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Arm、10年ぶりの新アーキテクチャ「Armv9」。富岳のSVE改良版やコンフィデンシャルコンピューティング機能追加
2021年3月31日 03:00
Armは3月31日、マイクロプロセッサの最新アーキテクチャ「Armv9」を発表した。
2011年に発表した現行のArmv8から10年ぶりの刷新となり、これまでどおり、命令セットアーキテクチャ(ISA)として、高性能CPU向けのAプロファイル(Armv9-A)、リアルタイム処理向けのRプロファイル(Armv9-R)、組み込み向けのMプロファイル(Armv9-M)を展開する。
Armv8では64bitプロセッシングを投入するとともに、仮想化強化、マシンラーニング向けのfloat16とbfloatの追加、各種セキュリティ機能など、この10年のなかでさまざまな改良を行なってきた。
同社はArmv9アーキテクチャについて、極小のマイクロコントローラから大規模サーバーまで、次の10年間を担うとしており、Armv8との完全な互換性を持たせるとともに、マシンラーニングとDSP(Digital Signal Processing)での演算能力の増強、そしてセキュリティの強化に取り組んでいく。
マシンラーニングとDSPについては、その強化のために新しいベクタ処理として「SVE2」(Scalable Vector Extension 2)が実装。これはスパコン「富岳」に採用されているベクタ拡張のSVE(Scalable Vector Extension)をベースに構築されたもので、これまでのようにHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)の用途だけでなく、一般的なシステムでも利用でき、5GシステムやVRなど、データタイプに応じて最適に動作するという。
この機能は改良を重ねていき、CPU上でのマトリクス演算機能を大幅に強化していく予定。現行のCortex-X1/A78から次々世代のMatterhornにかけて、性能は30%向上するとしている。
【お詫びと訂正】初出時に、下図の性能向上率に対して、間違った言及をしておりましたので、該当箇所を修正いたしました。お詫びして訂正させていただきます。
また、セキュリティ機能として、「Arm Confidential Compute Architecture(CCA)」を導入。コンフィデンシャルコンピューティングとは、メモリなどに展開されるデータをCPUが暗号化して、ハードウェア上で安全に演算を行なえるようにするための仕組みで、最近注目が集まっている技術だ。
コンフィデンシャルコンピューティングでは、OSやハイパーバイザーに信頼を置く従来のコンピューティングモデルと違い、システムの実行する特権的なソフトウェアが、実行中のセッションのデータを閲覧/操作する必要がなくなり、IoTを含めたさまざまなデバイスの信頼性を格段に向上可能とする。
CCAでは、同社のセキュリティ機能であるTrustZone上にあるセキュアと非セキュアとは別に、通常のプログラムによってダイナミックにメモリを設計可能な「Realm(レルム)」という概念を用いる。レルムではOSやハイパーバイザーとは完全に分離され、信頼できる少数の管理ソフトが使われる。なお、ページテーブルはノーマルメモリとレルム上のメモリの間で共有できるという。
たとえば、アプリストアからダウンロードしたライドシェアアプリが、OSやハイパーバイザーからは見られずに、秘密を保持しつつ、作業するためのレルムを作ることができ、OSが破壊されたとしてもデータを確実に保護可能にする。
これによって、商業的価値のあるアルゴリズムやデータの盗難を防げるため、ドライバーや配達業者向けに企業専用のデバイスを用意せずに済む。レルムを利用することで、個人情報を網羅的に保護でき、セキュリティはより確実なものになるとしているが、その詳細は今年の夏頃に公開予定とのこと。
Armv9をベースとした製品は2021年中に登場予定となっている。