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Core m搭載でもCore iに肉薄する性能を実現した「ThinkPad X1 Tablet」
(2016/2/12 00:00)
レノボ・ジャパン株式会社は9日、薄型デザインの「X1」シリーズを発表した。各製品の詳細および発表会の模様については、関連記事を参照されたい。本記事では、発表会とは別途開かれた「ThinkPad X1 Tablet」についての製品説明会の模様をお伝えする。
ちなみに記事で“X1シリーズ”と書くと、かつてのシャープのパソコンを思い起こされる方も多いようだが、これは今回のレノボの発表が、ThinkPad X1シリーズに加えてThinkCentre X1が含まれているため、このような表記にしているのである。決してX1から始まる製品名ではないことを予めお断りしておく。
今回のX1シリーズの中で、レノボが最も注力して開発を行なったのが、キーボード着脱式のThinkPad X1 Tabletである。もちろん、CarbonやYogaに関しても軽量化するなどブラッシュアップが図られているが、フォームファクタに大きな変更はない。一方でTabletは「ThinkPad Helix」の後継でありながら、新たにキックスタンドを備え、キーボードの大幅な軽量化が図られているなど、ほぼ全てが一新されている点が、ほかの2機種と異なる。
特徴をおさらい
具体的な仕様などは別記事を参照されたいが、ここでThinkPad X1 Tabletの特徴を再度おさらいしておこう。
液晶は12型で、解像度は2,160×1,440ドット、アスペクト比は3:2である。この辺りはMicrosoftの「Surface Pro 3」に似たスペックとなっている。重量は767g、厚さは8.45mm。ThinkPadシリーズで初めてUSB Type-Cコネクタを装備し、ここからの充電が可能となっている。
オプションではSIMロックフリーのLTEモジュールを内蔵可能。指紋認証センサーも選択できる。また、2,048レベルの筆圧に対応した「ThinkPad Pen Pro」も用意される。カバー兼キーボードは赤と黒の2種類で、トラックポイントとLEDバックライトを内蔵しながら、5.2mmの薄型化を実現している。
さらに、バッテリ駆動時間とインターフェイスを拡張できる「プロダクティビティ・モジュール」、プロジェクタを内蔵した「プレゼンタ・モジュール」、3Dカメラを内蔵した「3Dイメージングモジュール」の3種類をオプションで用意し、本体の機能を拡張できる点が他社にはない最大の特徴と言えるだろう。
冒頭で述べた通り、本体にキックスタンドを備え、Helixとは異なり自立可能だ。下部を軸として回転するようになっているため、モジュールを装着した状態でも自立可能なほか、スタンド部をひっくり返して155.5度寝かせ、安定したスタイラス入力が可能な「スタイラスモード」で利用できる点もユニークである。
拡張モジュールとキックスタンド
キーボード着脱式2in1のThinkPadの登場は、2011年の初代「ThinkPad Tablet」に遡る。当時はARMプロセッサを採用したAndroidタブレットであった。2012年にはWindowsを搭載したモデルが搭載し、2013年にはHelix、2014年には「ThinkPad Tablet 10」などを投入している。ThinkPad X1 Tabletはその系譜の最新モデルと言える。
ユーザーのビジネスにおける生産性を向上させるツールとして開発されたThinkPadのコンセプトに基づき、ThinkPad X1 Tabletが開発された。Core mプロセッサ採用による高い生産性や信頼性はもちろんのこと、モジュール構造の採用による拡張性、USB Type-Cコネクタの新規導入、WiGig対応による無線ドッキング対応など、いずれもユーザーのビジネスをサポートする側面から実装されている。
着脱可能なキーボードを備える側面で見れば、Microsoftの「Surface Pro 4」でも実現されているのだが、USB Type-Cコネクタや各種モジュールによる拡張、WiGigによる無線ドッキングのソリューションはSurface Pro 4にはない本機だけの特徴であり、その点Surface Pro 4よりも汎用性が高いと謳っているのは異論の余地がないだろう。
キックスタンドは本体下部を軸にして回る構造を採用しているが、これは拡張モジュールを装着した場合でも安定した自立を可能にさせるため、そしてスタイラスによる入力時でも安定した設置を実現するため。Surface Pro 4のように本体中央を軸にする構造の場合、拡張モジュール装着時に長さが足りなくなってしまい、浅い傾斜が難しくなる。また、スタイラスによる入力時“ふかふか”してしまい入力しにくいという声があったという。本製品のような構造であれば、こうした問題を解決できるわけだ。
あまり目立たない細かい点ではあるが、このキックスタンドは軽量化するため薄いマグネシウム合金を採用しているが、薄いと強度が出ないため、バスタブ構造を採用することで強度を増すという地道な工夫がなされている。
一方、拡張モジュールの着脱には、一体感と強度を出すために「エアータイトコネクションデザイン」を採用している。一般的にこうしたモジュールの着脱は、よくあるバッテリの着脱機構のような単純なスライドスイッチを採用しているのだが、本製品スーツケースのラッチをヒントにして開発された複雑な機構となっている。
具体的には、例えばレバーの動作方向をZ軸とするならば、フックはX軸方向に移動してからY軸方向に移動するのだ。つまり、レバーを下げるとラッチがスライドして本体に引っ掛かり、さらにレバーを下げるとテコの原理でフックが引き込み、左右合計10kgfで引っ張りモジュールとタブレットを合体させる構造となっている。
この構造により、簡単な操作でタブレットと拡張モジュールがネジで止められているかのうような一体感を実現し、拡張モジュール付きの状態でも、これまでのThinkPadと全く同様の耐久性試験をクリアすることに成功。さらに本製品独自のテストとして、キックスタンドのヒンジ開閉試験や、スタイラスモード時の上部加圧試験を加えているという。
ファンレスでCore i製品に肉薄する性能を実現
本製品は、Core iプロセッサではなく、Core mプロセッサを採用している。最大の理由はやはりファンレスデザインを実現できる点で、静音性や軽量化、高信頼性に貢献する。Core iプロセッサと比較して10~20%の消費電力削減を実現しながら、オフィスアプリケーションにおける性能差はそれほど大きくないという。
同社による測定では、3DMarkでは大きな性能差が見られたが、PCMark 7/8ともに性能差が少なかった。もっとも、PCMark 7や8ではCPUやGPUの絶対的性能よりも、ストレージを含めたシステム全体の性能が評価されるため、当然とも言える。
一方で、薄型筐体でファンレス機構を実現するために、同社はヒートパイプによる冷却ではなく、ベイパーチャンバーによる冷却機構を採用した。これにより、わずか0.5mm厚の冷却機構でCore mを冷却することができた。設計に当たっては水路の最適化や、含水層の追加(Helixは2層だったが、X1 Tabletは3層)などを行ない、冷却性向上を図った。
加えて、Skylakeに搭載されているConfigurable TDP(cTDP)の仕組みを使い、キーボード装着時では常時高性能に設定し、キーボード取り外し時は揺れを検知した場合にのみTDPを下げ、筐体を持った時に熱くならないような仕組みと工夫が凝らされている。
このほか、ディスプレイ出力機能やDC入力機能を兼ねたUSB Type-Cコネクタの装備や、実際の利用形態に即し、電波が弱くなりにくいWiGigアンテナの配置、暗号化を行なった状態でUSB転送し、形状にまでこだわった指紋センサーの採用についても説明された。
こだわり抜いて設計した薄型キーボード
ThinkPadと言えば、やはりキーボードとは切っても切れない関係にある。本製品に採用されているキーボードは、Helixに採用されているものから大幅な進化を遂げている。
例えば「ThinkPad Helixキーボード」は、キーストロークが1.5mm、トラックポイントなし、タッチパッドありという仕様で、厚みは8.1mm、重量は600gもあった。上位の「ThinkPad Helixプロ キーボード」では、キーストロークが1.8mm、トラックポイント付きになるものの、厚みは10.1mm、重量は900gへ増す。本体は800g前後だが、キーボードを組み合わせると1.4kg台以上と、クラムシェルのThinkPad Xシリーズと大差がなくなってしまう。
それが今回のキーボードでは、キーストロークこそ1.35mmとやや浅いものの、トラックポイント/タッチパッド付きで厚さ5.2mm/重量298gと、同等の機能を持つHelixプロ キーボードの半分の厚みと3分の1以下の重量を実現している。
今回のキーボードの開発のために、20種類以上のラバードームを施策し、微調整を繰り返して最適なキータッチを実現したという。加えて、他社製品ではタイピング時の底打ち感が強く、それが“ストロークが浅い”と感じる要因となっていたが、X1 Tabletのキーボードではパンタグラフの軸となる部分の底面に穴を開け、タイピング時にベースプレートがややたわむ「ソフトランディング」構造を採用し、1.35mmのストロークの浅さを感じさせない工夫がなされている。
もっとも、それ以上に工夫されたのがトラックポイントの部分である。従来、トラックポイントはキーボードのベースプレートを貫いて底面から実装されていたが、X1 Tabletではプレートの上にマグネシウム合金のカバーを載せ、その上に実装した。
トラックポイントはテコの原理を採用しているため、薄型化すると、ユーザーは強い指の力で動作させる必要が生じるのだが、形状や硬度が異なる20種類のキャップを試作し、シミュレーションとユーザーテストを繰り返した。さらに機構やソフトウェアにチューニングを施すことでベストバランスを探し、薄型化を実現しながらも使い勝手が損なわないよう工夫したという。