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「100GHz/100コアの光量子コンピュータ」に道筋。NTT/東大/理研共同研究
2023年3月9日 11:12
日本電信電話株式会社(NTT)、東京大学、理化学研究所は共同で、商用の光通信技術を光量子分野に適用させる新技術を開発し、光通信用検出器を用いることで世界最速となる43GHzのリアルタイム量子信号の測定に成功したと発表した。5G技術の1つである波長分割多重化技術と組み合わせることで、マルチコア光量子コンピュータを構成でき、スーパー量子コンピュータへの道を開いたという。
量子コンピュータの実現に向け、さまざまな方式が提案されているが、中でも大規模化と高速化を実現できる時間領域多重化技術を用いた測定誘起型の光量子コンピュータが注目されている。
この方式では、超電導量子ビットのような「定在波」量子ビットではなく、光子が高速で飛来する「進行派」量子ビット(フライングキュービット)を用いる。進行派量子ビットを時間軸上に並べることで、装置の大型化や素子の集積化をすることなく、大規模化が実現できるとされている。また、光通信技術との親和性が高く、これまでの投資で発展してきた光通信の高信頼性かつ高性能な技術を活用できるのが特徴。
しかし、これまでの100GHz超の高速な光通信用ディテクタは光損失が大きく、損失により光量子状態が崩壊するため、光損失が少ない特別に設計された低速なディテクタを用いる必要があった。ところがこれは測定誘起型量子操作において、クロック周波数を制限する要因となった。例えば研究チームは2021年にTHz帯域の量子光生成に成功したが、測定器の制限により、帯域を十分に活かせなかったという。
今回の実験では、約3,000倍の高い増幅率と、小さい信号帯雑音指数(約20%)を有する、直接接合型周期分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)導波路による光パラメトリック増幅器を採用。光量子情報を保持したまま光を増幅させることで、これまで適用できなかった超高速光通信技術を光量子分野に適用する新手法を開発。光通信技術の高速/広帯域性を十分に活用し、従来技術と比較して1,000倍以上のクロック周波数で動作可能な高速量子演算を実現したという。
さらに将来的には、光通信技術の1つである波長分割多重化技術(WDM)を用いることで、量子プロセッサのマルチコア化も達成可能としており、従来のノイマン型コンピュータの動作速度を凌駕するTHzオーダーの帯域を最大限に活用し、100GHz帯域/100コアのスーパー量子コンピュータを実現するとしている。