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富士通PCが5,000万台突破!限定1台の組子細工ノートが誕生

組子細工を施したFMV Note C。5,000万台記念モデルとして限定1台で製作された

 富士通クライアントコンピューティング(FCCL)の生産子会社である島根富士通(島根県出雲市)は、PCの累計生産台数が5,000万台を突破したことに併せて、2025年2月13日午後3時から、達成記念式典を開催。同社関係者など約110人が参加した。

 PCの国内生産で5,000万台に到達したのは島根富士通が初めてとなる。島根富士通では、5,000万台記念モデルとして、FMV Note Cに組子細工を施した製品を限定1台で製作し、式典に併せて披露した。同モデルは非売品となる。

 島根富士通の神門明社長は、「操業以来、30年以上に渡り、出雲の地でモノづくりを継続してこられたのは、関係者、協力会社や行政の支援と指導、助言によるものである。累計生産5,000万台という節目を迎えたが、これは通過点にすぎない。従業員一丸となって、次の未来に向かって進化をしていく」と挨拶。

島根富士通の神門明社長

 FCCLの大隈健史社長は、「法人向けPCは富士通ブランドのもと、信頼性やカスタマイズ対応の柔軟性といったMADE IN JAPANならではの品質を、より一層高めてきた。

 また、小型化の強みはデスクトップPCにも生かされ、省スペース化を実現。日本の働き方や働く環境を考え抜いた製品を提供している。個人向けPCは、未来を見据えたチャレンジを行なうため、FMVブランドのリニューアルを先頃行なった。FMVを、これからの時代をリードするブランドへと進化させる。

「島根富士通は日本のモノづくりの誇りを象徴する場所」と語るFCCLの大隈健史社長

 法人も個人も共通して求めているのは、日本のPC市場環境に適した高付加価値と、安心できる高品質である。FCCLが神奈川県川崎で行なっている企画。開発と、島根富士通で行なっている生産が、密に連携することで、日本市場に適した製品と高い品質を追求できる。

 開発と製造のOne Teamによるリアルタイムな連携と仲間意識が、高付加価値と高品質を生む鍵である。PCを取り巻く市場変化が激しい今こそ、島根富士通のモノ作りが重要になる。島根富士通は単なる製造拠点ではなく、日本のモノづくりの誇りを象徴する場所である」と述べた。

記念式典の様子

5,000万台にいたるまでの道

島根県出雲市の島根富士通
入口には5,000万台記念式典の文字が表示されていた

 島根富士通は、1989年12月に設立。1990年10月から富士通初のPC専門工場として操業。当初は、FM TOWNSなどのデスクトップPCを生産し、1995年以降はノートPCの専門工場として稼働し、着実に生産台数を拡大。2011年からはタブレットPCの生産も開始。さらに、2021年にはデスクトップPCの生産を再開し、現在、国内におけるFMVブランドのPC生産は、島根富士通に一本化されている。

島根富士通の幹部

 1994年8月に累計生産台数が50万台に到達したのを皮切りに生産台数を徐々に拡大。1995年8月には100万台、1997年8月には200万台、1998年11月には300万台、2000年7月には500万台を達成。

 その後、2003年6月には1,000万台、2008年2月には2,000万台、2013年5月には3,000万台、2019年5月に4000万台に到達していた。最初の1,000万台までは10年10カ月を要したが、4,000万台からの5,000万台までの1,000万台は、コロナ禍を経ながら、6年以内で達成した。2020年には年間最大規模となる240万台を生産した。

節目に生産された記念モデル。手前が4,000万台記念モデル
5,000万台記念モデル

 法人向け生産は100%国内生産であるが、徐々に個人向けPCにおける島根富士通での生産比率が高まり、現在では、全生産量の80%が島根富士通で生産している。

伝統工芸の組子細工で作られたノートPC

5,000万台記念モデルを披露した

 また、島根富士通では、2003年から生産革新活動を開始。2008年には組立から梱包までの一気通貫ラインを構築し、現在ではロボットや無人搬送車の導入やデータ活用により、自動化とデジタル化を推進している。

 さらに、2012年には出雲ブランド商品に選定されたほか、2020年には永年貢献立地企業として表彰されるとともに、出雲市のふるさと納税返礼品にも選定。地元小中学校の工場見学の積極的な受け入れや、パソコン組み立て教室の実施などの地域活動を通じて、地元とのつながりを強化している。

 島根富士通では、節目ごとに記念モデルを製作しているが、今回の5,000万台を記念して製作したモデルは、天板に組子細工を施した特別仕様となっている。

来賓を始めとした参加者が工場内を視察した

 組子細工は、飛鳥時代から受け継がれる日本の伝統工芸技術で、小さな木片を、釘を使わずに組み付けていくのが特徴だ。

 島根県雲南市に本社を持つ舟木木工所が製作に協力。構想および製作に約2カ月を要して完成。サクラ、ヒノキなど4種類の材料で作られた細かな木のピースを5,800個使用して組み上げたという。

 組子細工職人である同社の舟木清代表は、「天板には今年の干支である蛇を描いた。島根富士通が脱皮して発展すること、新たに移り変われるようにという思いを込めた」と述べた。デザインの中には2匹のヤマタノオロチが右方向に昇り、天然木が持つやさしい色合いを生かしている。また、ブランドリューアルしたFMVの新たなロゴもあしらわれている。

 舟木代表は、「島根富士通に何度も足を運び、試行錯誤を繰り返した。最終的には、3種類のデザインを用意し、その中から選んで完成させた。組子細工は一般的に6~9mmの熱さの木片を使用するが、4mmという薄さで作り上げた。そのため、年輪が多い目の細かな材木を選ぶ必要があった。多くが初めての経験だった」と振り返った。

製作を担当した舟木木工所の舟木清代表
5,000万台モデルを組子細工で作り上げている様子

 島根県の丸山達也知事は、「島根県の伝統工芸である組子細工により、伝統と現代の技術を極めたものになっている」とコメント。出雲市の飯塚俊之市長は、「温かみを感じ、優しいを感じる。国産にこだわる島根富士通の結晶である」と述べた。
今後、島根富士通のショールームに常設展示される。

5,000万台モデルとともに記念撮影する(左から) 出雲市の飯塚俊之市長、島根富士通の神門明社長、FCCLの大隈健史社長、島根県の丸山達也知事

豪華な記念式典に

レセプションで行なわれた鏡開きの様子
大土地神楽が披露された

 一方、同日午後6時からは、出雲市の出雲ロイヤルホテルで、記念レセプションが開かれ、FCCLや島根富士通、富士通の関係者のほか、島根県の丸山達也知事や出雲市の飯塚俊之市長など、約100人が出席した。

乾杯の音頭をとるFCCLの広末庸治執行役員常務

 挨拶したFCCLの竹田弘康会長は、「5,000万台達成までの道のりには多くの困難があった。1ドル80円の超円高の時代には、台湾のODMメーカーとコストを比較され、その対応に追われた。生産性を高めるためにトヨタ生産方式を学ぶことになったが、自分たちのものにするために10数年かかった。

 しかし、今では、島根富士通生産方式と言えるものを確立できた。私達にとって、自慢の工場である。累計生産5,000万台という偉業を達成できたのは、工場の一人一人が、日々、真面目に改善活動を続けてきた結果である。これからも国産にこだわり続ける」と発言。

FCCLの竹田弘康会長

 島根富士通の宮下浩之執行役員常務は、「当初は半導体工場として用地を取得したが、最終的にはパソコンの工場として建設することになった」というエピソードを披露しながら、「5,000万台の達成にいたるまでには、さまざまな挑戦と紆余曲折があった。多くの方々の協力を得て、困難を乗り切ることができた。次の6000万台、1億台を目指して、我々は進化をしていく」と決意を述べた。

島根富士通の宮下浩之執行役員常務

 富士通の古賀一司執行役員 SEVPは、「富士通ブランドのPCが5,000万台に到達したということは単純計算で、日本の人口2人に1台が使っていることになる。また、生保企業の営業職員30万人以上が、島根富士通で作ったPCを使ってもらっている。軽いという評価とともに、シャンパンゴールドというカラーを新たに採用したことに対して、女性が持ったときに格好いいと評価をもらったこともあった。

 当時、これを生産するのに、島根富士通では、10人の作業者が、匠の技によって組み立てていたが、海外で同じことをやろうとすると150人の人が必要であるという説明を受けた。匠の技を組み合わせることで、DXがさらに広がっていくことになるだろう。日本でのモノづくりに、もっと誇りを持ちたい」と語った。

富士通の古賀一司執行役員 SEVP

 来賓として挨拶した島根県の丸山達也知事は、「30年以上に渡り、高付加価値のPCを国内生産している島根富士通が、5,000万台の累計生産を達成したことは誇りに思う。島根県は人口が減少するといった話が多いが、出雲市は島根の工業集積地として、多くの雇用を創出し、人口が減少しないという状況にある。島根富士通のPC生産が順調に増加していることは心強い。6000万台の到達をできるだけ早く達成してもらいたい」と語った。

島根県の丸山達也知事

 同じく来賓として挨拶した出雲市の飯塚俊之市長は、「国内生産にこだわっている島根富士通は私達にとっても誇りである。出雲ブランドの1つとして商品化しており、出雲市のDXも、富士通のパソコンによって進んでおり、快適に仕事ができている。雇用での貢献も大きく、地域経済や地域活性化にも貢献してもらっている。出雲市は2027年度にトキを放鳥する予定であり、ここにも島根富士通は協力している。引き続き、出雲に貢献してもらうことを期待している」と語った。

出雲市の飯塚俊之市長

 さらに、山陰中央新報の松尾倫男社長は、「すべての記者が富士通のPCを使っている。雪の中でも、雨の中でも、甲子園の炎天下の中でも使っているが壊れない。しかも安い。もう少し壊れるようにするか、もう少し高くしたほうがいい」とジョークを交えて提言。

山陰中央新報の松尾倫男社長

 協力会社である、にのせ電子の二瀬武博社長は、「プリント基板のアセンブリを担当し、合格すれば、次の注文をもらうというスタートであった。島根富士通では、台湾との競争に打ち勝ち、さらなる発展を遂げ、21世紀には世界最高のノートPCの生産拠点になるという目標を達成した。島根富士通が5,000万台の累計生産を達成したことをお祝いする」と挨拶した。

にのせ電子の二瀬武博社長

 締めの挨拶を行なった島根富士通の山根淳執行役員常務は、「これからの30年も、島根の地で、そして出雲の地で、ブレることなく、モノづくりに打ち込んでいきたい」と宣言した。

島根富士通の山根淳執行役員常務
レセプションが終了し、参加者を見送るFCCLおよび島根富士通の幹部