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Lenovoが掲げる「AI PC」、その旅の幕開け
2024年3月29日 06:26
Lenovoは27日(タイ時間)に、APACの報道関係者を対象としたイベントを開催し、この中で特にCore Ultraを搭載した「Yoga」シリーズに焦点が当てられた。本記事ではそんなYogaやCore Ultra関連の情報をお伝えする。
初日の基調講演では、Lenovo Asia Pacific Consumer Business LeadのLeon Yu氏が登壇したのだが、今回のイベントはLenovo主催でありながらも、パートナーであるIntelやMicrosoftも協力。新製品にはCore Ultraプロセッシングパワーの進化や、Windows CopilotといったAIアシスタントの搭載により、「新しい時代を迎える」と掲げた。
その「新しい時代」とはまさしくAIのことである。人々は既にAIをあらゆるところで利活用しており、生活のあらゆる部分を変化させている。たとえばNetflixのおすすめ動画の1つを挙げても、過去の観た番組の履歴からユーザーの嗜好をAIが判断しておすすめしている。また、ユーザーが能動的にAI使うという意味では、ChatGPTのような技術も登場してきている。
ただ、AIをさらに一歩推し進め、より身近なものにするには、ローカルで処理する必要があるとLenovoは考えている。たとえばセキュリティやプライバシーの保護の観点からして、一部データはクラウド側にアップロードさせずにローカルで処理する必要がある。また、レイテンシ(遅延)が少なく、クラウド側の混み具合を意識せず実行できるのもローカルならではの利点だ。
こうしたことを可能にするのがIntelの新しいCPUであるCore Ultraであるといい、ローレイテンシが必要なタスクに最適なCPU、グラフィックスやAI処理を高速化するGPU、そして継続的なタスクを電力効率よく実施できるNPUという3つのプロセッサが1つに統合されているため、ソフトウェア開発者はIntelが提供するフレームワークを使えば、どのプロセッサを使うか意識せずに、自動的に判断して適切に割り振って実行できるのが特徴だとした。
「AIは限られた人が使える技術であるべきではなく、すべての人のための技術であるべきで、そのための実装を行なっている。2024年内には300以上のソフトウェアでAI機能が組み込まれ、2025年末までには1億ものAI対応プロセッサを出荷する予定である」とIntelのGeorge Chacko氏(Intel Director, Global Account(lenovo))は語る。
そのAIを実現する第一歩とも言える製品がCore Ultraであり、これをYoga組み込むLenovoにとってはAI PCの始まりだ。
ユーザーは本当にAI PCを欲しているのか?
ここで少し心配となるのが「AI PCという言葉がマーケティング用語として独り立ちしてしまわないか」というところだろう。現時点ではAI PCの定義も曖昧であり、「どういったAI処理ができればAI PCとなるのか」がよく分からない。極論、ユーザーが「Copilotさえ動けばAI PC」と定義するならそれまでだし、「Stable Diffusionのような生成AIが爆速で動作しないのにAI PCと呼んでいいのか?」と疑問も湧く。
まず現段階における「AI PC」の仕様だが、これはIntelとMicrosoftが共同で定義したとしており、「AIアシスタントであるCopilotが使え、生成AIやチャットボットが可能であるほか、CPU/GPU/NPUが1つのパッケージに入ったプロセッサが搭載されていること」だという。
定義された仕様が分かったところで、やや心配になるのがやはりAI性能だ。AI性能を示す指標として、現在「TOPS(TeraまたはTrillion Operations Per Seconds)」が用いられており、要は1秒間に実行できる命令数(兆単位)で表されているのだが、Core Ultraは34TOPSとされている。
ところがNVIDIAが先日発表したAIに関するブログでは、GeForce RTXを搭載すればそれだけで200TOPS~1,300TOPSの性能があると言い、それと比較すると34TOPSという数字は、やはりAIタスク実行には足りないイメージはある。
先述の通りCore UltraではCPUとGPU、NPUが協調動作しており、「PC」としてみれば処理性能は従来から大きく引き上げられている。ゲーミングでは最大95%、写真編集では50%高速化するほか、NPUが活きる画像生成では65%高速化。また、ストリーミング時の消費電力は40%、Web会議の電力消費は最大38%削減できる。
ただこれらを実現した背景には、アーキテクチャの刷新に伴うGPU性能向上や、新設されたCPUのローパワーEコアがあり、「新たに内蔵されたNPUによって実現しました」、「TOPSが(現状技術の)生成AIで十分なパフォーマンスを達成しました」というわけではない。そういう意味では、技術的に「AI PC」と呼ぶには程遠いかもしれない。
これについてIntelのJack Huang氏(CCG Category Regional Sales Director Asia Pacific & Japan Sales, Marketing & Communications Group)は、「IntelのNPUの実装はまだ始まったばかりだ」とする。
ちょうど先日、Intelはソフトウェア開発者とハードウェアベンダー向けの新しいAI向け施策を発表したわけだが、AIアプリを活用するソフトウェアの開発はこれからだし、それを実行するベースとなるハードウェアもまだまだこれからだ。これらのエコシステムがある程度成熟してきたら、NPUの性能を次のステージまで引き上げて行く段階に入るだろう。
Leon Yu氏によると「Lenovoの独自ユーザー調査で66%のユーザーはAI PCを活用したいを考えており、期待している」という。「2024年末時点ではAI PCのシェアは30%にとどまるが、2025年以降は出荷ベースが増え、2026年では75%に達する見込みだ。そのためAI PCも3年から5年間のスパンの中で溶け込んで行くのではないか」という見込みを示した。
AI PCの旅は、まだ始まったばかりだ。
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