらに、「iPad発売から10日間の販売台数推移の最大の特徴は、日を追うごとに販売台数が伸びている点をあげることができる。発売日の販売指数が2.84だったのに対し、2日目は4.14、5日目に4.98、10日目には7.26となった。iPhone、Xperiaは用意された台数が限られていたこともあって、販売台数がなかなか伸びなかったものの、iPadはモデル数が多かったこともあり、『Wi-Fiモデルはまだ残っていて、店頭ですぐに購入できる』といった情報が伝わり、発売後も順調に販売数量を伸ばしているようだ」(BCNアナリスト森英二氏)と徐々に販売数量を伸ばしている。

 機種別では発売から10日間で、Wi-Fi+3Gの64GBモデルが最も売れ行きを伸ばし、35.2%となり、Wi-Fi+3Gモデルが全体の55%を占めている。
 
 PC全体の販売状況は、2009年はネットブックの売れ行き増などが要因となり、販売台数は前年同月増に転じたものの、販売金額は前年同月割れが続いていたが、2010年3月以降は台数、金額共に前年同月を上回った。

 「3月は台数が100%、金額が100.1%とほぼ前年同月並みだったが、4月は台数102.0%、金額105.8%、5月は台数108.3%、金額106.8%となり、コンシューマPC市場は復調したといってよい実績となった。5月にはiPad発売でノートPCの販売台数が好調だったことに加え、Windows 7発売以降、メインマシンを買い換えるユーザーが増え、デスクトップの売れ行きが前年を上回っていることが要因となっている」(森アナリスト)。

 その言葉通り、デスクトップPCは2009年11月以降、2010年1月の販売金額を除き、前年を上回る販売実績を続けている。

 販売台数指数で見るとノートは高い水準で推移しているのに対し、デスクトップはこれまで低い水準となってきたが、「2010年に入り、2008年を上回る水準まで回復しており、デスクトップPCの販売台数は2009年が底だったと見てよいのではないか」(森アナリスト)と復調してきている。

iPadの販売台数指数とiPhoneなどとの比較とiPadの機種別台数構成比PCの販売台数、金額の前年同月比推移ノートPC、デスクトップPCの販売台数、金額の前年同月比推移
ノートPC、デスクトップPCの販売台数指数PCの平均単価推移

 販売台数のメーカー別シェアでは、ノートについては東芝、富士通、NEC、ソニーに加え、iPad効果で2010年5月に前月は3.5%だったアップルのシェアが11.5%まで急上昇。東芝、富士通、NEC、ソニー共にシェアを落とし、各社のシェアが落ちた分をアップルが上乗せしたような格好だ。

 デスクトップのメーカー別シェアでは、2009年は日本エイサー、NEC、富士通、ソニー、アップルの5社でシェアの8割を占めていたが、2010年になって5社で9割のシェアを占めるに至った。「Windows 7発売後直後は富士通がシェアを伸ばし、2009年中は好調だったが、2010年に入りNECがシェアを伸ばし、3月、4月、5月と3カ月連続でシェアトップとなっている」(森アナリスト)。

 ノートのタイプ別構成比では、好調だったCULVが2010年2月の9.4%を占めた後、比率を落とし、2010年5月には5.9%まで落ちている。対して、iPad、シャープの「NetWalker PC-T1」含むその他が2010年5月に8.2%と急増している。「ノート構成比ではCULVやiPadタイプに注目が集まっているが、構成比が最も大きい大型ノートのスタンダードが、家庭内のメインマシンとしてWindows 7以降買い換え期に入り、構成比が2009年11月以降、70%となっている。また、昨年は好調だったネットブックの割合が、2009年12月以降2割を切り、2010年5月には12.3%まで下がっている」(森アナリスト)

 ノートPCにおけるタッチパネル対応機種の比率は、iPadが発売した2010年5月で9.2%と2桁に迫る比率に増加。タブレットの方式としても、iPad発売でキーボードを持たないピュアタブレット型が91.3%まで増加し、画面が動くコンバーチブル型、通常のノートでタッチパネルにも対応したスタンダード型、VAIO type Uのようなスライド型を大きく上回った。

 スマートフォン、ノートPCのスタンダードモバイルタイプ、ネットブック、iPadを含むその他の販売台数指数の比較では、「ネットブックは100円PCの登場で販売台数が急上昇し、スマートフォンはXperia発売月にネットブックの販売台数を抜くなど、売り場でトピックがあった月に大きな動きがある。iPadも発売月に急速に売り上げを伸ばしており、ネットブックの売り上げが伸びた時期と状況がよく似ている。今後、他社から似たような製品が登場すれば、発売後時間が経っても市場は失速せず、盛り上がっていくのではないか」(森アナリスト)という。

 スマートフォンの販売台数指数では、新型iPhone、Xperiaなど新機種登場で横ばいだった台数指数が上昇し、徐々に市場全体が伸びていることから、「iPhone 4の発売で、スマートフォン市場全体が拡大するのは必至と見られる」(森アナリスト)と分析している。

 なお、BCNではPC専門店、量販店、ネット販売業者など全国23社、2,365店舗から販売データを得て、分析を行ない、今回から指数のベースとしてネット専業のところのデータも加えている。

PCのメーカー別シェア推移ノートPCのタイプ別構成比ノートPCにおけるタッチパネルモデルの構成比率
モバイルPC、ネットブック、スマートフォン、iPadなどとの販売台数指数推移スマートフォンの販売台数指数推移3D市場の動向

(2010年 6月 9日)

[Reported by 三浦 優子]