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東京理科大学、従来より低コストで高速な秘密計算法を開発

秘密計算の流れ

 東京理科大学の研究グループらは20日、Trusted Third Party(TTP)と(k,n)しきい値秘密分散法を組み合わせた秘密計算法により、1台のサーバーのみで秘密計算を実現可能であることを実証したと発表した。

 秘密計算とはデータを暗号化したまま計算を行なう技術で、元データの漏洩を防げ、AIやIoTなどあらゆる情報をインターネット上でやり取りする現代社会において必要不可欠である。従来の秘密計算は、準同型暗号方式や秘密分散方式などがあったが、計算コストや演算処理時間、情報の安全性といった面で課題があった。

 同大学 電気工学科の岩村惠市教授、および工学部情報工学科のAhmad A. Aminuddin嘱託助教らの研究グループは、TTPと秘密分散方式の1つである(k,n)しきい値秘密分散法を組み合わせ、従来より安全かつ高速な秘密計算が可能な方法を開発し、実用性の検証を行なった。その結果、1台の計算サーバーのみで秘密計算を実現できたという。また、使用するプライベート鍵が安全に管理されていれば、計算プロセス全体を公開できることを示したとしている。

 (k,n)しきい値秘密分散法は、秘密情報sをn個の異なる値(シェア)に分割することで隠すが、今回はシェアと計算サーバーに用いるパラメータを区別することで、計算サーバー数が復元に必要なシェア数を下回っても実行可能な計算を提案した。

 また、提案した手法では、複数サーバー間の通信は不要であるが、TTPとサーバー間の通信は依然として必要になる。そこで研究グループは、TTPの役割を、近年のCPUに多く搭載されているTEE(Trusted Execution Environment)に置き換えることで通信を不要とし、高速な計算を実現したとしている。

 なお、今回の秘密計算の実装は並列化なしで実行されたが、多入力の秘密分散方式に基づく秘密計算では速度向上のため並列計算が不可欠であることから、今後は並列計算を効率的に導入する方法を検討する必要があるとしている。

 今回の研究成果は、個人情報や機密情報分析、医学研究、遺伝子研究などさまざまな分野への応用が期待される。