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Core UltraやAI PCなど、「AIの民主化」目指すインテルの2023年事業総括
2023年12月19日 13:52
インテル株式会社は18日、2023年の活動総括や今後の戦略、新製品を紹介する報道者向け説明会を実施した。説明会では、3つの注力領域「グローバルサプライチェーンの強靭化」、「ムーアの法則の継続」、「AI Everywhere」の取り組みを総括したほか、新製品「Core Ultra」や「第5世代Xeon」などを紹介した。なお、第5世代Xeonの詳細は別記事にて紹介する。
説明会では、同社代表取締役社長の鈴木国正氏や、執行役員 新規事業推進本部 本部長の大野誠氏、執行役員 技術本部長の町田奈穂氏、技術本部 部長 工学博士の安生健一朗氏が登壇した。
鈴木氏は冒頭、シリコンとエコノミーを組み合わせた造語「シリコノミー」について語った。この用語は、シリコンが経済成長に不可欠であるという意味を込めており、2030年までに1兆ドルの市場規模に成長すると見込まれる半導体産業のリーダーとしての同社の役割を示しているという。同氏はシリコノミーという考えを通じて、同社が半導体に対して持つ考え方やアプローチを、丁寧に説明していかなくてはならないと述べた。
また、デジタル人材育成に関しては、STEAM Labの開設などの取り組みを通じて、ただ半導体を売るだけでなく、日本のデジタル競争力を高めるための中期的な社会貢献を行なっていると強調した。同社はデジタル人材育成の今後の取り組みとして、DXハイスクールおよびSTEAM/AI教育プログラムの充実や、自治体との連携に注力するとした。
3つの注力領域における今年の取り組みと今後の戦略について、サプライチェーンの強靭化に関しては、Armとの協業や日本政府との意見交換などを今年の取り組みとして挙げた。今後はIDM 2.0戦略のもとファウンドリ事業を本格的に行ない、10~15兆円規模の投資で半導体業界の安定に寄与するとした。
ムーアの法則の継続に関しては、業界をリードするガラス基板やアドバンスドパッケージ技術を例に挙げた。同社はこの分野に関して圧倒的な優位に立っていると謳っており、今後も技術を発展させていくとした。AI Everywhereでの取り組みに関しては、理研やBCGとの連携などを挙げ、今後はAIアクセラレーターのラインナップ強化に注力すると述べた。
プロセスノードについても触れており、同社は4年間で5つのプロセスノードを実現するという目標を2年半前ほどに発表しているのだが、当初は実現できるのかと疑問視されていたが、一部前倒ししているほどに達成していると語った。同氏は、Intel 18Aの登場やその先の発表など、2024年も期待してほしいと語った。
大野氏は、AI Everywhereについて語り、AIをPCに導入することに関する同社のビジョンを展開した。AI Everywhereは、AIがごく限られたプラットフォームや限られたユーザーにとどまることなく、適材適所に多くのユーザーに利用できるようにするという理念だと説明した。
同氏は、AIモデルのマシンラーニングやチューニング、推論に至るまで、ほとんどのワークロードや演算処理をクラウド上で行なっている現状を指摘し、今後は多様なニーズに応えるために、推論の一部をエッジやローカル側で処理することを目指す必要があると述べた。同社は、ヘトロジニアスで豊富なハードウェアの選択、オープンなソフトウェア環境、セキュリティ対策の提供を通じて、こうしたコンピューティング処理の分散化を推進するという。
同氏によると、分散化を推進するために、ハードウェア/ソフトウェア/セキュリティを相互に連携させながら提供していくことを、同社は「AIコンティニュアム」(AIの民主化)と呼んでいるという。同社はAIコンティニュアムを通じて、AI Everywhereの実現を目指している。
同氏は、ローカル側で処理したほうが低遅延で低コストであるため、今後AIはクラウドにとどまらず、PCやエッジに拡大すると述べた。同社は今後、大規模言語モデルはクラウド、小規模な言語モデルはローカルで処理することで、クラウドとエッジが相互に補完する環境を構築することを目指すという。同氏は、AIが持つ可能性を楽しみにしていただきたいと語った。
町田氏は、エンタープライズおよびクライアント向け製品に関して、2023年の展開と今後の方針を説明した。冒頭ではプロセスノードについて、Intel 7やIntel 4の量産を達成していることを示し、これまでにないスピード感で新たなプロセスノードを次々と実現させて製品を市場投入していることを強調した。
プロセスノードの今後の展開としては、Intel 3、Intel 20A、Intel 18Aの3つを計画しており、Intel 3は製造準備が完了し、来年発表のSierra Forestと呼ばれるXeonプロセッサでプロセス化を予定している。Intel 20Aは2024年前半、Intel 18Aは2024年後半の製造準備完了を予定し、同社はIntel 18Aをもってファウンドリ事業の本格サービスを始動するという。
エンタープライズ向けのCPU製品では、2023年に第4世代Xeonや広帯域幅メモリを搭載したXeon CPU Maxシリーズを投入している。また、14日(米国時間)には第5世代Xeonを発表している。2024年以降は、高効率のE-Coreのみで構成されるSierra Forestや、従来のXeonシリーズを継承するGranite Rapidsと呼ばれるXeonプロセッサの市場投入を予定しており、Sierra Forestは2024年前半、Granite Rapidsは2024年後半に投入されるという。
データセンター向けGPUについては、デスクトップの仮想化やビジュアルAI推論、メディアストリーミングに最適化されたGPUフレックスシリーズでは、Melville Soundと呼ばれる製品を予定している。エクサスケールコンピューティング対応のHPCおよびAI向けのハイエンドGPUであるGPU Maxシリーズについては、Falcon Shoresの今後提供する。
2019年に初代、2022年に第2世代を発表している大規模生成AI向けのAI専用アクセラレータ「Gaudi」に関しては、第3世代のGaudi 3を2024年に、次世代アクセラレータを2025年にリリースするという。Gaudi 3は5nmプロセスノードを採用し、Gaudi 2と比べてBF16演算性能は4倍、ネットワーク帯域幅は2倍、HBMメモリの帯域幅は1.5倍に向上している。
クライアント向け製品では、2023年初頭の第13世代Coreの発表や、vPro製品の第13世代Coreへの移行、10月の第14世代Coreの発表、今月のCore Ultraプロセッサの発表を紹介した。ワークステーション分野では、CPUはXeon W-3400およびW-2400を発売しており、GPUのArc Pro A60およびArc Pro A60M、Arc A580を発売していると説明した。
安生氏は、Core Ultraプロセッサの解説とデモンストレーションを行なった。Core Ultraは、メインストリームのPCとして初めて3Dパッケージング技術「FOVEROS」を採用しており、40年に一度を謳う大規模なアーキテクチャ設計の変革を実現している。
このプロセッサでは、Intel 4プロセスを採用したコンピューティング・タイルを搭載するほか、低電力E-Coreを新たに追加し3つのコア構成となっている。最大5.1GHz駆動で、内蔵GPUには外付けGPUのArcに匹敵する性能を持つIntel Arcを実装されており、AI推論を低電力で実行できるNPUも新たに内蔵する。
性能は前世代比で約10%向上し、新たなアーキテクチャ設計により電力効率も高まっている。AIに関しては、NPUのみならず、GPUやCPUもあわせてAIワークロードを実行するように設計されており、高性能かつ高電力効率のAI処理が可能だとしている。
同社は現在、大規模言語モデル「Llama 2」をCore Ultraプロセッサを利用してローカル上で実行するアプリケーション「Superpower」を開発中で、発表会ではCore UltraのAI性能を示すStable DiffusionやSuperpowerのデモが披露された。
このほか、AIの普及を目的とするAI PCアクセラレーションプログラムについても説明し、同プログラムでは、ソフトウェア業界と連動して2025年までに1億台以上のPCへAIを導入することを目指していると語った。同氏は同プログラムと連動する、AI PC普及のための取り組み「AI PC Garden」も紹介した。
発表会では、Core Ultra搭載ノートや半導体の展示なども行なわれた。