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乳清でマザボから金を回収する手法。効率がよく環境にもやさしい
2024年3月6日 11:40
チューリッヒ工科大学 保健科学技術学部のラファエレ・メッツェンガ教授らが率いる研究チームは、マザーボードなどの電子廃棄物から金を効率的に、かつ持続可能な方法で回収できる手法を編み出した。チューリッヒ工科大学はニュースリリースを3月1日に行なったが、論文は1月23日に投稿された。
電子廃棄物から金を回収する方法はこれまでもさまざまな考案がなされてきたが、エネルギーを大量に消費するほか、多くの場合は非常に有毒な化学物質を使用する必要があり、決して環境にやさしいとは言えなかった。今回同研究グループが開発した手法は効率的で、費用対効果も高く、そしてこれまでの方法と比較するとはるかに「持続可能である」という。
今回開発した方法とは、まずチーズの製造プロセスで発生する副産物の乳清のタンパク質を、酸性と高温の条件下で変性させ、ゲルの中でタンパク質ナノフィブリル(原線維)として凝縮させ、そしてゲルを乾燥させてタンパク質ナノフィブリルのスポンジを得る。
次に、マザーボードから金属部品を抽出し、部品を酸浴で溶解して金属をイオン化。上記のスポンジをこのイオン溶液に入れると、金イオンがタンパク質ナノフィブリルに付着する。その後このスポンジを加熱すれば金が得られるという。なお、ほかの金属イオンが付着する可能性もあるが、金がもっとも効率的に付着したという。
この結果、マザーボード20枚から約450mgのナゲットを得ることができ、そのナゲットの91%は金で、22カラットに相当する量が得られた(残りは銅)。プロセス全体のエネルギーコスト、原材料の調達コストを試算しても、回収可能な金の価値の50分の1で済んだとしており、「商業的に実行可能である」との結論を得たという。
食品産業の副産物で電子廃棄物から金が得られるというのは、非常に現実的であり、2つの廃棄物を金に変えることができるため「これ以上に持続可能なものはない」とメッツェンガ教授は述べている。今後、市場に投入できるような技術の開発、マイクロチップの製造や金メッキプロセスからの産業廃棄物からの金の抽出、ほかの食品の副産物や廃棄物からタンパク質ナノフィブリルの作成の可能性の有無についても模索していくとしている。