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Intel、初心者にも分かる半導体製造入門講座を開催

Intelが公開したIntel 3で製造される次世代サーバー向けCPUとなるGranite Rapids

 Intelは、2月21日(現地時間)に、Intelとしては初めてのファウンドリ事業向けイベントとなる「Intel Foundry Direct Connect 2024」を、米国カリフォルニア州サンノゼ市にあるサンノゼ・コンベンションセンターにおいて開催する。

 2月22日午前に計画されている基調講演には、Intelのパット・ゲルシンガーCEOが登壇し、米国商務長官 ジーナ・レモンド氏、Arm CEO レネ・ハス氏、Microsoft CEO サティヤ・ナデラ氏、OpenAI CEO サム・アルトマン氏など政界、IT業界のキーリーダーなどがゲストとして参加して開催される計画になっている。

 それに先だって、Intelは「Semiconductor Manufacturing for Non-Technical Audiences」(テックではない人向けの半導体製造入門)と題したセミナーを開催し、半導体が製造される過程を、前工程(ダイの製造工程のこと)と後工程(ダイをパッケージに実装する工程のこと)の2つに分けて説明した。

半導体産業は年々重要性が高まっている

Intel 技術開発本部(TDG:Technology Development Group)副社長 ベン・セル氏

 Intel Foundry Direct Connect 2024は、Intelがここ数年積極的に取り組んでいるファウンドリ事業向けとしては初めてのイベントとして米国時間2月21日に開催される。Intelはパット・ゲルシンガー氏が2021年にCEOに復帰してから戦略を大胆に成功し、ファウンダリビジネスに大きな投資を行ない、新しい工場への投資、そして顧客となる外部の企業が半導体をIntelの工場で製造するのに必要なツール(EDAツール)などへの投資を行なっており、2020年代の後半に大きな飛躍を目指している。

 今回行なわれるIntel Foundry Direct Connect 2024は、そうしたIntelのファウンドリ事業に関するさまざまな説明が行なわれるイベントになる予定だ。

 それに先だって行なわれたのが「Semiconductor Manufacturing for Non-Technical Audiences」と題したセミナーで、通常は半導体製造などをあまり追いかけていない記者なども多数参加するため、半導体製造の過程を理解してもらう目的で開催され、Intel 技術開発本部(TDG:Technology Development Group)副社長 ベン・セル氏が講師となって行なわれた。

 余談だが、セル氏はIntelの製造部門の技術を開発するTDGの中でも製造技術(プロセスノード)関連の部門で、Core Ultra(Meteor Lake)のコンピュートタイルの製造技術としても使われているIntel 4、そしてそのマイナーバージョンアップ版に相当するIntel 3の開発責任者を務めている、Intel製造部門のリーダーの1人だ。

半導体は今や我々の生活に欠かせないものとなっている
2030年市場規模は1兆ドル(約150兆円)に達する見通し

 セル氏は「今や半導体は多くのユーザーが朝起きてから寝るまでに12時間以上にわたって使われるデバイスになっている。携帯電話回線、AI、IoT、クラウド、自動車のADASなどなどはすべて半導体により実現されている。2030年の半導体市場の市場機会は1兆ドルにも達するだけでなく、ほかにも工場を建設する経済効果なども大きい」と述べ、半導体の経済効果は2030年までに1兆ドル(1ドル150円換算で150兆円)にもなる見通しで、それに付随して建設される新しい工場による経済効果や雇用効果なども大きいと説明した。

半導体と導体と絶縁体の両方の性質を併せ持つので半導体

 続いて技術面について紹介。まず、半導体(Semiconductors)とは、導体(Conductor)と不導体または絶縁体(Insulator)との両方の特性を持つデバイスという意味だと説明した。

 導体というのは、電気などをよく通す物体という意味で、絶縁体というのは電気を通さない物体という意味になる。半導体とは、その導体にもなり、絶縁体にもなるという意味で、電気を通すとスイッチがオンになり、電気を通さないとオフになるという特性を利用して、データを保存し、演算を行なうデバイスになっている。

通電するとスイッチがオン、通電しないとオフになる

 具体的には、トランジスタという半導体の内部の最小単位が、通電するとオンになり、通電しないとオフになるようになっており、それで0と1を切り替えることが可能になり、その特性を利用して複数のトランジスタを組み合わせることでさまざまな演算ができるようになっている。

 半導体の内部には、そうしたトランジスタが1億個から数億個程度まで用意されており、より高い周波数で高速にスイッチングさせることで、高い性能で演算することが可能になっているのだ。

前工程ではシリコンインゴットからウェハを切り出して、回路やトランジスタを構成していく

シリコンインゴットから切り出されたシリコンウェハ上に回路などが構成されていく

 セル氏はそうした半導体の製造を、前工程と後工程に分けて説明した。

珪砂(けいしゃ)からシリコンインゴットが生成されていく
インゴットからウェハを切り出して、研磨していく
シリコンインゴットの一部

 前工程は、ダイと言われる1つ1つのチップを製造していく過程のことだ。ダイは、シリコンウェハと呼ばれる円盤状のシリコン上に、複数の工程を経て回路が生成される形で製造される。シリコンウェハは、珪砂(けいしゃ、Quarzsand、石英を成分とする砂)を材料として溶融して製造されるシリコンインゴットを切り出して作られる。半導体メーカーはこのシリコンウェハを、サプライヤーから購入する形で得て、そこに回路を形成する過程が前工程だと考えればよい。

 なお、余談だがこのシリコンウェハを世界中の半導体メーカーに供給しているのは、信越化学工業やSUMCOなどの日本メーカーのシェアが突出して高いことはよく知られている。

フォトリソグラフィの過程

 半導体メーカーは、ウェハメーカーがインゴットから切り出して原子レベルまで均一になるように研磨されたウェハの納入を受けて、まずは回路パターンを、露光技術を活用して構成していく。

 フォトレジストと呼ばれる溶液をウェハに塗布し、その状態でマスクと呼ばれる回路の原盤をかざして、上から光を投影して回路を現像していく。従来であれば、DUV(深紫外線)を利用していたが、Intelで言えばIntel 4世代以降はEUV(極端紫外線)を利用して回路を構成していく形になる。

ドーピング
ドーピング後にはトランジスタの生成過程に
エッチング
最後にトランジスタとメタル層の生成が行なわれて完成

 次いで行なわれるのが、ドープないしはドーピングと呼ばれる工程で、少量の不純物を添加したあと、シリコンと回路の間にある絶縁膜を除去(Etching)の工程が行なわれた後、トランジスタの回路が構築され、トランジスタとトランジスタとの接続回路が構築されたあと、メタル層と呼ばれる配線層が構築されて完成する。

後工程はダイに切り出して、それをサブ基板に実装し、出荷前のテストを行なっていく

後工程ではこのようにサブ基板にチップが張り付けられる

 シリコンウェハが製造される前工程では、半導体チップは1枚のウェハになっており、もちろんそのままでは利用できない。ウェハからチップを1つ1つ切り出して、パッケージと呼ばれるサブ基板上に実装して、動作するかの試験までを行なう工程が後工程になる。

後工程の概要

 セル氏によれば、後工程はダイプレップ、ダイソート、テープリール封入、組み立て、試験という5つの工程で行なわれる。ダイプレップは、ダイの準備という意味になるが、後工程ではウェハからダイヤモンドカッターを利用して1つ1つのダイに分離し、そこからダイを取り出して次のプロセスに送るという工程になる。機器の中でウェハをカットし、その後ダイをロボットアームが取り出してトレーに乗せて行く作業となる。

ダイプレップとダイソート

 その次のダイソートは、簡単に言えば、ダイの簡易テストを行ない、そのチップがどのグレードに相当するのかなどを決定する。

 同じCore Ultraでも、これは165H、これは155H……のように製品のグレードが決定され、選別されるのがこの過程になる。その後、ダイソートで選別されたグレード別に、テープリールに封入されて次の組み立ての工程に送られる。

 組み立ての工程では、サブ基板にダイやコンポーネント(たとえばサブ基板上にあるチップ抵抗など)を乗せて行き、隙間に樹脂をいれ、最終的に加熱してはんだを固定していく。その後、ノートPC向けのCore Ultraであれば周囲に基板が曲がらないような補強材を装着し、デスクトップPC向けのCore(第14世代)であれば、ダイの上にTIM(Thermal Interface Material」を乗せ、さらにIHS(Integrated Heat Spreader)を乗せて、多少クーラーにズレがあっても確実に放熱できるようにする。

組み立て
ノートPC向けであれば補強材をサブ基板に付与
デスクトップPC向けであればTIMとIHSを実装
ノートPC向けのCore Ultraには周囲に補強材がついている
デスクトップPC向けやサーバー向けではIHSがつけられている

 組み立て後は各種のテストが行なわれる。セル氏によれば、主にバーンイン、クラステスト、システムテストという3つのテストが行なわれるという。

 バーンインは主に負荷テストで、やや高めの電圧をかけて壊れないかなどが試験され、シンプルに良品と不良品がより分けられる。クラステストは、特別な手順で、チップの中の特定ブロック(たとえばビデオアクセラレータやPCI Expressのコントローラなど)をテストする試験になる。そしてシステムテストは、ユーザーの環境と同じくOSが動作するかなどが試験される。

テスト
最後はパッケージ化して実装

 こうした後工程が完了すると、完成したIntel製品はOEMメーカーに向けて出荷されるものはトレーに乗せられて箱に入れられ、ボックスCPUなどであれば化粧箱に入れられて流通業者に引き渡される。