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AI性能や電力効率重視の「第5世代Xeon」、前世代やEPYCと比較しても優位

 インテル株式会社は18日、2023年の活動総括や今後の戦略、新製品を紹介する報道者向け説明会を実施した。本項では、14日(米国時間)に発表された第5世代Xeonスケーラブルプロセッサについて紹介する。

第5世代Xeonを掲げるインテル株式会社 代表取締役社長 鈴木国正氏

 第5世代Xeonは、今年(2023年)上期に発表された第4世代Xeonのアップデート版であり、後方互換性を有している。特徴として前世代よりAI性能に優れており、実際のワークロードにもより最適化されているという。また、電力効率も向上したほか、これまで特定のユーザーにのみ限定されていたセキュリティ技術がすべてのユーザーに利用可能となっている。

 前世代からの主な変更点として、コア数が4つ増えて最大64コアとなり、AMX(アドバンスト・マトリクス・エクステンション)などのコア内蔵型アクセラレータの数もあわせて増加した。対応するメモリ周波数も4,800MT/sから5,600MT/sに向上し、L3キャッシュ容量も最大3倍の320MBとなっている。チップレット構成も4つから2つになり、低遅延を実現しているところが挙げられる。

 第5世代Xeonの性能に関しては、一般的なコンピューティングでは前世代比で1.21倍、2世代前からは1.84倍に向上した。特にAI性能においては前世代で1.42倍、2世代前からは14倍の向上を実現している。この性能差はAMXのサポートが第4世代Xeonからであることに起因している。

 HPC(高性能コンピューティング)分野では前世代比で1.4倍、2世代前からは2.1倍、ネットワーキングやストレージの分野でも前世代比で1.7倍、2世代前からは3.6倍の性能向上を実現している。

 同社は、これら第5世代Xeonの性能から、直近のプラットフォームからの置き換えでも大幅な性能向上を体験できると謳っている。

 AMD製でコア数が同じ「EPYC 9554」と比較しても、第5世代XeonがWeb、データサービス、ストレージ、HPCの各分野において、単純性能だけでなく電力効率あたりの性能でも優れていると同社は謳っている。特にアクセラレータを使用したケースでは優位性が顕著だという。

アクセラレータを使用した際の単純性能や消費電力あたりの性能

 電力効率の面では、ピン互換性を持ちながらも、チップ内の改善により前世代と比べて電力あたりの性能が1.34倍に向上している。特に、アイドル時の消費電力は約100W削減されている。これは完全統合型の電圧レギュレーターやアイドル時の電力効率改善、アクティブ・アイドル・モードの機能改善により実現している。アクティブ・アイドル・モードは、特に50%以下の負荷で消費電力を削減する仕組みで、30~40%の使用率レベルで最大110Wの削減が可能だという。

 同社によると、第3世代Xeonのサーバーを第5世代Xeonのサーバーに置き換えると、TCO(総所有コスト)の削減効果は非常に大きいという。たとえば、第3世代Xeonのサーバーを50台使用していた場合、第5世代に置き換えると、Web用途では29台、データベース用途では14台、AI用途では10~13台に減らすことが可能だという。

 これにより、電力消費やCO2排出量も大きく減少できるとしている。同様の試算をEPYC 9554と行なっても、電力消費やCO2排出量、TCOが大幅に削減できるという。

 AI性能に関しては、AMD製品との比較でも優位に立っており、特にL3キャッシュでの性能差が大きいと同社は述べている。

 このほか、一般的にコンピューティング性能を求められる大規模言語モデル(LLM)分野においては、第5世代XeonはGPUを使用せずに市場で求められる100ms未満のレイテンシでLLMを動作できるという。

説明会で展示された第5世代Xeonで使用される半導体ウェハ