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Intel、2026年登場の次期CPU「Panther Lake」の技術概要を発表

Panther Lakeの2つのパッケージ、左が「16 core 12Xe」、右が「16 core」の構成

 Intelは10月9日(現地時間)に報道発表を行ない、同社が今年末までにOEMメーカーへの出荷を開始し、来年(2026年)の前半に搭載製品の登場を予定している次世代Core Ultraとなる「Panther Lake」(開発コードネーム)の技術概要を発表した。

 CPUはPコアが「Cougar Cove」、Eコアが「Darkmont」へと強化されており、GPUは第3世代Xeとなる「Xe3」、NPUも第5世代NPUへと進化する。

 また、現行世代(Core Ultraシリーズ2)ではLunar Lake、Arrow Lakeと2つのコードネームからなる別パッケージの製品に分かれてしまっていたが、次世代では両者がPanther Lakeに統一される形となる。

CPU、GPU、NPU、IPUがそれぞれ進化したPanther Lake、GPUはXe3へと進化

Panther LakeはCore Ultraシリーズ2世代では2つに分かれていたパッケージを1つに統一する役割を持っている(出典: Panther Lake Unpacked、Intel)

 今回明らかとなったPanther Lakeの技術概要は、SoC内部のアーキテクチャと物理的な構造という2つの情報だ。現行製品のCore Ultraシリーズ2は、Lunar Lake、Arrow Lakeの2つが存在しており、SoCのベースとなるパッケージが2つある。ノートPCのメーカーはLunar Lake用、Arrow Lake用という2つのマザーボードを設計、製造しなければならないという課題があった。

 Panther Lakeは、1つのパッケージで、Lunar Lakeが対応してきたモバイル向けノートPCの市場、Arrow Lakeが対応してきた薄型ゲーミングノートPC、ハイエンドノートPCの市場などを1つでカバーすることができるようになる。このため、ノートPCメーカーにとっては1つの設計という低コストで、ローエンドからハイエンドまでをカバーすることができる。

【表1】2019年に投入された第10世代Core(Ice Lake)以降のIntel SoC進化の歴史(Intel社の資料などより筆者作成)
投入時期2019年2020年2021年/2022年2023年2024年2024年2025年
開発コードネームIce LakeTiger LakeAlder Lake/Raptor LakeMeteor LakeLunar LakeArrow LakePanther Lake
製品名第10世代Core第11世代Core第12世代Core/第13世代CoreCore Ultra(シリーズ1)Core Ultraシリーズ2Core Ultraシリーズ2未定(仮名: 次世代Core Ultra)
PコアSunny CoveWillow CoveGolden Cove/Raptor CoveRedwood CoveLion CoveLion CoveCougar Cove
Eコア--GracemontCrestmontSkymontSkymontDarkmont
NB最大構成(Pコア、Eコア、LPEコア)4P8P6P+8E6P+8E+2LPE4P+4LPE6P+8E+2LPE4P+8E+4LPE
GPUGen 11 GPUXe-LPXe-LPXe-LPG(XMXなし)Xe2Xe-LP/Xe-LPGXe3
NPU---第3世代NPU(11TOPS)第4世代NPU(48TOPS)第3世代NPU(13TOPS)第5世代NPU(50TOPS)
IPUIPU5IPU6IPU6IPU6IPU7IPU6IPU7.5
チップレットFCBGAFCBGAFCBGAFoveros-SFoveros-SFoveros-SFoveros-S
製造プロセスノード(CPU)10nm10nm SuperFin10nm Enhanced SuperFin(Intel7)Intel 4TSMC N3BTSMC N3BIntel 18A

 CPUは、現行世代のLunar Lake/Arrow LakeではLion Cove(Pコア)、Skymont(Eコア)が採用されていたが、Panther Lakeではその改良版となるCougar Cove、Darkmontに強化される。Cougar Cove、Darkmontともに分岐予測などのフロントエンドが強化されており、電力効率などが改善されている。

Panther LakeのCPUはCougar Cove(Pコア)とDarkmont(Eコア)に進化(出典: Panther Lake Unpacked、Intel)
GPUはXe3へと進化、XeコアがLunar Lakeの最大8コアから12コアへと強化(出典: Panther Lake Unpacked、Intel)

 GPUはLunar LakeではXe2、Arrow LakeではXe-LPG(HシリーズはXMXあり、それ以外はなし)が採用されていたが、Panther Lakeでは第3世代のXeを意味するXe3へと強化されている。Xe3ではキャッシュ構造などが強化されているほか、最大で12基のXeコア(従来のLunar LakeのXe2などでは8基まで)に拡張することが可能で、リアルタイムレイトレーシングユニットなども強化されている。

NPUは第5世代NPUへと進化し、演算器の最適化により同じ性能でもダイに占める面積を小さくできている(出典: Panther Lake Unpacked、Intel)

 NPUは同社が第5世代NPUと呼ぶNPUへと強化されている。内蔵演算器(MAC)こそ1万2,000基とLunar Lake(第4世代NPU)のそれと同じだが、内部構造を見直すことで、ダイ面積あたりの性能は40%改善されており、より少ない消費電力でLunar LakeのNPUをやや上回る50TOPSの性能を発揮できる。

ISPはIPU 7.5へと進化(出典: Panther Lake Unpacked、Intel)

 いわゆるISPとなるIPU(Image Processing Unit)はLunar Lakeで採用されたIPU 7の改良版となるIPU 7.5が採用されており、HDR処理のダイナミックレンジなどが改善されている。

チップレット構造がMeteor/Arrow世代の4チップから3チップへと変更に、3種類の構成

チップレットの構造、IntelのFoveros S(以前はただFoverosとだけ呼ばれていた最初の世代のFoveros)を利用してベースダイの上に3つのタイルとフィラータイル(空きスペースを埋めるパッシブのタイルのこと)(出典: Panther Lake Unpacked、Intel)

 Panther Lakeではチップレットの構造が大きく見直されている。現行世代のArrow Lakeでは、チップレットの構造は、基本的に前世代となるMeteor Lake(Core Ultraシリーズ1)のそれを継承しており、Lunar Lakeで新しい構造を採用していた。それに対してPanther Lakeではチップレットの構造が大きく見直され、Meteor Lake/Arrow Lakeの構造と、Lunar Lakeの構造を1つにしたような新しい構造を採用している。

 Meteor Lake/Arrow Lakeでは、コンピュートタイル(CPU)、グラフィックスタイル(GPU)、SoCタイル(NPU、IPU、グラフィックス出力、PCIe、USB、Ethernetなど)、IOタイル(PCI Express、Thunderbolt)という4タイルから構成だった。

 Lunar Lakeでは、コンピュートタイルにCPU、GPU、NPUなどが統合されており、さらにプラットフォーム・コントローラ・タイル(PCT)にUSB、PCI Express、Wi-Fi/BT、Ethernet、Thunderbolt 4などのI/Oが統合されているという2タイル構成だった。

 それに対して今回のPanther Lakeでは、コンピュートタイルにCPU、NPU、IPU、グラフィックスタイルにGPU、プラットフォーム・コントロール・タイルにPCIe、Thunderbolt 4、Wi-Fi/Bluetoothなどが統合されるという3チップ構成になる。コンピュートタイルは2種類(Pコアx4+LPEコア×4とPコア×4+Eコア×8+LPEコア×4)、グラフィックスタイルも2種類(Xeコアx4とXeコア×12)、PCT1種類というタイル(ダイ)が用意され、その組み合わせにより3種類のチップレット構成が用意される。

 なお、Lunar Lakeではパッケージ上に搭載されていたDRAMは、Panther Lakeではマザーボード上に搭載される形になっている。

「8 core」「16 core」「16 core 12Xe」という3つの構成が用意されている(出典: Panther Lake Unpacked、Intel)

 チップレットの構成は3種類用意されており、「8 core」「16 core」「16 core 12Xe」という3つの構成が用意されており、それぞれ以下のようになっている。

8 core(出典: Panther Lake Unpacked、Intel)
16 core(出典: Panther Lake Unpacked、Intel)
16 core 12Xe(出典: Panther Lake Unpacked、Intel)
3つの高性能スペック(出典: Panther Lake Unpacked、Intel)
【表2】8 core、16 core、16 core 12Xeという3つのチップレット構成(Intel社の資料などより筆者作成)
構成名称8 core16 core16 core 12Xe
コンピュートタイル(プロセスノード)8コアタイル(Intel 18A)16コアタイル(Intel 18A)16コアタイル(Intel 18A)
グラフィックスタイル(プロセスノード)4コアタイル(Intel 3)4コアタイル(Intel 3)12コアタイル(TSMC N3E)
プラットフォーム・コントロール・タイル(プロセスノード)PCT(TSMC N6)PCT(TSMC N6)PCT(TSMC N6)
CPUコア構成4P+4LPE4P+8E+4LPE4P+8E+4LPE
GPUXe3(4コア)Xe3(4コア)Xe3(12コア)
NPU第5世代NPU第5世代NPU第5世代NPU
IPUIPU7.5IPU7.5IPU7.5
メモリLPDDR5x-6800/DDR5-6400(SO-DIMM)LPDDR5x-8533/DDR5-7200(SO-DIMM)LPDDR5x-9600
PCI Express12レーン(5.0 x4、4.0 x8)20レーン(5.0 x12、4.0 x8)12レーン(5.0 x4、4.0 x8)
ThunderboltThunderbolt 4 4基Thunderbolt 4 4基Thunderbolt 4 4基
USBUSB 3.2 2基/USB 2.0 8基USB 3.2 2基/USB 2.0 8基USB 3.2 2基/USB 2.0 8基

 コンピュートタイルはすべてIntel 18Aで製造され、GPUは12コア版がTSMC N3E、4コア版がIntel 3、PCTはTSMC N6で製造されている。現時点ではそれぞれどんな製品が展開されるのか(製品のSKU構成やTDPの設定、クロック周波数など)に関して明らかにされていない。

 来年の前半にPanther Lake搭載製品が登場する見通しで、Intelの幹部はCESで何らかの発表があることを認めている。そのため、CESで製品が大規模に発表され、多くのPCメーカーから搭載製品が登場するという流れになりそうだ。