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Adobe、データから説得力のあるスライドやおもてなし動画を自動AI生成するツール
2025年3月21日 10:24
Adobeは、デジタルマーケティングのイベントである「Adobe Summit」を3月18日~3月20日(現地時間)に米国ネバダ州ラスベガス市のThe Venetian Expoにおいて開催した。3月19日の夕刻には、Adobeの年次イベントでは恒例のAdobe Sneaksを行ない、同社が開発中の新しい技術やアプリケーションなどを公開した。
今回Adobeは「Project Panorama」、「Project PerfectContext」、「Project SlideWow」、「Project VisionCast」、「Project SiteLeap」、「Project GetSavvy」、「Project Framesense」という7つの開発中のアプリケーションやサービスなどを公開した。
Adobeの若手開発者にとって晴れの舞台でもあり、試練の場でもあるAdobe Sneaks
Adobeは年に2回、大きなイベントを開催している。秋はCreative Cloudをテーマにした「Adobe MAX」、春はデジタルマーケティング向けツールのExperience Cloudをテーマにした「Adobe Summit」だ。
その2つのイベントの中で、同社の若手開発者が登壇し、自分が開発している製品のPoC(Proof of Concept、開発している技術が実現可能かどうかを確認する試作のこと)を公開、詰めかけた観客にその是非を問う「Sneaks」という講演を開いている。
通常の講演、たとえば基調講演などは午前中に真面目な雰囲気の中で行なわれる。しかし、Sneaksは全く趣が違い、夕方で参加者(のうち希望者)にはお酒が振る舞われ、ビール片手にSneaksを見る、一種のエンターテイメントとして行なわれている。このため、参加者も面白いと思ったものにはヤンヤの歓声を浴びせるが、つまらないものにはブーイングとまでは行かないが、沈黙で答えたりするなど、若手開発者にとっては、厳しい洗礼を浴びる場でもある。つまりSneaksはエンターテインメントでもあり、若手の開発者を鍛える場でもあるわけだ。
今年のSneaksは、Adobe エヴァンジェリスト エリック・マシソフ氏がホスト役を務め、米国の俳優・コメディアン・プロデューサーのケン・チョン氏がそのパートナーとして会場を盛り上げる役となって、際どいジョークなどを連発しながら、観客を盛り上げた。
データを活用したスライドの自動生成や顧客に特化したおもてなし動画を生成するなど生成AIを活用したデモが多数
今回Adobeは、「Project Panorama」、「Project PerfectContext」、「Project SlideWow」、「Project VisionCast」、「Project SiteLeap」、「Project GetSavvy」、「Project Framesense」という7つの開発中のアプリケーションやサービスなどを公開した。これらのPoCは、顧客の評判などが良ければ実際の製品としてブランド名がついて展開されていく可能性がある。
近年のAdobe SneaksではAIや生成AIを活用したツールが発表されることがほとんどだが、今回のSneaksでもほぼすべてのツールが生成AIベースになっており、人間に変わって自動化するアイディアなどが多く公開されている。
Project Panorama
Adobe Experience Cloudでは、スマートフォン向けモバイルアプリを構築する機能を、顧客企業に提供している。顧客企業はそれを利用して、スマートフォン向けのモバイルアプリを作成し、一般消費者に提供することができる。実際に読者が利用しているモバイルアプリの中にも、裏側ではAdobe Experience Cloudが利用されているという例は多数ある。
Project Panoramaでは、そうしたモバイルアプリの構造をグラフィカルに表示することが可能になる。モバイルアプリを設計した人は自分で構造を理解しているかもしれないが、マーケティング活動を行なっているマーケターは、自分でアプリを設計したわけではないので、どこをどういじれば効果的なマーケティングを行なえるのかということを理解するまでに時間がかかる。
このProject Panoramaを利用すると、アプリをリバースエンジニアリングするように構造を表示してくれるので、そこに必要な新しいサービスなどを簡単に追加することができるようになる。
Project PerfectContext
Project PerfectContextはAdobe Experience Cloudの顧客体験を改善するツール。AIのチャットボットとして提供され、データから解析してどこに問題があって、一般消費者の購買につながらなかったのかを解析することができる。
たとえば、モバイルアプリに問題があって、それが購買につながっていない原因になっているといった問題の原因を突き止め、マーケターに改善を促すことができる。
Project SlideWow
Project SlideWowは、マーケターが活用するマーケティングデータを基にして自動でプレゼンテーションのスライドを作成してくれるツール。必要なデータを指定することで、AIが自動的にプレゼンテーションに必要なスライドを作成してくれるだけでなく、プレゼンター向けのメモを数字入りで作成し、さらにより詳細な指定を行なって、スライドを追加させるなどの機能が用意されている。
ビジネスパーソンにとって説得力のあるスライドを作成するのは、「時間泥棒」(英語ではタイムコンシューミング)的な作業だが、このProject SlideWowを使えば、AIが自動で作成してくれるので、その作業時間を大幅に短縮することができる。
Project VisionCast
Project VisionCastは、単なる数字の羅列であるマーケティングデータ(一般消費者のWebサイト訪問データや購買データなど)を、単に数字としてグラフ化するだけでなく、その購買活動を製品の写真などのビジュアルと紐づけて表示するツール。それにより、部内の会議などに資料として提出する時などにグラフよりも説得力のあるデータとして提供することが可能になる。
Project SiteLeap
Project SiteLeapは、Adobe Experience Cloudで、一般消費者向けのWebサイトを構築しているマーケターのためのツールで、企業が提供しているWebサイトなどのデータを、簡単に直感的によりよいWebサイトに変更することができる。プロンプトにどうしたいかだけを入力することで、AIがその企業のビジュアルデータやWebサイトに提供するブランドロゴのルールなどを適用してさらによいものに変えてくれる。
Project GetSavvy
Project GetSavvyは複数のAIエージェントを利用して効果的なマーケティングキャンペーンを構築するためのツール。マーケティングキャンペーンのプラン作成の段階からAIエージェントにプロンプトで相談し、それに答えていくだけで新しいマーケティングプランが作成されていく。
その過程では、SNSのデータを参照し、企業が持つ顧客データなどを参照しながら計画が作成されていくので、効果的なマーケティングプランやそれに伴って必要になるコンテンツなどをほぼ自動で作成できる。
Project Framesense
Project Framesenseは顧客に対して提供する、それぞれの顧客に特化した映像を自動で生成してくれるツール。
たとえばホテルチェーンなどが、ホテルに到着した顧客に対してテレビにウエルカムメッセージを出す動画などを自動で生成し、顧客の好みに応じた提案(食事が好きな顧客にはホテルのレストランでの割引クーポンを表示する、オプションのツアーの提案など)を入れながら、それぞれに特化したウエルカムメッセージ動画を自動生成する。
複数の顧客向けのデータをものの数秒で作成できるので、大規模なホテルなどでも活用することができ、顧客に特化した提案を行なうことで、サービスの利用率などを上げることと、顧客のユーザー体験(日本的に言うとおもてなし)を向上させることができる。