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楽天、自動配送ロボットサービスを東京で本格稼働。夜間や雨天時も配送対応

 楽天は6日、東京都中央区晴海全域と月島、勝どきの一部において、自動配送ロボットによる小売店や飲食店の商品の無人配送サービス「楽天無人配送」の提供を開始すると発表し、記者説明会を開催した。2024年8月からテストサービスを行なっていたが、11月6日から本格サービス提供となる。

 スマホの専用サイトから注文することで、スターバックス、吉野家、スーパーマーケット文化堂の商品を受け取ることができる。対象品目は5,300品以上。ロボットに人は随行せず、自動走行または遠隔操作により運行する。

 年末年始を除き、夜間や雨天時を含め毎日提供する。届ける時間は10時〜21時で、15分刻みで指定可能。機体の解錠はSMSと自動音声電話で通知される暗証番号を用いる。支払い方法はクレジットカード、楽天ポイント、楽天キャッシュ。商品代を除く配送料は100円。

晴海の街を自動走行する配送ロボット
サービス対象エリア
楽天無人配送の走行デモ

配送ロボットはCartken製、広告媒体としても活用

配送ロボットは米国Cartken製「Model C」。Uberが使っているものと同じ

 配送ロボットは米国Cartken製「Model C」。71×45.5×120cm(視認用の旗付きの場合。旗を除くと高さ61.8cm)。積載容量は24L。走行速度は最高時速5.4km。

 三菱電機のグループ会社であるメルコモビリティソリューションズが調整したもので、自動走行機能や衝突回避機能を備えており、一般社団法人ロボットデリバリー協会の安全基準に基づく審査にも合格している。楽天も独自に配送専用サイトや配送管理システムを開発/構築し、複数台同時運行を最適化する。

 車体には楽天モバイルの広告が貼られており、広告媒体としての価値も検証する。テストではすでに住民から「かわいい」と好評だという。

Cartken製ロボットを日本向けに調整
車体には楽天モバイルの広告がラッピング
旗は視認性向上用

自動配送ロボットによる無人配送サービス

楽天グループ株式会社 無人ソリューション事業部 ヴァイスジェネラルマネージャー 牛嶋裕之氏

 楽天グループ株式会社 無人ソリューション事業部 ヴァイスジェネラルマネージャーの牛嶋裕之氏は、楽天が無人配送に取り組む理由として、日本の配送の課題から紹介した。

 生産年齢人口が減少し、外国人労働者も日本離れしている環境下、ネット通販の普及や新たなデリバリーサービス登場に伴い、配送の担い手は不足しており、このままでは現状のサービスが維持できなくなる恐れもある。

 自動配送ロボットによる無人配送サービスは、ラストワンマイル配送、デリバリーサービス、そのほか街中のさまざまな配送を担うことが期待されている。楽天でも2019年以降、私有地や公道上でいろいろな取り組みを実施してきた。公道実験手順が策定されたのは2020年。2022年2月には関係8社で業界団体「ロボットデリバリー協会」も発足した。

楽天の自動配送ロボット関連の取り組み
2023年4月には改正道路交通法が施行。自動配送ロボットは「遠隔操作型小型車」

 2023年4月には改正道路交通法も施行された。自動配送ロボットは「遠隔操作型小型車」と定義された。歩行者相当のルールに従って、歩道、路側帯、道路の右端を通行する。歩行者には進路を譲らなければならない。公道走行は許可制から届出制になり、事業者は都道府県の公安委員会に、ロボットの使用者、走行させる場所、遠隔監視する場所、団体による審査合格証等の機体の構造および性能を示す書面などを提出しなければならない。

 牛嶋氏は「自動配送ロボットには追い風が吹いている」と語った。画像認識技術も向上し、比較的安価なセンサーでも十分な認識ができるようになり、ロボット自体のコストも下がっている。

「楽天無人配送」サービスの概要

 今回の自動配送ロボットによる無人配送サービスは晴海周辺地域にて展開。東京都内での提供は楽天として初めての取り組みとなる。エリアは中央区晴海1〜5丁目、月島2・4丁目の一部、勝どき2丁目の一部で、順次拡大予定。

 最初は、「スターバックスコーヒー晴海トリトンスクエア店」、「スーパーマーケット文化堂 月島店」、「吉野家 晴海トリトンスクエア店」から商品を届ける。届ける場所はマンション、オフィス、公園など62カ所。品目数は5,300品以上。牛嶋氏は「くらしを多方面でサポートしていきたい」と語った。

注文と受け取りの流れ

「楽天無人配送」自動配送の流れ

 楽天は商品を注文して受け取るUXに注力している。注文方法はスマホ専用サイトからまず店舗を選択。そして商品を選んでかごに追加。届ける場所と時間を指定し、楽天会員情報から支払い、注文完了となる。

 配送中はロボットの位置情報が提示され、届ける場所に近づくと「まもなく到着」であることが通知され、自動音声電話とSMSで到着と暗証番号が案内される。到着したら、機体に暗証番号を入力してドアを開け、商品を受け取れる。人による配送と異なり、ロボット配送の場合は人が公道上まで取りにいかなければならない。

「楽天無人配送」受け取りの流れ

 テストサービスでは「商品が早く欲しい時に便利」、「配送の品質も問題なかった」、「スーパーでの買い物が面倒なので利用している」、「ペットを連れてスーパーに行けないので利用している」、「ロボット配送の体験が楽しい」、「ロボットに愛着や親しみやすさを感じた」といった声があったという。

 ロボットは2台使用する。オペレーション拠点は1つで、ロボットも普段はそこに待機している。

米国製ロボットを日本向けに調整

メルコモビリティソリューションズ株式会社 アフターマーケットサービス事業本部 搬送ロボット開発プロジェクト 塚越裕太氏

 ロボット本体については、メルコモビリティソリューションズ株式会社 アフターマーケットサービス事業本部 搬送ロボット開発プロジェクトの塚越裕太氏が紹介した。Cartkenは2019年にGoogle出身メンバーを中心に設立されたスタートアップで、米国や欧州でデリバリーサービスを展開中。三菱電機グループとは2021年から国内ビジネスで協業中だ。

 屋内をシームレスに走行できるようにビル設備連携も開発中で、エレベータ乗降による縦移動は運用中だ。

ロボットの詳細仕様
ビル設備との連携も開発中

デモンストレーション

晴海でのデモ走行の様子

 実際に晴海5丁目の公道でのデモンストレーションも実施された。ロボットは商品サンプル(牛丼)を積み込んだあと、近くの晴海ふ頭公園前まで走行。実際に晴海5丁目に住んでいるご家族がサンプルを取り出した。その後、再びサンプルを積んで、同じ道を戻っていった。

晴海の街中を自動走行
晴海ふ頭公園に到着
届けられた商品を実際に晴海5丁目に住んでいるご家族が取り出す
お届け完了
再びサンプルを積み込み
元来た道を戻っていった

 片道走行距離は約510m。途中、3つある横断歩道の手前では一時停止。信号機は遠隔操作者が状況を見て運航を指示した。

横断歩道前では必ず一時停止
遠隔操作で安全確認後、ゴーとなる

 そのほか、歩行者を検知して自動停止するデモも行なわれた。

ロボットは案外速く、多くの報道陣が追いかけた
ロボットの急停止。つんのめりつつも止まった
急停止のデモ

筑波での実験は終了、今後は他地域でも展開

晴海でのサービスを今後は他地域へ展開する予定

 サービスの目標利用件数は非公表。晴海地域を選んだ理由には、住民が多いこと、届ける店舗があること、ロボットが走りやすい道路環境があることを挙げた。また、晴海地域ほど整備されていない道路環境であっても、運用は可能だと説明した。

 なお、楽天が行なっていた筑波での実験は2023年12月に終了となった。筑波での実験に比べると都心部でのサービスということで、3,000戸から14,000戸へと商圏が広がり、人も随行しなくなる。

 筑波でのサービスが終了となった理由について牛嶋氏は「1年以上サービスを提供できた。ロボット配送のロールモデルは確立できた。我々としてのマイルストーンは超えたのでいったんは終了となった」と語った。晴海周辺地域でのサービスを確立後、ほかの地域にも横展開していきたいと考えているという。

 配送料については今は100円だが、「今後はさまざまな形を検討していきたい。まずは使っていただきたい」とのことだった。