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2006 International CES
【ユニーク製品&ロボット編】
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Celestronの「SkyScout」。手で気軽に持てるサイズと重量を実現している | 側面にはバックライト付きの液晶や操作ボタンが用意されている | 前面から見たところ。なお、一見レンズが入っているようだが、実際は素通しのガラスである |
上面には星の識別に使う「TARGET」ボタンが用意されている | こちらが、覗く側。USBポートとヘッドフォン端子が用意されている | 前面には、SDメモリーカードスロットが用意されている |
SkyScoutには、主に2種類のモードが用意されている。1つが「Identify」と呼ばれるモードであり、SkyScoutを覗いて視野の中央に星が入るようにして、本体上面の「TARGET」ボタンを押すことで、その星が識別され、星の名前や光度、地球からの距離などの情報は、側面の液晶ディスプレイに表示される。SkyScoutの内蔵データベースには、6,000個の恒星、1,500個の二重星や変光星、88の星座、100以上の星雲や銀河、星団などの情報が収録されているので、肉眼で見える天体は全てカバーされていると思ってよいだろう。また、ユーザーが自分で星の情報を追加することも可能だ。
もう1つは「Locate」と呼ばれるモードだ。こちらは逆に、リストから見たい天体を選ぶことで、その天体の位置をガイドしてくれるというものだ。ジャンルなどから見たい天体を選び、SkyScoutを覗くと、視野の中でその天体がある方向のLEDが点灯する。LEDは8方向に配置されており、例えば、右側のLEDが光っているのなら、右側にSkyScoutを動かしていけばいい。同時に2つのLEDが点灯する場合もあり、その場合は、2つのLEDの中間の方角にSkyScoutを動かすことになる。LEDに従ってSkyScoutを動かしていくと、8つのLEDが全て点灯するときがある。そのとき視野の中央に見えているのが、目的の天体というわけだ。
文章で書くと長いが、実際に覗いてみると操作は直感的だし、LEDに従ってSkyScoutを手で動かしていくのはなかなか楽しい。シューティングゲームなどでスコープを覗いているような感覚だ。Locateモードでは、現在いる場所や日時に応じて、今夜のお勧め天体を挙げてくれるメニューも用意されているので、天文に詳しくないという人でも楽しめる。
今夜のお勧めを選んだところ。金星や火星、ベガ(こと座の0等星)、アルタイル(わし座の1等星)、フォーマルハウト(みなみのうお座の1等星)がまずお勧めとして挙げられている | 火星についての説明。説明もかなり詳しいので、学習用にも適してい | SkyScoutは、このように手でもって覗き込んで使う |
Locateモードでは、天体のある方角のLEDが視野の中で点灯するので、光っている方向にSkyScoutを動かしていけばよい | このように2つLEDが点灯することもある。この場合は、北を上とする地図の表記で言うと、西北西の方角に動かせばよいことになる(つまり方向は、16方位で指し示すことができる) | 目的の天体が視野の中に入ると、8つのLEDが全て点灯する。これで目的の天体へのナビゲーションは終了だ |
また、天体に関する情報は、テキストとして表示されるだけでなく、ヘッドフォンやスピーカーなどを接続すれば、音声として聞くこともできる(もちろん、表示や音声は英語だが)。音声ガイダンスは、200個以上の有名天体に用意されている。さらにUSBポートやSDメモリーカードスロットも装備しており、PCと接続して内蔵データベースの情報をアップデートすることも可能である。例えば、新しく彗星が発見されたらその軌道データを追加することや、人工天体(衛星や国際宇宙ステーションなど)のデータを追加することもできる。
「Audio」を選択すれば、天体の情報を音声で聞くことができる | ブースではスピーカーを接続して、音声ガイダンスのデモを行なっていた |
SkyScoutの本体サイズは約188×63.5×102mm(幅×奥行き×高さ)、で、重量は約430g(バッテリは含まず)、単3アルカリ乾電池2本で動作する。液晶はバックライト付きで、解像度は240×80ドットである。価格は399ドルで、米国での出荷は3月を予定しているとのことだ。なお、日本では7月に発売されるようだ。ただし、液晶表示の日本語化については未定である(Celestronの自動導入天体望遠鏡のNexStarシリーズなども、コントローラの表示は英語のまま、日本語マニュアル付き正規品として販売されているので、表示の日本語化についてはあまり期待できない)。
最後に、1つ念を押しておきたいが、SkyScoutはいわゆる「望遠鏡」としての機能は持っていない。一見、接眼レンズと対物レンズが備えているようだが、どちらも単なる素通しのガラスであり、集光や拡大を行なうことはできない。つまり、肉眼で見えている以上の星は見えないわけだ。しかし、望遠鏡や双眼鏡を使ったことがある人なら分かるだろうが、手持ちで実用的に使える倍率はせいぜい10倍前後だ。それ以上倍率を上げると、三脚などに固定しないと、ブレがひどくて実用的ではない。数十倍程度の倍率で、惑星の細部などが観察できるわけではないので、天体ナビゲーターとしての役割に徹した本製品の仕様は理にかなっているのだ。
光害がひどい都会では、見える星の数も限られているが、満天の星を眺められる環境なら、SkyScoutの真価を最大限に発揮できる。キャンプなどに持って行けば、気軽に星空散歩を楽しむことができそうだ。筆者も、触ってみて強く物欲を刺激されたので、日本での発売を楽しみに待ちたいと思っている。なお、Celestronブースでは、同社の主力製品である自動導入天体望遠鏡やデジカメ一体型双眼鏡なども展示されていた。
Celestronのブースで展示されていた自動導入天体望遠鏡「NexStar 102SLT」。口径102mmの屈折型望遠鏡だ | こちらも入門向けの「NexStar 130SLT」。口径130mmの反射型望遠鏡である |
デジカメ一体型双眼鏡「VistaPix」 | 大型自動導入天体望遠鏡「CPC GPS 1100」。口径279mmのシュミットカセグレン方式の望遠鏡だ |
●iRobotの新製品「Scooba」は拭き掃除ロボット
iRobotといえば、丸い掃除機ロボット「Roomba」シリーズの発売元として知られているメーカーだ。CESのiRobotブースでは、新製品の「Scooba」やRoombaシリーズの最新モデルが展示されており、注目を集めていた。
Scoobaの外見はRoombaシリーズに非常によく似ているが、Roombaシリーズがゴミを吸い込む「掃除機ロボット」であるのに対し、Scoobaは、床を磨く「拭き掃除ロボット」である。Roombaは、主にカーペットや畳、フローリングの上で利用するのに対し、Scoobaはフローリングやタイルなどの上で利用することになる。Scoobaでは、通過の際に4つの動作を行なうことで、床をきれいに磨いていく。まず、パンなどの細かなくずや砂、ほこりを吸い込む。次に、洗剤を吹き付けて床を洗い、汚れやほこりを拭き取る、そして、最後に汚れた洗剤を吸い上げて乾かすという手順だ。
ブースでは、実際にフローリングなどの上でデモをしており、汚れをきれいに拭き取って、磨けることをアピールしていた。動き自体は、従来のRoombaシリーズとほぼ同じようだ。Scoobaの価格は、399.99ドル(動作場所を制限するバーチャルウォールが1つ付属)で、すでに販売が開始されているとのことだ。
iRobotの新製品「Scooba」。拭き掃除を行なってくれる | Scoobaの外観やサイズは、Roombaシリーズとよく似ている | Scoobaは、専用の洗剤を入れて利用する |
【動画】Scoobaが動いている様子。稼働音はかなり大きい | Scoobaのパッケージ。「FLOOR WASHING ROBOT」とされている | Scoobaでは、4つの動作を一度の通過で行なう仕組みになっている |
また、Roombaシリーズの最新モデル「Roomba Scheduler」も展示されていた。Roomba Schedulerはその名の通り、スケジュール機能を装備しており、外出している間に自動的に掃除を行なわせるといったことが可能である。Roomba Discoveryと同じく、掃除が完了すると自動的に充電ベースに戻って、充電を行なう機能も搭載している。こちらの価格は329.99ドルで、バーチャルウォールが2つ付属する。
Roombaシリーズの最新モデル「Roomba Scheduler」。スケジュール機能を搭載する | Roomba Schedulerも、実際の動作デモが行なわれていた | Roombaシリーズのラインナップもずいぶん増えている。値段も一番安いRoomba Redなら149.99ドルだそうだ |
Roombaシリーズの中でも売れ筋の「Roomba Discovery」。掃除が終わると、自動的に充電ベースに戻る機能を装備。値段は279.99ドル | Roomba Discoveryと、充電ベース。充電ベースは比較的小さい | Roomba Discoveryのデモ。こちらはカーペットの上で行なわれていた |
●LEGOマインドストームの新製品「MINDSTORMS NXT」が登場
「ROBOTICS」コーナーが新たに設けられていた |
今回のCESでは、新たに「ROBOTICS」コーナーが設けられ、ロボット関連ブースが集められていた。中でも、注目が集まっていたのが、LEGOマインドストームの新製品「MINDSTORMS NXT」の展示だ。MINDSTORMS NXTは、LEGOのロボット組み立てキット、LEGOマインドストームの最新モデルで、このCESにあわせて発表が行なわれた製品だ。LEGOマインドストームは、LEGOテクニークシリーズをベースにしており、アイデア次第でさまざまな形状のロボットを組み立てられ、本格的なプログラミングも可能なことから、多くのファンを獲得している製品だ。
MINDSTORMS NXTは、次世代(NXT)という名にふさわしく、大幅に進化を遂げている。従来のLEGOマインドストームのインテリジェントブロックは、シリアル通信しかサポートしていなかったが、MINDSTORMS NXTのインテリジェントブロックは、USB通信やBluetoothを標準でサポートしていることが特徴だ。PCとUSB経由で接続して、プログラムの転送が可能なほか、Bluetooth対応携帯電話などからのコントロールも可能だ。
インテリジェントブロックには、3つの出力ポートと4つの入力ポートが用意されており、超音波センサーやサウンドセンサー、光センサー、タッチセンサーが付属する。CPUとしては32bitのARM7を搭載、256KBのフラッシュメモリと64KBのRAMを搭載するほか、サブとして8bitCPUも搭載する。モーターも、速度や角度の制御が可能なサーボモーターになり、二足歩行ロボットなどの高度なロボットも作成しやすくなった。モーターは標準で3個付属している。
プログラミングは「LabVIEW」と呼ばれる開発環境を利用して、ビジュアルに行なうことができる。また、標準でWindows/Macintoshの両方の環境に対応していることも評価できる。
MINDSTROMS NXTは、米国では8月に発売される予定で、価格は249.99ドルとのことだ。MINDSTORMS NXTのサイトにあるFAQには、「MINDSTORMS NXT will be launched in five language versions - English, German, French, Dutch and Japanese.」という記述があるので、日本語版の登場予定もあるようだ(日本での発売時期は不明)。価格も手頃であり、こちらも非常に面白そうだ。
LEGOマインドストームの新製品「MINDSTORMS NXT」で作った二足歩行ロボット。実際に歩いていた | こちらは大きなハサミを持つ昆虫型ロボット。セットに含まれるパーツでさまざまな形状のロボットを作ることができる |
MINDSTORMS NXTで作った6本足の昆虫型ロボット | 大きなハサミを動かして、ボールをつかむデモも行なっていた |
MINDSTORMS NXTのパッケージ。全部で571個のパーツが含まれている | MINDSTORMS NXTの頭脳に当たるインテリジェントブロック。32bit CPUを搭載し、4つの入力ポートと3つの出力ポートを装備 | 開発環境には「LabVIEW」を採用。パーツを並べていき、ビジュアルに開発が行なえる |
●RadioShackのロボット組み立てキット「Vex」
ROBOTICSコーナーで、1番大きなスペースが割かれていたのが、RadioShackのロボット組み立てキット「Vex」に関する展示だ。Vexは、金属フレームやサーボモーター、歯車、タイヤなどから構成されているロボット組み立てキットで、LEGOマインドストームと同じく、アイデア次第でさまざまな形状のロボットを組み立てることができる。ただし、こちらは基本的に二足歩行ではなく、タイヤで動くロボットを作ることが想定されているようだ。
ブースでは、Vexを利用して作られたロボットを来場者が動かせるようになっており、ボールを高い場所に運ぶためのフィールドが作られていた(高専ロボコンでよくありそうなシチュエーション)。基本キットのVex Starter Kitは299.99ドルで販売されているほか、センサーやモーターなど、さまざまな追加パーツが用意されている。
RadioShackの「Vex」を利用して作られたロボットを、来場者が操作できるようになっていた | Vexによるロボットのアップ。製作の自由度も高そうだ |
こちらはライントレースロボットの製作例 | Vexの送信機。いわゆるラジコン用のプロポのようなデザインだ | Vex Starter Kitのパッケージ。マイクロコントローラーや4つのモーターなどが含まれており、299.99ドルで販売されている |
また、韓国HITECの米国法人であるHITEC USAブースでは、二足歩行ロボットキット「ROBONOVA-I」が展示されており、デモに足を止める人が多かった。なお、ROBONOVA-Iは、すでに日本でも、日本法人のハイテックマルチプレックスジャパンにより、98,000円で販売が開始されている。
HITEC USAブースでは、二足歩行ロボットキット「ROBONOVA-I」を展示していた | 側転や前転など、ダイナミックなアクションを繰り広げていた |
そのほか、Roombaによく似た形状だが、お掃除ロボットではなく、危険な場所での偵察を主な用途としたやや物騒なロボットを展示しているブースもあった。
軍事用途などにも利用できる偵察用ロボットを展示していたAutonomous Solutionsブース | Autonomous Solutionsの偵察用ロボット。外見はRoombaシリーズによく似ている |
裏面はこのようになっており、ある程度の傾斜や凹凸があっても、走行可能だという | 高さが低いので、車の下に潜り込むこともできる |
□2006 International CESのホームページ(英文)
http://www.cesweb.org/
□関連記事
【2003年9月17日】【石井】約6万年ぶりに「超」大接近した火星の撮影にチャレンジ! (後編)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0917/digital004.htm
【2003年8月27日】【石井】約6万年ぶりに「超」大接近する火星の撮影にチャレンジ! (前編)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0827/digital003.htm
【2002年12月26日】39,800円のお掃除ロボット「ルンバ」レポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/1226/roomba.htm
(2006年1月12日)
[Reported by 石井英男]