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NICT、立体ディスプレイの実現に向けた可視光で動作する光変調器
2022年5月31日 14:16
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は30日、可視光で動作する高効率な有機電気光学(EO)ポリマー光変調器の開発に成功したと発表した。今後、立体ディスプレイやスマートグラスへの応用が期待される。
光変調器は電気信号を光信号に変換するデバイスだが、LN(ニオブ酸リチウム)光変調器よりも高速で低消費電力なEOポリマー光変調器は、これまで光通信に使われている近赤外光しか利用できない課題があった。
また、EOポリマー光変調器を応用し、光ビームを高速で走査することで立体ディスプレイなどの表示デバイスに用いることも期待されているが、これにも近赤外光より波長が短い可視光に対応させる必要があった。
このたびの研究で、NICTがこれまで蓄積した膨大な分子構造ライブラリに基づく分子設計と、正確な測定技術を用いたことにより、可視光に対する吸収損失が小さく、高い電気光学係数を持つEOポリマーの開発に成功。EO分子の構造を短く曲がりにくく設計したことで、従来のEOポリマーと比較して可視光の吸収をの2万分の1以下に抑え、可視光で利用できるようにした。
また、この新しいEOポリマーでマッハ・ツェンダー型干渉計構造を設計し、微細加工プロセスによる光変調器を制作。リッジ型導波路を採用し、光が伝搬する導波路の幅が比較的大きくてもシングルモードが担保されるようにした。これにより、精度の高い加工を必要とするものの、従来の微細加工プロセスを大幅に改良することなく成果を達成できたとしている。
実際に開発した光変調器の変調動作を評価したところ、波長640nm(赤色)で性能指数は0.52V・cmだった。これは従来の近赤外光よりも大幅に短い波長であり、性能指数は3分の1以下で非常に高効率(小型/低電圧)だったとしている。
今回の研究成果は、光制御技術や情報表示技術の先駆的なものだとしており、応用して光ビームを成形/走査する可視光用光フェーズドアレイを作成することで、立体ディスプレイなどへの表示デバイスや、スマートグラスといった次世代ウェアラブル端末への応用や搭載が期待される。