ニュース

Apple渾身のXRデバイス「Vision Pro」。3,499ドルで2024年発売

Vision Pro

 Appleは6日、開発者向けカンファレンスWWDC23の「One more thing」として、同社初となるXRデバイス「Vision Pro」を発表した。米国では2024年前半に発売し、価格は3,499ドル。そのほかの地域でも2024年末までに投入する。

 同社が持つすべての製品開発のノウハウの集大成であると言い、数年をかけて開発され、「もっとも先進的なコンシューマ向け電子デバイス」、「初めての空間コンピュータ」であると位置づける。実際、基調講演の半分にあたる1時間を割いて説明がなされた。

 最大の特徴は、利用中も周囲の人や物とインタラクトしやすいよう、周囲の風景をどのぐらい残すのか自由に変化させられるほか、外部からも利用者の目が確認できる点。ここでユニークなのは、Appleが用いたのはシースルーガラスなどではなく、利用者の目を前面ディスプレイに映し出す「EyeSight」技術。利用者が没入コンテンツを利用している際はその目が見えないが、回りが見えている場合はその目が見えるようになっている。

 没入型コンテンツを利用している際でも、近くに人が来て話しかけられた場合、カメラから取り込み、自動的にその人物が視界内に浮かび上がる。そこで会話が開始されると相手にVision Pro利用者の視線が見えるようになる。

人が近づくと利用者の目が見える
利用者からは外部の人が見える
Apple Watchのクラウンに似たダイヤルで没入レベルを調節する

 このギミックのため、利用時にまずは前面カメラで自分の顔を登録して「Persona」と呼ばれるアバターを作成。その後目のセンサーによって目を表示する位置を補正し、目の表情を作り出すようになっている。なお、登録したPersonaはWeb会議などでもアバターとして利用できる。

 内部の視線追従カメラで操作するフォーカスを合わせることができるのも特徴。前面のメインカメラに加え、本体下部にもカメラを搭載しているため、手を空中に浮かせなくても、自然な姿勢のままでジェスチャー操作を可能にし、コントローラを完全不要とした。加えてSiriによる音声入力も可能なほか、Magic KeyboardとMagic Trackpadをサポートし、シースルー感覚で利用できる。

自然な手の位置でジェスチャー操作
Magic KeyboardとMagic Trackpadに対応

 3D動画および写真の撮影機能も搭載されており、シャッターボタンも搭載。撮影した写真や動画はそのまま3Dで鑑賞できる。加えて、iPhoneで撮影したパノラマ写真を鑑賞する際もアラウンドビューとなり、没入感が高まるとしている。

 性能面では、高性能かつ低温に保つために、MacBookでも採用されているM2プロセッサを搭載。また、視線追従カメラを含む12個のカメラと5つのセンサー、6つのマイクからという膨大なデータの入力遅延を低く保つために、別途「R1」と呼ばれるチップを開発、搭載。常にレイテンシを12ms以内に抑え、新しいイメージをディスプレイに送るとしている。

多数のセンサー
R1プロセッサで入力遅延を低減

 ディスプレイは1画素わずか7.5μmのマイクロOLEDで、左右両眼合わせて2,300万画素という超高解像度を実現。片目あたりのピクセル数は4K TVをも超えるとしている。この超高解像度のために3枚構成のカスタムレンズを設計した。これにより真の4K解像度、広色域、HDRを実現できたという。なお、視力矯正が必要な場合はZEISSのオプティカルインサートを利用できる。

片目あたり4Kを超える解像度を実現

 空間オーディオもサポート。ユーザーの頭と耳の形状に基づいてカスタマイズされているほか、周囲の空間の特徴と素材を認識して分析することで、実際に身を置かれている空間にフィットする音声を届けるとしている。

 OSは新たに「visionOS」を新設計。iPadOSやiOS、macOS、watchOSをベースとし、各センサーからの低遅延入力に対応させたほか、複数のアプリを同時に3Dでレンダリングするエンジンなどを搭載した。ユーザー認証は瞳の虹彩を利用したOptic IDとなる。

visionOS

 前面は1枚のガラスでできているほか、モジュラー設計を採用し、各部の位置を調整できるようにし、好みのバンドが選べるようにしたことであらゆる頭部にフィットできる。また、頭部のバンドはクッション性があり、通気性に優れた特殊なリブ構造を採用することで装着感を高めた。バッテリは外付けでケーブルを介して接続、ポケットに収まるサイズ。これにより最大2時間利用できるとしている。

モジュラー設計
バッテリは外付け

 アプリはvisionOS用のもののほか、使い慣れたiPhone用アプリも利用可能。また、100を超えるApple Arcade対応ゲームが発売時から利用でき、「Disney+」でもさまざまなコンテンツを用意するとしている。加えて、WordやExcelといった生産性アプリ、FaceTime、やZoomといったコラボレーションツールも利用できる。

Webブラウジング、生産性アプリ、ゲーム、映画鑑賞などあらゆることが可能

 プライバシーについては、視線追従やセンサーデータを本体内で処理しているため、Appleやサードパーティーのアプリ、いかなるWebサイトとも共有されることがないとしている。