大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

発売から100日を経過したWindows 7でPC業界は活性化したのか?



 Windows 7が、2009年10月22日に発売になってから、2010年1月29日でちょうど100日目を迎えた。またこの日は、2007年1月30日にWindows Vistaが発売になってから、3年を経過した日ともなった。

 果たして、Windows 7はどれぐらいの売れ行きを記録したのか。

 全国の量販店のPOSデータを集計するBCNの数値から、3年前に発売となったWindows Vistaの発売100日間の動きと比較してみたい。

 Windows 7が発売されてから100日間(2009年10月22日~2010年1月29日)の量販店におけるPCの販売台数は、対前年同期比6.7%増となった。

 これは、Windows Vistaの発売100日間(2007年1月30日~5月9日)のPCの販売台数が2.4%減であったことに比べると、Windows 7は、市場を喚起したことを証明する数字でもある。

 Windows Vistaでは、発売直後の出足は良かったものの、その後、互換性の問題が指摘されるといった理由から、売れ行きが急減速。100日間という観点では、前年割れという状況を余儀なくされた。

 だが、Windows 7は、Vistaの反省から互換性の問題に対し、ベータ版の段階から時間をかけて改善。さらに、Vistaで課題とされていた軽快性を実現することにこだわり、プロモーションにおいてもその点を前面に打ち出して訴求してきた。こうした取り組みが功を奏して、Windows 7によるPC販売は前年実績を上回る結果になったといえよう。

Windows Vista発売時の様子

 それはパッケージ版の売れ行きでも見てとれる。

 パッケージ版は、新OS発売直後に販売が集中するために、Windows Vistaの際にも高い実績をあげており、100日間の販売本数は前年同期比59.8%増となっている。だが、Windows 7のパッケージ版の販売本数は、それを遙かに上回る398.0%増という結果になっているのだ。実に前年同期比で約5倍という販売本数になっている。

 これらの数字をWindows Vista発売100日の実績を「100」として、指数化した場合、Windows 7発売後100日におけるPCの販売台数指数は125.2、パッケージの販売本数は271.8となる。Windows Vistaの発売時に比べて、その出足の良さは特筆できるものになっている。

 発売100日間の動きを、もう少し掘り下げてみよう。100日間での新OS搭載PCの構成比はどうなっているだろうか。

 PC本体の販売実績のうち、Windows Vista発売時の新OSを搭載したPCの販売比率は78.3%と4分の3を超える実績。それ以前のOSであったWindows XPの販売比率は18.1%となった。

 これに対して、Windows 7の際には、新OSの販売比率は63.8%と3分の2を下回るという状況。Windows Vistaが16.7%、さらにその前のOSとなるWindows XPが14.4%となった。

 Windows XPを搭載したネットブックが市場に残っていたことや、Windows Vista搭載PCでもそのままWindows 7が動作するスペックであったこと、さらには新OSへの移行キャンペーンが行なわれていたことで、旧OSの構成比が高いという結果になっている。

 なお、興味深いのは、Windows Vista発売時におけるMacintoshの構成比が3.5%であったのに対し、Windows 7発売時のMacの構成比が5.1%に上昇していることだ。Windows 7が発売となった2009年10月22日の前日に、アップルは新たなiMacとMacBookを出荷。これがMacのシェアを引き上げたともいえる。

Windows 7発売時の様子

 パッケージにおけるエディションの構成比はどうだろうか。

 Windows 7の発売100日間の構成比をみると、最も多いのがHome Premiumの63.8%。続いて、Professionalの19.5%、Ultimateの16.7%となっている。

 マイクロソフトでは、予想以上にUltimateの構成比が高いとしていたが、実は、Windows Vistaの時には、さらにUltimateの構成比が高かった。

 Windows Vistaの発売100日間の構成比では、Home Premiumが50.7%と半分。Ultimateが29.8%と約3割を占めていたのだ。そのほか、Home Basicが11.6%、Businessが7.9%。Windows Vistaのときには、Ultimateがかなり売れていたことがわかる。

 このように、Windows 7の発売100日間の動きは、Windows Vista発売時に比べても好調な売れ行きを示し、PC市場を喚起したと総括することできる。

 しかし、いくつかの観点から手放しでは評価できない部分もある。

 例えば、PCの販売金額という点では、2009年10月以降、毎月前年割れという状況が続いているからだ。とくに、主力となるノートPCの販売金額は、前年同月比5%減で毎月推移しており、一度も前年実績を超えていない。ネットブックに至っては、12月の販売金額は46.7%減、1月は44.7%減とほぼ半減している状況だ。

 また週次の動きでも、10月22日のWindows 7の発売日を含む、10月19日~25日の集計から、1月25日~31日までの15週のうち、PC全体では8週と半分以上が前年割れ、ノートPCでは11週間が前年割れとなっている。

 販売台数でも、PC市場全体で2週間、ノートPCでは5週間が前年割れとなっている。

 これに対して、好調なのがデスクトップPC。Windows 7発売前の2週間は、販売金額で33%減、販売台数で約20%減となっていたものが、Windows 7発売以降は、前年同週比2桁の伸びを示す週が相次ぎ、前年割れとなったのは、販売金額で3週間、販売台数では12月28日~1月3日までの1週間だけだった。

 月次集計でも、販売金額では発売前の低迷が響いた10月のほか、1月には0.3%減とわずかに減少した程度。販売台数では毎月、前年実績を上回っている。12月には販売台数で10.9%増と2桁成長となった。

 Windows 7に搭載されたWindows Touch機能に対する評価が高かったのが、デスクトップPC好調の要因だといえる。

2009年10月~2010年1月(月次推移) 販売台数 前年同月比推移(%) 出典:BCN
 デスクトップノート(ネットブック含む)PC全体ネットブック
2009年10月102.2124.0119.3129.0
11月108.7109.5109.392.5
12月110.999.6101.866.1
2010年01月105.7105.8105.872.9

2009年10月~2010年1月(月次推移) 販売金額 前年同月比推移(%) 出典:BCN
 デスクトップノート(ネットブック含む)PC全体ネットブック
2009年10月87.495.693.6102.1
11月105.695.698.076.1
12月108.694.797.954.3
2010年01月99.795.296.155.3

2009年10月5日~2010年1月24日(週次推移) 販売台数 前年同月比推移(%) 出典:BCN
週開始日デスクトップノート(ネットブック含む)PC全体ネットブック
2009年10月05日83.9115.7108.8119.6
12日87.6121.3114.2144.3
19日122.0127.6126.4123.3
26日117.0121.6120.6114.4
11月02日110.9119.0117.298.0
09日115.5111.8112.689.2
16日115.0112.5113.096.0
23日106.7103.6104.289.3
30日110.997.6100.273.4
12月07日106.992.995.662.6
14日109.498.4100.560.9
21日115.2104.3106.367.7
28日92.195.494.972.4
2010年01月04日116.8117.4117.386.0
11日104.5110.1109.072.0
18日102.6102.8102.863.2
25日110.598.5100.660.7

2009年10月5日~2010年1月24日(週次推移) 販売金額 前年同月比推移(%) 出典:BCN
週開始日デスクトップノート(ネットブック含む)PC全体ネットブック
2009年10月05日66.488.783.090.2
12日67.085.881.4108.0
19日113.9102.3105.1105.5
26日112.2100.2103.194.4
11月02日105.9101.9102.983.9
09日108.798.6101.077.0
16日114.298.9102.576.1
23日106.692.795.970.2
30日110.790.795.359.6
12月07日104.288.792.351.9
14日106.294.797.350.1
21日113.299.6102.655.4
28日89.787.588.058.9
2010年01月04日108.5106.9107.269.1
11日93.195.695.150.8
18日97.790.692.246.3
25日107.590.494.046.4

 注目されるのは、今後の売れ行きである。

 主要PCメーカー各社から、Windows 7搭載PC第2弾となる新製品が投入された1月18日~24日の集計、1月25日~31日の集計で、成長のペースがむしろ減速しているのも気になるところだ。

 PC全体の販売台数では1月18日~24日の集計で2.8%増、1月25日~31日では0.6%増。ノートPCでは1月25日~31日の集計では1.5%減となっている。

 新製品の投入のタイミングでは、むしろ伸張がみられてもいいはずだ。

 マイクロソフトでは、今後も継続的なプロモーションを展開する姿勢を見せ、需要喚起に向けた準備を進めている。この2月の仕込みによって、進入学需要でどれぐらいの需要につなげられるかが注目される。