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NVIDIA、AIでより高品質なレイトレを実現する「DLSS 3.5」

DLSS 3.5

 NVIDIAは、ゲームプレイ時の画質の向上やフレームレートの改善などを実現する「DLSS(Deep Learning Super Sampling)」について、最新バージョンとなる「DLSS 3.5」を発表した。新機能として「Ray Reconstruction」が加わり、レイトレーシングの品質向上を図っている。

 従来のレイトレーシングのパイプラインでは、まずマテリアルとジオメトリをレンダリングし、レイ(光線)を使って反射や間接光といった照明効果を得るが、その過程でどうしても一部のピクセルが欠けてしまう。そこで、デノイザーを使ってそれらを補い、これらをもとにレイトレーシング適用済みの低解像度のシーンを作り、最終的にネイティブ解像度へとアップスケールしている。

 このデノイザーは非常に複雑で、開発者が時間をかけて多くのパラメータなどを手動で調整しているが、すべてのシーンに正しく照明効果を適用するのは困難だという。また、デノイザーがアップスケーリングに必要な情報を削除してしまう問題もあり、正しい結果が得られないケースもあるという。

従来のパイプライン
複数のデノイザーで失われたピクセルを補う
正しい結果が得られない例(上が本来の表現、下が処理された結果)。サイドミラーやコンテナの影がおかしかったり、反射のディテールが失われたりしている

 DLSS 3.5では、デノイザーを置き換える機能として新たにAIを活用した「Ray Reconstruction」を導入。Ray Constructionでは、マテリアルやジオメトリだけでなく、サンプルレイやモーションベクターなどを含むさまざまなデータをAIがゲームエンジンから受け取る。このデータをAIが分析し処理することで、よりリアルで細やかなレイトレーシング表現を実現する。

 このAIモデルは、DLSS 3の5倍以上のデータを使って訓練されており、レイトレーシングを適用する際の照明条件や使うべきピクセルの判別、アップスケールに向けたディテールの維持などといった一連の処理をリアルタイムで行なう。

デノイザーに代わってRay Reconstructionを用いることでレイトレーシングの品質を改善
適用すべき効果をAIが判断し、正しい照明効果を適用できるという
Ray ReconstructionはすべてのRTXシリーズGPUで利用可能

 Ray Reconstructionは、DLSS 3.5の機能の1つとして提供し、すべてのRTXシリーズGPUで利用可能。既存のSuper ResolutionやDLAA(Deep Learning Anti-Aliasing)、Frame Generation(RTX 40シリーズのみ対応)と併用することで、レイトレーシングの品質だけでなく、フレームレートや画質の向上、応答性の改善が図れるとしている。

 対応タイトルは今秋より順次登場し、「Cyberpunk 2077:Phantom Liberty」、「Portal with RTX」、「Alan Wake 2」などでサポートする予定。また、リアルタイムレイトレーシングに対応したレンダリングツール「D5 Render」でも利用可能になるという。

Cyberpunk 2077:Phantom Libertyの例。車のヘッドライトが正しく前方を照らせている
反射している部分がより鮮明になっている
DLSSオフ/2/3/3.5の比較。既存の機能と併用し、高いフレームレートを維持しつつレイトレーシングの品質を向上できるという
今秋より順次対応タイトルが登場する予定

 そのほか、今後発売予定の「Call of Duty:Modern Warfare III」や「PAYDAY 3」でのDLSS 3およびReflexのサポート、「Fortnite」でのDLSS 3のサポートなども発表された。

レイトレ対応版「Half-Life 2」が開発中。AI NPCに個性を与える技術も

Half-Life 2 RTX

 また、クラシックゲームのレイトレーシング対応を可能にするツールキット「RTX Remix」に関して、新たなプロジェクトとなる「Half-Life 2 RTX」を発表した。

 「Half-Life 2」のModを開発する主要4チームが協力し、Orbifold Studiosとなって進めるリマスタープロジェクトで、RTX Remixを用いてHalf-Life 2のフルレイトレーシング、DLSS 3、RTX IOの対応およびアセットのモダン化を目指す。開発は始まったばかりで、リリース日は未定だという。

 RTX Remixについてはコミュニティによる活用が広がっており、80以上のゲームで使用されていると同社では説明している。

Half-Life 2 RTX(上はレイトレーシングオフ、下はオン)

 さらに、対話できるNPCを生成AIで実現する「NVIDIA ACE」についてもアップデートを発表した。ACEは、音声のテキスト化やテキストの読み上げを実現する「Riva」、ユーザーからの入力に応じて返答を生成する「NeMo LLM」、音声にあわせて顔のアニメーションを生成する「Omniverse Audio2Face」などからなる。

 今回新たに発表したのは「NeMo SteerLM」と呼ばれる技術。現在のNeMo LLMは基本的にニュートラルな返答を生成するが、NeMo SteerLMではNPCの返答に個性を持たせることができるようになる。たとえば饒舌さ、毒舌さ、ユーモア、創造性などといった項目をパラメータで調整できるほか、より細かなチューニングやトレーニングも可能だという。

NPCに個性を与えられるNeMo SteerLM
どういう傾向の返答をさせるかパラメータで調整できる

 そのほか、8月24日より、GeForce NowでXbox PC Game Pass内のタイトルがプレイ可能になることも発表した。GeForce NowとXbox PC Game Passのどちらも利用しているユーザーは、追加料金なく遊べる。ファーストパーティ、サードパーティのどちらのタイトルも対象で、順次拡充を進めていくとしており、Microsoft Storeで個別に購入したタイトルも同様にサポートされるという。

GeForce NowでXbox PC Game Passのタイトルがプレイ可能に