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COCOAなどの接触確認アプリ、世界で約半数が運用終了。サ終後に感染が再拡大した事例も

各アプリの運用状況

 北見工業大学工学部地域未来デザイン工学科の奥村貴史教授、芝浦工業大学システム理工学部環境システム学科の市川学教授らによる研究グループは、新型コロナウイルスの感染対策として開発された全世界の接触確認アプリの運用状況を調査し、終了理由などを整理、分析したと報告。11月6日オープンアクセスジャーナルであるInformatics in Medicine Unlockedに論文を掲載した。

 研究グループは、新型コロナウイルス感染対策として開発された「COCOA」など、世界158カ国/地域の184の接触確認アプリの運用状況を調査した。結果、全体の45.7%がすでに運用終了、または終了を予定していることが明らかになった。

 日本では「COCOA」が導入されたが、全感染者の把握を試みる全数届出の見直しなどを理由に、2022年11月に運用を終了している。

 研究グループは、感染抑制に効果があるならば継続運用が合理的であるはずだとし、各国のアプリがどのような理由で終了したのかについて整理されていないと指摘。調査の結果、終了理由は以下の5つに整理できるとした。

  • 政策の転換
    感染者追跡方針の変更や、次世代アプリへの移行など
  • プライバシー上の懸念
    中央サーバーで位置情報を収集するアプリによる国民監視の懸念など
  • 技術的制約
    アプリの不安定化やサーバーの脆弱性など
  • ユーザー側の利用状況
    ユーザーの不足や、自主的な情報提供の遅延など
  • 感染状況・流行段階
    感染状況の安定や、WHOによる「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」終息宣言など

 また、AppleやGoogleが提供するOS公式機能以外を採用したアプリでは、技術的障壁などにより早期に運用終了する事例が確認されたとする一方で、2社の技術サポートの終了により機能不全に陥った事例もあるとも指摘。サービスが特定のプラットフォームに依存することの危険性に言及した。

 続く調査では、各アプリの運用終了時期と各国での感染状況を比較検討している。結果、アプリ運用終了後の感染が再拡大する事例も複数存在しており、アプリの運用が継続していれば感染ペースを抑制できた可能性があるとしている。

アプリ運用期間と感染状況の比較。赤丸が各国/地域での運用終了タイミング、赤い縦棒が感染者数ピーク

 研究グループは本研究の結論として、将来的なパンデミックに備えるべく継続運用可能なアプリの開発が必要だと述べ、アプリに求められる要素として、感染段階に応じて検知感度や機能を動的に変化させること、プライバシーに配慮した設計とすること、特定企業への依存を低減することなどを挙げた。