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649ドルからのハイエンドGPU「Fury X」の仕様が公開
~HBMによりGDDR5の3倍の電力効率を達成
(2015/6/25 06:00)
AMDは24日、Radeon R9 Fury Xの発売記念イベント「Feel、Fear、Fury」を秋葉原UDXで開催した。
R9 Fury X搭載マシンのデモやOculus RiftによるVR体験などを楽しめる一般来場者向けのイベントとなっていたが、事前にメディア向けに説明会が開かれ、AMD本社のチーフ・ゲーミングサイエンティストであるRichard Huddy氏と、デスクトップ向けグラフィックス・プロダクトマネージャーのDevon Nekechuk氏が登場。FuryおよびRadeon 300シリーズについて説明を行なった。ここではその時の内容を簡単にまとめてお届けする。
なお、Radeon 300シリーズの仕様や価格については既に公表されており、メーカー各社から製品ラインナップが発表されているものの、FijiアーキテクチャのFuryシリーズについては別扱いとなっており、今回ようやくR9 Fury Xの正式な仕様が公開されたことになる。AMDによれば、ドルベースでの価格は649ドルとのこと。ちなみにR9 390Xの価格は429ドルである。仕様については下記の通りだ。
R9 Fury X | R9 390X | |
---|---|---|
GPUクロック(最大) | 1,050MHz | 1,050MHz |
Stream Processor | 4,096基 | 2,816基 |
テクスチャユニット | 256基 | 176基 |
ROP | 64基 | 64基 |
メモリ容量 | 4GB(HBM) | 8GB(GDDR5) |
メモリクロック(データレート) | 500MHz(1GHz相当) | 1,500MHz(6GHz相当) |
メモリインターフェイス | 4,096bit | 512bit |
Typical Board Power | 275W | 275W |
R9 Fury XのFijiアーキテクチャについては既報の記事で説明しているので、そちらをお読みいただきたい。
Radeon 300シリーズの位置付けと2つの新機能
Devon Nekechuk氏はR9 Fury Xの説明に入る前に、Radeon 300シリーズのおさらいとして、ユーザー向けに各GPUの位置付けを簡単に以下のようにまとめた。
- Radeon R7 360/370
フレームレート60fpsを維持しながらフルHD解像度でオンラインゲームを楽しめるGPU - Radeon R9 380
1440p解像度(2,560×1,440ドット)でのゲームプレイ向け - Radeon R9 390/390X
4K解像度(3,840×2,160ドット)でのゲームプレイ向け
また、同氏はRadeon 300シリーズの説明の中で、2つの新機能が用意されていると述べる。その1つは「Virtual Super Resolution」で、これはディスプレイの実際の表示解像度よりも高い解像度でレンダリングさせるという機能(例えばフルHD液晶に4Kでレンダリングさせる)。つまり、高解像度グラフィックをダウンスケール表示させて高画質に見せるのだが、NVIDIAのDSR(Dynamic Super Resolution)を思い浮かべた人は多いだろう。原理的には全く同じもののようだ。
2つ目の「Frame Rate Target Control」は、ディスプレイが備えるリフレッシュレート以上の描画を省き、消費電力を下げるための機能。つまりリフレッシュレートが60Hzのディスプレイであれば、60fps以上で描画しても実際の画面に反映されず、GPUが無駄な処理をしているということになる。本機能ではこの無駄をなくすということで、これにより電力消費量が低減され、静音化にも寄与するとしている。これについてもNVIDIAの「Frame Rate Target」が当てはまる。
HBMで高電力効率を実現するRadeon R9 Fury X
Devon Nekechuk氏は今回の目玉であるRadeon R9 Fury Xについて、4Kでの最高描画設定を楽しみたい性能重視のユーザー、テクノロジ好きでHBM(High Bandwidth Memory)に興味を持っているユーザー、最高スペックのPCを自慢したいユーザーといったエンスージアストに向けたGPUであると位置付けた。
同氏はR9 Fury XのFijiアーキテクチャの説明の中で、ビデオカードでは世界初採用とするHBMの解説に重点を置いた。とくに電力効率の高さと、今までになかったハイエンドGPUでの小型化が可能であることを大きなメリットとして挙げる。
前者については、4,096bitという広帯域バスにより、GDDR5のように高クロックに頼ったデータ転送が不要であり、電力効率は3倍に上がったと言う。なおかつ0.5TB/secの転送速度を実現できていることは驚異的であるとし、他社は対応できていない技術であるとNVIDIAのことを臭わせつつ、Furyシリーズの特徴を強くアピールした。
また、R9 Fury Xには500Wの冷却能力を有した水冷クーラーが用意されているが、実際のところR9 Fury X搭載カードの消費電力は275W程度。そのため、オーバークロックがしやすいことに加え、ゲーム中でも50度ほどの温度で動かせることから、ほかのハイエンドクラスのビデオカードよりも15dBは動作音を低減可能とする。
“小型化”に関しては、今夏後半に登場予定とする約16cmサイズの「Radeon R9 Nano」の実基板を披露し、前世代のRadeon R9 290Xよりも高性能でありながら基板サイズを半分に縮め、消費電力も半減させたと言う。これにより電力効率は倍以上になっているようだ。同氏はコンパクトでありながらエンスージアスト向けの性能を備えたこの製品で新しいプラットフォームを追求していきたいと語り、ノートPCやサーバーといったセグメントへの導入など、強い意気込みを見せた。
HBMはHDDに対するSSDのようなもの?
今回AMDは、HBMは設計部分に注目して欲しいとしきりに訴えていた。GDDR5を8GB搭載しているRadeon R9 390Xに対して、半分の4GBしかないといった比較はあまり意味をなさないという理由からで、これまでとは全く異なる仕組みであることを強調する。
説明の後半で、Richard Huddy氏とDevon Nekechuk氏はSSDとHDDの関係を例に挙げ、SSDをシステムドライブとした場合のその速度に慣れてしまえば、今更HDDのシステムに戻ることはできないだろうと仮定した上で、HBMとGDDR5は正にそういうものなのですと結論付けた。やや強引ではあるがAMDが自信を持って発表したHBMの革新性がどれほどのものなのか分かりやすくユーザーに伝えたい、という意思は十分に感じられた。
なお、HBMを搭載したRadeon R9 Fury Xの性能レポートについては、後日掲載予定だ。