ニュース

超音波使った量子光メモリ。NTTと日大が開発に前進

作製した超音波素子の概略図(左)と将来的な量子光メモリ素子としての利用イメージ(右)

 日本電信電話株式会社(NTT)日本大学は19日、省エネルギーな量子光メモリ素子の実現につながる、長寿命な光励起電子とギガヘルツ超音波のハイブリッド状態の生成に成功したと発表した。

 エルビウム(Er)と呼ばれる希土類元素は、通信波長の光に共鳴する内殻電子を持ち、外殻電子によって遮蔽されることで外界の影響を受けにくいため、高い量子コヒーレンスが得られる元素として量子光メモリで利用されている。逆に外部からの制御が難しく、高電圧が必要となるのが課題とされていた。

 NTTと日本大学では、Erを添加した結晶基板上に超音波の一種である表面弾性波を生成する素子を作製。約2GHzの振動歪を結晶表面に集中させて、Erの光共鳴周波数を高速変調することに成功した。通信波長帯に共鳴する電子とギガヘルツ超音波のハイブリッド状態を生み出すことができ、Er励起電子の光応答を低電圧で制御できるようになるという。

 実験では、Erを添加した結晶上に高品質な窒化アルミニウム圧電膜を形成した高周波超音波素子を作製。この素子では、結晶表面付近のEr光共鳴周波数を1GHz変調するのに必要な電圧は0.3Vで、低電圧で大きな変調が得られたという。

 両者では今後、最表面のみにErを添加した材料の利用や、最表面のErだけ選択的に光アクセスできるような構造を導入し、ハイブリッド状態の均一性向上を図るとしており、通信波長帯で動作する省エネ量子光メモリの実現を目指すとしている。

超音波の印加による光吸収スペクトルの変化
光吸収スペクトルの深さ依存性と歪・光強度分布