ニュース

新OS搭載PCの販売実績はWindows 7の3分の1以下に留まる

~Windows 8.1発売から2カ月の販売実績を見る

 Windows 8.1が10月18日にリリースされてから、ちょうど2カ月が経過した。だが、Windows 8.1搭載PCの売れ行きは決して順調とはいえないようだ。Windows 7発売時に比べて、新OS搭載PCの販売台数は、3分の1以下に留まっているからだ。

 全国の量販店のPOSデータを集計しているBCNがまとめた、2013年10月18日~2013年12月17日までの60日間のデータによると、Windows 7の発売60日間(2009年10月22日~2009年12月21日)の販売台数を100とした場合、Windows 8.1搭載PCの販売台数は、わずか「31」に留まった。

 Windows 8の発売60日間(2012年10月26日~2012年12月25日)の集計では、Windows 7発売時に比べて、「53」に留まっていたが、Windows 8.1ではそれをさらに下回る結果となる。

各OS搭載PCの販売台数指数
Windows 7100
Windows 853
Windows 8.131

 Windows 8.1搭載PCの売れ行きが鈍い要因はいくつかある。1つは、従来製品となるWindows 8搭載PCが市場で数多く流通している点が挙げられる。Windows 8.1発売から60日間のOS別販売台数構成比をみると、最も多いのが、Windows 8搭載PCであり、全体の43.8%を占めている。さらに、2位にはiOS、3位にはAndroidが入り、Windows 8.1はそれに続いて4位という状況だ。Windows 8.1搭載PCの販売構成比は14.3%に留まっている。

搭載OS別販売台数構成比
搭載OS販売台数構成比(%)
Windows 843.7
iOS17.3
Android16.3
Windows 8.114.3
Mac OS5.1
Windows 73.0
その他0.3

 これには、実売価格の差も影響しているといえそうだ。Windows 8搭載PCの平均単価は、デスクトップPCで97,600円、ノートPCで82,300円。これに対して、Windows 8.1搭載PCの平均単価は、デスクトップPCで133,600円、ノートPCで114,600円と、その差は大きい。いすれも3万円以上の差がある。Windows 8搭載PCを購入しても、Windows 8.1へと無償でアップデートできるため、割安なWindows 8搭載PCを購入して、その後に、Windows 8.1にアップデートして利用するという購入者も少なくないようだ。

PC OS別平均単価
種別搭載OS平均単価(千円)
ノートWindows 882.3
Windows 8.1114.6
デスクトップWindows 897.6
Windows 8.1133.6
タブレット端末Windows 854.0
Windows 8.143.9

 また、ソニーのように、最新製品となる秋冬モデルで、Windows 8を標準搭載している例もあり、これもWindows 8の構成比を高める要因の1つとなっている。

 2つ目には、Windows 8.1搭載PCのラインナップ数が少ないという点だ。POSデータもとに、Windows 8.1搭載PCの機種数を数えると、これまでに56機種が販売されているが、同じ60日時点での機種数を見ると、Windows 7では167機種、Windows 8では134機種に達しており、Windows 7発売時に比べて3分の1の機種数しかない。

 PCメーカー各社がPC事業の業績悪化を背景に、機種数を限定したり、カラーバリエーションを絞り込むといった動きが見られていることも影響しており、これが結果として、ユーザーの選択肢を狭めていると言える。エコシステムによる選択肢の広さがWindows陣営の特徴だが、Windows 7発売時に比較すると、それが発揮しきれていないようだ。

発売60日後のOS別機種数
Windows 7167機種
Windows 8134機種
Windows 8.156機種

 そして、3つ目には、Surfaceの数字がこの中に含まれていないこともある。日本マイクロソフトでは、Surfaceの販売台数をPOSデータの集計でも公表しておらず、この分が構成比を引き下げる原因となっている。

 日本マイクロソフトの樋口泰行社長は、Surfaceの具体的な販売台数には言及しないが、「予想を上回る販売台数となっており、一部製品では品薄になるほどの人気ぶり。供給が安定していれば、さらに売れていただろう」と売れ行きが好調であることを示しており、「調査会社のデータでは、PC市場全体は前年割れとなっているが、これにSurfaceの数字を足せば、前年実績を上回ることになる」とする。

 ただし、Surfaceの販売実績を加えることで、Windows 8.1搭載PCの販売構成比が高くなることは明らかだが、Windows 7発売時の販売台数にまでは到達しないようだ。

 では、発売60日間におけるWindows 8.1搭載PCの売れ筋はどのようなものになっているのだろうか。ここでも日本マイクロソフトのSurfaceは除くことになるが、国内メーカーのスタンダードノートPCを中心に上位を占めていることがわかる。

 BCNが集計した2013年10月18日~2013年12月17日までの60日間の販売実績によると、最も売れているのは、NECの「LaVie S/LS150/NS」で11.0%のシェアを獲得した。2位には東芝の「dynabook T/PT55445KSX」が9.8%で入り、3位は富士通の「FMV-LIFEBOOK AH/FMVA42M」が5.6%のシェアを獲得。各社の主力モデルが上位に入った。

 タブレットでは、8位に入ったASUSの「TransBook/T100TA-DK32G」が4.1%のシェアを獲得。デスクトップでは、9位に富士通の「FMVF52MW」が入り、3.9%のシェアを獲得した。

Windows 8.1搭載の販売台数上位10機種
順位メーカー名シリーズ名種別発売月構成比(%)
1NECLaVie S / LS150/NSノート10月11.0
2東芝dynabook T / PT55445KSXノート10月9.8
3富士通FMV-LIFEBOOK AH / FMVA42Mノート13年10月5.6
4NECLaVie S / LS350/NSノート10月5.1
5富士通FMV-LIFEBOOK AH / FMVA53Mノート10月4.4
6東芝dynabook T / PT55467KBXノート10月4.3
7NECLaVie L / LL750/NSノート10月4.2
8ASUSASUS TransBook / T100TA-DK32Gタブレット端末11月4.1
9富士通FMVF52MWデスクトップ10月3.9
10富士通FMV-LIFEBOOK AH / FMVA77Mノート10月3.2

 一方、カテゴリ別の構成比をみると、スタンダードノートPCが61.7%を占めて最も多かった。続いて、ディスプレイ一体型デスクトップPCが20.7%、タブレットが16.0%、Ultrabookが1.2%となった。

Windows 8.1搭載の種別販売台数構成比
カテゴリ種別構成比(%)
ノートスタンダード61.7
デスクトップディスプレイ一体型20.7
タブレット端末タブレット端末16.0
ノートUltrabook1.2
デスクトップコンパクト0.3
ノートスタンダードモバイル0.1
デスクトップタワー0.0

 日本マイクロソフトの樋口泰行社長は、「Windows 8が登場した時には、従来OSのWindows 7の方がいいとするユーザーがまだ多かったが、Windows 8.1をリリースして以降は、Windows 7よりも、Windows 8.1の方がいいとするユーザーが増加している」と、昨今の傾向について言及。「Windows 8.1は、まだ製品が揃い切れていない部分があるが、コンシューマ市場においても徐々に販売に弾みがついている。ここ数週間でさらに販売台数は増加していくことになるだろう。とくに8型タブレットの販売が好調である」などとし、「今後の売れ行きについてはとくに心配はしていない」と述べた。

(大河原 克行)