ニュース
レゴ、「教育版レゴ マインドストームEV3」
~9月の発売に先駆け、記者体験会を開催
(2013/4/26 15:52)
- 4月25日 開催
レゴマインドストームは、レゴブロックを使ったロボットや制御の学習キットであり、学校教育や企業研修などの現場で広く使われている。マインドストームの第3世代となる最新モデル「マインドストームEV3」は、9月に発売される予定だが、発売に先駆け、レゴエデュケーション日本正規代理店である式会社アフレルにより、25日に記者体験会が開催された。体験会では、マインドストームEV3についてのプレゼンのほか、ライントレースなどの課題に挑戦することができたので、その様子を紹介したい。
15年の歴史を持つマインドストームの最新版「EV3」
マインドストームの前身となったのは、スター・ウォーズに登場するロボット「R2-D2」のキットだという。このキットは、基本的にR2-D2専用であり、マインドストームという名前はまだなかったが、マイコンを搭載しており、簡単なプログラミングが可能であった。このキットが好評だったことで、より自由度が高く、ロボットや制御の学習に役立つキットとして「マインドストーム」が誕生した。
1998年に初代マインドストームである「マインドストームRCX」が、その8年後の2006年には第2世代の「マインドストームNXT」が登場した。実に15年の歴史を持ち、世界60カ国で、合計200万台が出荷されているという。また、ハードウェア、ソフトウェア共に仕様が公開されており、ユーザーの手によるさまざまな拡張が行なわれていることも特徴だ。実際、Maker Faireなどで、マインドストームを活用した作品が展示されていることも多い。
今回発表されたマインドストームEV3(以下EV3)は、第3世代となる製品であり、これまでのユーザーからフィードバックを元に、さまざまな改良が行なわれている。EV3は、基本セット(45,150円)と拡張セット(14,280円)があり、基本セットには全部で541のパーツが含まれている。基本セットには、コンピュータを搭載した心臓部となるインテリジェントブロック、インタラクティブサーボモーターM、インタラクティブサーボモーターL×2、超音波センサー、ジャイロセンサー、カラーセンサー、タッチセンサー×2などが入っており、色々なロボットを製作することが可能だ(ただし、ソフトウェアは別売りである)。拡張セットは、全部で853のパーツが含まれており、ギアやホイールなど、基本セットにはないパーツが入っている。さらに、追加パーツとして、赤外線によるワイヤレス操作やデータ通信を可能にするIRセンサー(4,830円)やIRビーコン(4,200円)、スマートフォンなどでWi-Fiによる通信が可能なWi-Fiドングル(5,250円)、温度センサー(6,090円)、DCアダプター(2,730円)などが用意される。
ARM 9を搭載し、16MBのメモリを装備
心臓部であるインテリジェントブロックのスペックは、前世代のNXTに比べて大きく強化されている。NXTでは、ARM 7ベースのCPUが搭載されていたが、EV3ではARM 9ベースのCPUになっており、処理性能が向上。インテリジェントブロックの上でLinuxを動かすことも可能だ。メモリは、NXTではRAMが64KB、フラッシュメモリが256KBしかなく、あまり複雑なプログラムを動かすことはできなかったが、EV3ではRAMが64MB、フラッシュメモリが16MBと、大きく増加している。
【お詫びと訂正】初出時にメモリ容量を誤っておりました。お詫びして訂正させて頂きます。
そのほか、出力ポートも3から4に増加し、iPhoneやiPadなどとの通信も可能になっている。さらに、microSDカードスロットやUSBホスト機能も備えているほか、USBによるインテリジェントブロックのデイジーチェーンが可能で、最大4台までのインテリジェントブロックを接続することで、最大16個のサーボモーターを制御可能だ。
サーボモーターは、回転センサーを内蔵しており、角度制御や計測も可能である。ジャイロセンサーを利用することで、セグウェイのような倒立振子も実現できる。さらに、インテリジェントブロックには、Bluetoothが内蔵されており、Bluetooth経由でのコントロールにも対応する。インテリジェントブロック単体でのプログラミングも可能だが、別売りの「教育版EV3ソフトウェア」(シングルライセンス14,070円、サイトライセンス56,700円)を利用することで、より高度なプログラミングやデータのロギング、グラフプログラミングなどが可能になる。
予約販売は5月8日に開始、予約分は8月上旬に先行出荷
EV3の製品販売スケジュールだが、一般発売開始は9月1日で、5月8日に同社のサイトで予約販売を開始し、予約分は8月上旬に先行出荷される。また、予約特典として300名限定で、IRビーコンとIEセンサーのセットがプレゼントされる。予約だけの特別セットも用意されており、AセットはEV3基本セット+ソフトウェアで61,950円。AセットにEV3拡張セットを追加したBセットは76,230円。Bセットに通信セットを追加したCセットは90,510円となる。EV3は、教育用キットではあるが、学校関係者や企業以外の一般ユーザーも、同社から直販で購入することは可能だ。
発売開始前に体験する機会を作ろうということで、「アフレルEV3キャラバン100」という体験会が全国100カ所で行なわれる予定である。日時は2013年5月~7月の平日、18時30分から20時30分の予定。さらに、6月29日と30日には、EV3ソフトウェア開発者のクリス・ロジャーズ博士を招き、東京の日本科学未来館と名古屋大学でスペシャルワークショップが開催される。11月10日にはEV3による作品コンテスト「EV3 Smart Design Contest」を開催予定で、コンテストのテーマは、「Connect、コネクト、つなぐ」である。
EV3でライントレースに挑戦! 最後は競技会も
今回の体験会の目玉は、実際にEV3を使ってさまざまな課題に挑戦すること。レゴブロックの要領で、ハードウェアの組み立てからやるのが、本来のマインドストームの使い方だが、時間の関係もあり、今回はハードウェアはすでに完成している状態で、プログラミングのみ体験した。
ハードウェアはシンプルな3輪ロボットで、もちろん基本セットだけで組み立てられる。課題は3つあり、課題1は「モーターを使って、目的地まで行く」、課題2は「センサーを使って、目的地まで行く」、そして最後の課題3が「黒い線に沿って走る」というもので、前の課題を応用することで新しい課題を達成できるようにカリキュラムが作られている。内容的には、中学生を対象としたものと同じだという。
プログラミングには、PCで動作するEV3ソフトウェアを使う。今回は利用したEV3ソフトウェアは英語版だったが、発売時には日本語ローカライズされたものが提供される。
課題1については、まず単に一定時間前進して止まるという、簡単なプログラムを作成した。プログラムといっても、マウスでブロックをドラッグアンドドロップして繋げ、速度や方向などのパラメーターを指定するだけなので、C言語などの知識は一切不要だ(なお、EV3自体はCやJavaなどのプログラミング言語にも対応予定である)。
課題2は、課題1のプログラムに、センサーの値によって、モーターの停止を行なうブロックを追加すればよい。
課題3は、いわゆるライントレースであり、カラーセンサーが1つしかないEV3の場合は、黒いラインの上なら斜め左に進み、ラインから外れたら斜め右に進むという、シンプルなアルゴリズムでラインに沿って走らせることができる。しかし、ここで難しいのが、斜めに進む際の方向(角度)と速度である。角度が緩いと、より滑らかに進むため、タイムロスは少ないが、急なカーブを曲がりきれなくなってしまう。逆に、角度が急過ぎると、まっすぐなライン上でも左右に大きく首を振りながら進む感じになり、タイムロスが大きい。試行錯誤によって、角度と速度のパラメーターを最適化することで、スムーズかつ高速なライントレースが可能になる。筆者は、最初難しく考えすぎて、余計なブロックを追加していたため、やたらとロボットの進みが遅くなってしまったが、シンプルな方法でいいというアドバイスを受け、プログラムを改良したところ、最初よりは高速に進むことができた。
最後には、参加者全員による、ライントレースの競技会が行なわれた。同時に4台のロボットをスタートさせ、それぞれのタイムをストップウォッチで計測するというものだが、速度を上げすぎてカーブを曲がりきれないロボットがあったり、急なカーブでクルクル回ってしまったロボットもあり、盛り上がった。
筆者は、当初余計なことをしていたため、パラメーターを最適化する時間が足りなくなり、真ん中よりやや上程度の成績であった。ライントレースは一見単純なようだが、ギリギリまで高速化しようとすると、結構大変なことが分かった。ハードウェアの組み替えが簡単で、プログラミングも直感的にできるEV3は、こうした制御の基礎を学ぶのに、最適な教材といえるだろう。