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レノボ「大和研究所」公開、エージェントAI時代へThinkPadが進化

レノボ・ジャパン合同会社 執行役員 副社長 開発担当 塚本泰通氏

 Lenovoの日本法人であるレノボ・ジャパン合同会社は、神奈川県横浜市に構える研究開発拠点「大和研究所」において記者説明会を開催し、「ThinkPad」シリーズに関する説明を行なった。エージェント型AIに適したノートPCなどの研究開発も進めているという。

 また、同時に「堅牢性・耐久性設計ラボ」「耐久設計ラボ」「電波・信頼性設計ラボ」「無線・音響設計ラボ」「カメラ設計ラボ」の5つのラボが公開された。

IBM PC部門がLenovoになる前からThinkPadを開発してきた「大和研究所」

Lenovoの大和研究所

 大和研究所は、横浜市にありながら、かつての所在地である神奈川県大和市にちなんだ「大和」という名称が付けられた研究所となる。なぜそうなっているのかというと、2011年に現在の神奈川県横浜市に引っ越してくるまで同研究所は大和市にあったためだ。

大和研究所の入り口に飾られているThinkPad 700C

 本社機能の米ノースカロライナ州ラーレイが主にマーケティングや製品企画といった機能を担当しているのに対して、大和研究所ではLenovoの企業向け製品となる「ThinkPad」シリーズの研究開発を担当している。

 大和研究所は1985年に、日本IBMの大和事業所の中にPCを開発する部門として設立された。当初はPS/55などIBM PCのノートPC設計などを行なっていたが、1992年に出荷された初代ThinkPad(ThinkPad 700C)以降は、一貫してThinkPadの開発拠点として機能してきた。

 大和研究所では新しい技術の基礎的な研究はもちろんのこと、PM(製品企画担当者)が置かれて、具体的な製品の開発などが行なわれている。

 今年発売されたCS26と呼ばれる2026年向けの新シャシーの製品(ThinkPad X1 Carbon Gen 14など)はいずれもこの大和研究所で、日本在住のPMや開発担当者などにより開発された日本設計の製品になる。

 なお、同じThinkブランドでも、ThinkBookは、同社の中国本社である北京に置かれている研究開発拠点で開発されている。

NEC PCの米沢事業所、工場でLenovoのThink製品などが生産されて国内向けに出荷されている

 また、製造に関しては中国といった海外ODMメーカーなどの工場に委託されている場合と、NEC PC(Lenovoの国内持ち株会社Lenovo NECホールディングスの子会社となり、レノボ・ジャパンもLenovo NECホールディングスの子会社となる)の拠点になる米沢事業所で生産されている場合の二通りがある。

 どちらで製造されているかはモデルによるが、レノボ・ジャパンのWebサイトで販売されているモデルの場合、米沢で生産されている製品は「米沢生産モデル」と書かれて分かるようになっている。

 米沢事業所生産の場合は、設計から製造まで日本で行なわれていることになり、運営は米国のラーレイで、資本は中国で、極めてグローバルな形で運営されているのが今のLenovoだ。

ThinkPadはエージェント型AIをよりよく実行できるように進化

レノボ・ジャパン合同会社 執行役員 副社長 開発担当 塚本泰通氏

 大和研究所で、Lenovoの企業向け製品の全体の研究開発の責任を負っているのがレノボ・ジャパン合同会社 執行役員 副社長 開発担当 塚本泰通氏。そのリーダーシップの下でThinkPad開発に責任を負っているのがレノボ・ジャパン合同会社 執行役員 大和研究所 ThinkPadエンジニアリング 加藤敬幸氏で、2人が大和研究所をリードしてThinkPadなどの製品開発を行なっている形になる。

今年の6月に累計2億5,000万台を出荷

 塚本氏は「最初のThinkPadを1992年に発売して以来、今年の6月に約2億5,000万台の出荷を実現した。今後も変わらずThinkPadを全世界に届けていきたい」と述べる。

 目的に応じたデザイン、信頼される品質、継続されるイノベーションといったThinkPadのコアバリュー(核心的価値)を今後も拡大し続けることで、顧客の生産性を上げるためのデバイスであり続けるという。

ThinkPadのコアバリュー(核心的価値)
常にゴールは顧客の生産性の向上、それを設定しながらコアバリューをより伸ばしていく

 塚本氏は、コアバリューを生かしながら、同時に新しいことへの挑戦が大事だという。今後はクラウドのAIからクライアント上のAIへと移行が起こる中で、それに対応するようなThinkPadが必要になると述べた。

「AIは何かを尋ねるものから自律的に行動するAIへと変わりつつある。そうしたエージェントAIの時代には追跡が難しい情報漏洩、偽装ID、悪意のある操作といった3つの課題がある。さらに今後はトークン経済が10年間で30倍になると予想されており、それに対応したソリューションが必要になる」(塚本氏)。

 つまり、トークンにかかるコストなどから、AIの処理がクラウドからローカルへと移る大きなトレンドが起こる可能性が高いと指摘している。

ハイブリッドAIの時代に
答えるAIから行動するAIへ
エージェント型AI時代の課題
クラウドAI、エッジAI、オンデバイスAIの得意不得意
多層防御の考え方
Thinkブランド製品でのオンデバイスAI
Think製品戦略の柱
Lenovo社内でのAI活用

 その上で、次世代のThinkPadでは、AIで進化するユーザー体験などを軸に開発を続けていくと述べた。

 また、大和研究所自身のAI利活用も進めており、すでにエージェント型コーディングAIによるコード生成やそのレビューなどを試験的に導入し、拡大しているという。

前世代から大幅に性能向上した新世代ThinkPad X1 Carbon Gen 14

レノボ・ジャパン合同会社 執行役員 大和研究所 ThinkPadエンジニアリング 加藤敬幸氏

 ThinkPadの開発をリードしている加藤氏は、オンデバイスAI時代のThinkPad開発に関して説明した。

 加藤氏は1993年4月にIBMに入社し、大和研究所に配属されて以来、一貫してThinkPadの開発にかかわってきたというキャリアの持ち主で、現在はThinkPadのPMや技術開発などを統括する開発責任者としての役割を担っている。

オンデバイスAI時代にPCが向き合う4つのチャレンジ

 「オンデバイスAI時代に、PCは4つの挑戦に向き合わなければならない。それがAIを快適に実行する性能、メモリ・SSDの供給不足・価格上昇、PCクライアントの管理・運用の複雑さの解消、セキュリティ要件・ガバナンスへの適合だ」(加藤氏)。そうした課題を解決するようなThinkPadを開発しているという。

性能向上が重要になる

 たとえば、AIを快適に実行する性能としては処理能力の向上を実現するためにファンの大型化、冷却技術の向上、そして基板技術最適化などの取り組みを行なっており、LPDDR5Xの9,600MT/sを実現したりしているという。

 そうした性能面での強化の結果、最新モデル(ThinkPad X1 Carbon Gen 14)は従来モデルと比較してCPUは1.8倍、GPUは1.7倍、NPUは1.2倍の性能向上を実現し、さらにTeamsで電話会議を行なっているときに温度が下がり、同時にファンの騒音がより低くなっているのだと説明した。

メンテナンス性向上が重要に
交換が容易なUSB Type-C
ユーザーが交換可能(CRU)なバッテリに

 また、メモリやストレージの価格高騰に対する意味では、PCがより長く使えるようにするためにメンテナンス性を向上させる取り組みを行なっている。

 たとえば、ノートPCで故障の原因になりやすいパーツとしては、USB Type-Cのコネクタと内蔵バッテリが挙げられるが、従来はそこが故障するとメインボードごと交換になっていた。

 しかし、最新モデルではUSB Type-Cポート自体がモジュールになっており、ネジなどで簡単に交換できるという。それにより、低コストで修理可能になる。加えて、バッテリに関しても、従来はメーカーの修理担当者のみが交換できるパーツになっていたが、最新のモデルでは顧客が交換できるパーツにされており、ユーザーがパーツ単位でバッテリを購入して、修理マニュアルに沿って交換することが認められている。

交換可能なキートップ

 また、X1シリーズの最新モデルではキーキャップも交換できる部品になっているという。従来は1つのキーが壊れただけでキーボード全体を交換する必要があったが、今は特別な工具によってキーキャップのみ交換可能だ。

 こうしたさまざまな取り組みにより、iFixit(デジタル機器の修理情報などを公開している米国のWebサイト)のメンテナンス性の評価ベンチマークで、PCとしては初めて10点満点を獲得したとのこと。

Lenovo Device Orchestration(LDO)

 PCクライアントの管理・運用の複雑さへの対処では、「Lenovo Device Orchestration(LDO)」が紹介された。LDOはLenovoのハードウェアなどが一括して管理できるコンソールで、ダッシュボードから複数のデバイスの状況(セキュリティの状態やパッチ適用状況)を管理することができる。

セキュリティの強化
ThinkShield Wipe System Data、OSのリカバリでは消すことができないファームウェアレベルのデータを一括して消すことができる

 セキュリティ要件・ガバナンスへの適合に関してはセキュアなファームウェア、裏蓋の開閉検出、ストレージのデータだけでなく、TPMや指紋認証などのファームウェアレベルの情報も含めてデータを削除できる「ThinkShield Wipe System Data」(2026年向けの新型シャシーから導入)などが説明された。

 なお、加藤氏の講演後に行なわれたデモでは、CS26のハイエンドモデルとなるThinkPad X1 Carbon Gen 14の分解モデルなどが公開された。

 この分解モデルは、スペースフレームと呼ばれる新しい構造を採用しており、従来は基板を外さないと交換できなかったキーボードが交換しやすくなっている。さらにファンが大型化するなどして排熱性能が向上するなどの特徴を備えている。詳しい内容については、下記の関連記事を読んでほしい。

ThinkPad X1 Carbon Gen 14で採用されているスペースフレーム構造
スペースフレーム構造の説明
C面カバーのキーボードが簡単に取り外せるので、キーボード交換が容易に。グローバル企業でさまざまな国に拠点があるIT担当者にはうれしい設計
OLEDの駆動機構が首下側にあり、ディスプレイを薄くできたのが設計上のポイント
キーボードがディスプレイ側にオフセットしているため、新モデル(左)ではタッチパッドが全体的に大きくなっている
上が新モデル用のPCB、下は前モデルのPCB
上が新モデルの基板とファン、一番下が従来モデルのファン。一目で大きさの違いが分かる

大和研究所の各研究施設が公開。高品質ノートを開発

大和研究所の各研究施設

 塚本氏と加藤氏の記者説明会の後、大和研究所の研究施設(ラボ)が公開された。公開されたのは次の5つだ。

  • 堅牢性・耐久性設計ラボ
  • 耐久設計ラボ
  • 電波・信頼性設計ラボ
  • 無線・音響設計ラボ
  • カメラ設計ラボ

堅牢性・耐久性設計ラボ(Robustness and Durability Design Lab)

自由落下試験・角落下試験、かなり大きな音がするのでちょっとドキッとする
加圧振動試験、バッグの中で本などと一緒にいれられた状態でバッグが動いているような状況を想定している。実際、昔アメリカの大学生からバッグの中に本などと一緒にいれていたら壊れたというフィードバックを基に始めたテストなのだという
加圧振動試験の別バージョン、ディスプレイを開いて片手で端を持っている利用シーンを想定したテスト

 「堅牢性・耐久性設計ラボ」は、衝撃振動試験エリアと耐久試験エリアという2つのエリアから構成されているラボ。ThinkPadの上に金属製の重りを載せてランダムに振動させ、本などほかの荷物の入ったバッグの中の状態を再現する「加圧振動試験」、輸送時や日常利用時に発生する繰り返しの衝撃を再現し、各部品や本体構造への影響を確認する「繰り返し衝撃試験」などが行なわれる。

 角から落としたりなどのさまざまな「自由落下試験・角落下試験」、PCにはつきものの埃が入ったときにどうなるのかを試験する「粉塵試験」、閉じた状態のディスプレイ天板を、指先や手のひらを想定した複数サイズの円筒状専用治具で何十カ所も圧迫し、物理的なパネル破損や表示異常が発生しないことを確認する「LCDストレステスト」が行なわれるのが耐久試験エリアだ。

無線・音響設計ラボ(Wireless and Acoustic Design Lab)

ノイズキャンセリングの効果を確認するテスト
電波暗室を利用した無線アンテナのテスト
クラムシェル型はC面カバーのヒンジ近くに入っており、2in1型はヒンジそのものにアンテナが入っている

 「無線・音響設計ラボ」は、より高い利得で無線通信を、より高音質で音響を行なえるようにテストするラボ。どちらも電波や音を吸収する素材で囲まれており、音や電波の外部からの影響を遮断している。外部からの電波を遮断し、内部は電波を吸収する電波暗室の中で、直接電波を利用してアンテナ性能の精度を測定している。

 電波暗室ではミリ波を除く4G/5Gの試験ができるようになっており、「半無響室」ではVoIPアプリケーションを利用するときに必要になるノイズキャンセリングの効果などを測定できる。

耐久設計ラボ(Durability Design Lab)

繰り返し開閉試験
ひずみ試験

 「耐久設計ラボ」は、静電気や電磁波、ひずみなど、PCを使う上で起こりうるさまざまなストレスに対する耐久性の試験を行なっている。

 筐体や内部構造に発生するひずみを測定し、長期間利用に耐えられる設計になっていることを検証する「ひずみ試験」、頻繁に繰り返されるLCDパネルの開閉を長期間再現し、ヒンジやLCDパネル、ケーブル、基板などに問題が生じないことを検証する「繰り返し開閉試験」、ディスプレイ回転機構など可動部に対し、繰り返し動作による劣化や故障が発生しないことを確認する「ローテーション試験」などが行なわれる。

電波・信頼性設計ラボ(EMC and Reliability Design Lab)

恒温・恒湿・冷熱衝撃装置、今回は低温テスト中でかなり寒かった(設定温度は非公開)
EMC試験室

 「電波・信頼性設計ラボ」は、ThinkPad自身が発する電磁波の測定、そして製品出荷後に想定される過酷な温度環境を再現し、高い信頼性を確保するための試験を行なう。

 EMC試験を実施できる「半電波暗室」、輸送中の貨物室における高温・低温環境や、屋外から室内への移動による急激な温湿度変化など、出荷後に製品が直面する環境を想定し、信頼性向上のための試験を行なう「恒温・恒湿・冷熱衝撃装置」などのテストを行なうことができる。

カメラ設計ラボ(CoC Imaging Lab)

ThinkPad X9、ThinkPad X1 Carbon Gen 14で採用されているスマホ級CMOSを搭載したカメラモジュール。どうもBIG EYEというコードネームのようだ
人肌がきれいに写るようにマネキンを利用した試験中
現状LenovoのThinkPad X9のカメラは、VCX Forumのカメラ画質ベンチマークでMacBookシリーズを上回りSurface Pro 11とトップを競っている状況だという。

 Web会議に最適な高性能カメラを利用できるようにするラボ。さまざまなユーザーの環境で高画質なWeb会議ができるように、最新技術を活用したテストを行ない、その結果を設計へ反映する「画質性能試験エリア」、光学性能の検証を行なう「光学性能試験エリア」などが用意されている。