ニュース

この10年で最大級のインパクトをもたらしたRyzen 5000シリーズ。2021年、買うべきCPUはこれだ!

 Intelが第10世代Coreシリーズ(コードネーム:Comet Lake)、AMDがRyzen 5000シリーズ(コードネーム:Vermeer)をそれぞれリリースするなど2020年はCPUにとって大きな変化があった。両陣営の動きをまとめるとともに、僚誌DOS/V POWER REPORTが2021年初頭に買うべき製品として選定したゴールドレコメンド2モデルを紹介しよう。(TEXT:加藤勝明、マルオマサト)

14nmで苦戦し価格攻勢に出たIntel

 AMDの快進撃を食い止めるべく2020年5月、Intelは第10世代Coreプロセッサ、開発コードネーム“Comet Lake”を投入した。プロセスやアーキテクチャは前世代と同じだが、最上位モデルに同社製メインストリーム初の10コア20スレッドのモデルを投入、さらにCeleronを除く全モデルでHyper-Threading(HT)の有効化や上位モデルのクロック上昇など製品構成を一新した。

 発売当初における第10世代Coreの性能は、ゲームにおいては同時期のRyzenを上回る。しかし8コア16スレッド以上の末尾にKの付く倍率アンロックモデルは高負荷時の消費電力の増大を招き、Ryzenのワットパフォーマンスの高さを逆に引き立ててしまった。

 そしてAMDの第4世代Ryzen(5000シリーズ)登場により、Intel製CPUは性能のトップ争いから脱落、プライスダウンで“費用対効果”を打ち出す戦略転換を余儀なくされた。

(1)第10世代Core発売。最上位は物理10コア
最上位のCore i9-10900KはIntelのメインストリーム初の10コア20スレッドモデル。Turbo Boost Technology Max 3.0やThermal Velocity Boostを搭載し最大5.3GHz動作を達成したが、TDP 125Wゆえの消費電力の高さが目立ってしまった
(2)多くのモデルでHTが有効に
【検証環境】マザーボード:ASRock Z490 Steel Legend(Intel Z490)、メモリ:G.Skill F4-3200C14D-16GTZR(PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB×2 ※各CPUの定格で動作)×2、ビデオカード:NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti Founders Edition、SSD:Western Digital WD Black NVMe WDS100T2X0C[M.2(PCI Express 3.0 x4)、1TB]、OS:Windows 10 Pro 64bit版
(3)値下がりが続く

CPUの性能評価を激変させたAMD

 2020年のCPU市場は誰の目から見てもAMDのワンサイドゲームだった。2月にはZen 2世代最多コアを誇る「Ryzen Threadripper 3990X」、4~5月には格安「Ryzen 5 1600(AF)」と4コア8スレッドの新勢力「Ryzen 3 3100/3300X」、7月には“Renoir”こと新APU「Ryzen PRO 4000Gシリーズ」、そして10月にはZen 3世代の「Ryzen 5000シリーズ」を投入。どの製品も性能や価格面で競争力があり、かつてのAMDからは考えられないほどのヒット作を連発した。

 なかでもとくに注目を集めたのがZen 3世代のRyzen 5000シリーズ。プロセスルール以外のあらゆる側面に手を加え、これまでシングルスレッド性能に強みを見い出していたIntelのCPUを完全に性能で凌駕することに成功。Zen 3登場前まで、同コア数ではIntelのCPUとよい勝負をしていた戦況を一気にRyzen圧倒的有利に導いた。新チップセット「B550」の投入でミドルレンジマザーでもPCI Express 4.0対応が可能になったことも見逃せない。

(1)Zen 3でシングルスレッド性能が激増
AMDが10月に発表したZen 3世代の「Ryzen 5000シリーズ」は最大8コアに1基の巨大3次キャッシュを共有させた。結果としてマルチはもとよりシングルスレッド性能も大幅に向上した
(2)Zen 2+VegaのAPU“Renoir”も人気
HT有効化により論理コア数が倍になったため、マルチスレッド性能が広く底上げされた
【検証環境】マザーボード:MSI MPG X570 GAMING EDGE WIFI(AMD X570)、メモリ:Micron Crucial Ballistix RGB BL2K8G36C16U4BL(PC4-28800 DDR4 SDRAM 8GB×2 ※各CPUの定格で動作)、システムSSD:Kingston KC600 SKC600/1024G(Serial ATA 3.0、1TB)、OS:Windows 10 Pro 64bit版
1万円台のCPUも強かったが……
Ryzen 3 3300XやRyzen 5 1600(AF)といった低価格で高性能なCPUも登場。1600(AF)は旧世代製品を新プロセスで作るというおもしろい試みだったが、短期間で出荷が終わってしまった

AMDの深刻な品薄問題は今後改善するのか?

 AMDが製造を委託するTSMCの7nmプロセスは家庭用ゲームのCPU・GPUやRadeonも使っているため、Ryzenシリーズの供給量不足は深刻だ。とくに2CCD構成のRyzen 9 5900X/5950Xの品薄が続き、旧世代でもRyzen 3 3300Xのように発売しても長く欠品が続くものがある。2021年は改善を期待したいが、今後Zen 3世代の下位モデルやThreadripperの登場も予想され、7nmの需要に下がる要素はない。「見かけたら買え」がAMD派の合言葉になるだろう。

5000シリーズの上位は超人気
発売以来、上位のRyzen 9 5900X/5950Xは入荷と同時に争奪戦が繰り広げられた。少しずつ入荷が増えているので早期の品不足解消を期待したい
入荷を熱望する人が多い3300X
4コア8スレッドだが高クロックで非常に優秀なRyzen 3 3300Xは絶滅危惧種。8月以来入荷のニュースもなく、このまま自然消滅する気配すらある
16コアCPUを超える場面も! 現在のAMDを象徴する万能性
AMD Ryzen 9 5900X
実売価格:72,000円前後
対応ソケット:Socket AM4●製造プロセス:7nm●内蔵GPU:-●コア数/スレッド数:12C/24T●定格/最大ブーストクロック:3.7GHz/4.8GHz●3次キャッシュ:32MB×2●対応メモリ:DDR4-3200/2ch●倍率アンロック:対応●PCI Express:20レーン(Gen4)●内蔵GPU(最大クロック):-●TDP:105W

 12コア24スレッドで最大の動作周波数4.8GHz。この仕様でもまだシリーズの最上位ではない。いや、このスペックを見てもさして驚きがないことに改めて感慨を覚える。もはや8コア16スレッドではハイエンドとしてもの足りない……AMDが初代Ryzenから仕掛けてきたアグレッシブなメニーコア展開は、われわれの感覚を一変させてしまった。

 しかも、このRyzen 9 5900Xときたら、シングルスレッド性能にも優れる。新たにRyzen 5000シリーズが採用したZen 3アーキテクチャの恩恵だ。エンコードやレンダリングなどの処理以外でもハイエンドとして申し分ない処理性能を発揮する。シングル性能が大幅に強化されたことからマルチスレッド性能もさらに強くなり、処理によっては先代の16コア32スレッドCPUをも上回る。ハイエンドでこれに対抗できる魅力を持つのは、最上位のRyzen 9 5950Xのみと言えるが、冷却や電力などの扱いやすさで勝ることや価格とのバランスからこちらを上位に取った。

【検証環境】マザーボード:<LGA1200>ASUSTeK ROG MAXIMUS XII EXTREME(Intel Z490)、<Socket AM4>GIGA-BYTE X570 AORUS MASTER(rev. 1.0)(AMD X570)、メモリ:G.Skill F4-3200C14D-16GTZR(PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB×2 ※各CPUの定格で動作)×2、ビデオカード:NVIDIA GeForce RTX 3080 Founders Edition、システムSSD:Corsair Force Series MP600 CSSD-F1000GBMP600[M.2(PCI Express 4.0 x4)、1TB]、データSSD:Western Digital WD Black NVMe WDS100T2X0C[M.2(PCI Express 3.0 x4)、1TB]、OS:Windows 10 Pro 64bit版
新たなゲームキングの誕生! 6コアCPUの中で圧倒的高性能
AMD Ryzen 5 5600X
実売価格:40,000円前後
対応ソケット:Socket AM4●製造プロセス:7nm●内蔵GPU:-●コア数/スレッド数:6C/12T●定格/最大ブーストクロック:3.7GHz/4.6GHz●3次キャッシュ:32MB●対応メモリ:DDR4-3200/2ch●倍率アンロック:対応●PCI Express:20レーン(Gen4)●内蔵GPU(最大クロック):-●TDP:65W

 物事が変わるのは一瞬だ。これまでIntelメインストリームの最上位モデルが代々継承してきたゲームキングの座を、Ryzen 5 5600Xが圧倒的なパフォーマンスで奪い取った。実力の差はベンチマークの結果を見れば一目瞭然だ。モンスターハンターワールド:アイスボーン、ウォッチドッグス レギオンといった実ゲームのテストで10コア20スレッドのCore i9-10900Kを6コア12スレッドで上回るのには衝撃を受ける。

 しかも、Ryzen 5 5600Xは、Ryzen 5000シリーズの中ではもっともコアが少なく、価格も安いモデル。もちろん、上位モデルのほうがより高いフレームレートを出せるが、TDP 65Wなので冷却などに過剰な気を使う必要がないし、ビデオカードと言うよりコストをかけるべき対象があるゲーミングPCで使うCPUとしてこれ以上ない存在。各メーカーから登場してくるゲーミングPCにも大きな影響を与えるであろう。

【検証環境】マザーボード:<LGA1200>ASUSTeK ROG MAXIMUS XII EXTREME(Intel Z490)、<Socket AM4>GIGA-BYTE X570 AORUS MASTER(rev. 1.0)(AMD X570)、メモリ:G.Skill F4-3200C14D-16GTZR(PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB×2 ※各CPUの定格で動作)×2、ビデオカード:NVIDIA GeForce RTX 3080 Founders Edition、システムSSD:Corsair Force Series MP600 CSSD-F1000GBMP600[M.2(PCI Express 4.0 x4)、1TB]、データSSD:Western Digital WD Black NVMe WDS100T2X0C[M.2(PCI Express 3.0 x4)、1TB]、OS:Windows 10 Pro 64bit版

DOS/V POWER REPORT 2021年冬号では「PCパーツ100選+700」と題した160ページもの超特大ボリュームの特集を掲載している。CPUやマザーボード、ビデオカードやSSDといった主要なジャンルについて、最新のトピックや市場トレンドをまとめたほか、豊富な検証結果により、自信を持ってお勧めできる製品としてゴールド/シルバーレコメンド選定した。さらに、注目製品を総ざらいしたカタログも付いて、今買うべき製品がすべて分かる1冊に仕上がっています。