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慶應大、世界で初めてエラーフリーのプラスチック光ファイバ伝送に成功

エラーフリーPOF

 慶應義塾大学新川崎先端研究教育連携スクエアを研究拠点とする慶應フォトニクス・リサーチ・インスティテュート(KPRI)の小池康博教授らの研究グループは24日、短距離通信において通信エラーをほとんど発現しないプラスチック光ファイバ(エラーフリーPOF)の開発に成功したと発表した。

 昨今、サーバーやコンピュータ機器において大容量/高品質データ通信が求められているが、高速化によりデータを誤りなく伝送することが困難となり、そのためデータの誤りを訂正するForward Error Correction(FEC)機能や波形整形回路が用いられている。ただ、これらのエラー訂正により通信システムの消費電力や通信遅延の増大が課題に挙がってきている。

 同研究グループはこれまで短距離用との光ケーブルとして、屈折率分布型プラスチック光ファイバを提案してきたが、その伝送特性を解析する中で、コア内部にミクロ不均一構造を形成し、前方光散乱を介して効率的なモード結合を誘起することで、光伝送の雑音や歪を大幅に低減できることを明らかにした。

 この成果をもとに、優れた高速性と低雑音性を兼ね備えたエラーフリーPOFを新規に開発。短距離通信の次世代標準である53GbpsのPAM4信号を、FECなどの誤り訂正機能を用いることなくエラーフリーで転送することに成功したという。

53GbpsのPAM4伝送を実現

 光ファイバにおける光散乱は伝送損失を増加させる要因となるため、長距離伝送においては取り除くことが不可欠とされていて、そのためプラスチック光ファイバは適していなかった(ガラスの方が適している)。その一方で100m以下程度の短距離通信においては、この光散乱に起因したモード結合を積極的に活用することで、ガラス光ファイバでは達成できない極めて安定した信号伝送が可能であり、この逆転の発想によりエラーフリーPOFを実現できたとしている。

 本研究成果はデータセンターの省電力化に貢献できるだけでなく、自動運転車、ロボティクス、高精細映像伝送などへの適用が可能としており、次世代情報産業を牽引するものと期待されている。

研究成果の応用の期待