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Intel、“AMDのノートはバッテリ駆動時に性能が大きく低下”と指摘

家庭内のさまざまな場所でのノートパソコンの利用と、ノートパソコンのユースケース

 米Intelは23日(現地時間)、同社の第11世代Core搭載ノートパソコンと、AMD製のRyzen 4000シリーズを搭載したノートパソコンの性能比較データを公開。Intel CPUを搭載したノートパソコンのほうがバッテリ駆動時でも性能低下が少ないことをアピールした。

 同社によれば、ノートパソコンユーザーの70%は、家庭内においてさまざまな場所で活用しており、そのさいにバッテリ駆動で使う可能性を指摘。実際の用途も、オフィススイートとWebブラウジング、コンテンツ消費と制作になっている。

 そのバッテリ駆動のさいに、AMD製ノートパソコンは、ACアダプタ駆動時と比較してCPUの消費電力と性能を大きく抑えていて、レスポンスと性能の低下が平均で38%にも達するのだという。

AMDのシステムはバッテリ駆動時の消費電力が抑えられている

 今回Intelが比較用に用意したノートパソコンは下記の10機種で、CPUのラインナップとしては上位から下位までカバーしている。いずれも箱から出した直後の状態で比較を行なっている。

Intelが用意した10台のシステム

Intel CPU搭載システム

・MSI Prestige 14(Core i7-1185G7、メモリ16GB、14型フルHD、52.4Whrバッテリ)
・Lenovo Yoga 9i(Core i7-1185G7、メモリ16GB、14型フルHD、67.6Whrバッテリ)
・Intel NUC M15 Laptop Kit(Core i7-1165G7、メモリ16GB、15.6型フルHD、74Whrバッテリ)
・HP Pavilion x360(Core i5-1135G7、メモリ8GB、14型フルHD、42.7Whrバッテリ
・HP Pavilion x360(Core i3-1116G4、メモリ8GB、14型HD、41.8Whrバッテリ)

AMD CPU搭載システム

・Lenovo Xiaoxin Pro(Ryzen 7 4800U、メモリ16GB、13.3型フルHD、56Whrバッテリ)
・Lenovo Yoga 14s(Ryzen 7 4800U、メモリ16GB、14型フルHD、58.9Whrバッテリ)
・Lenovo Ideapad 5(Ryzen 7 4700U、メモリ16GB、14型フルHD、56.5Whrバッテリ)
・HP Envy x360(Ryzen 5 4500U、メモリ8GB、15.6型フルHD、51Whrバッテリ)
・Lenovo Ideapad Flex5(Ryzen 3 4300U、メモリ8GB、14型フルHD、52.5Whrバッテリ)

 PCMark 10 ApplicationsベンチマークにおけるOffice 365総合スコアでは、Intelシステムは平均的にAMDシステムより高い性能を実現しているだけでなく、バッテリ駆動時の性能低下も5%程度であった。その一方でAMDのシステムは38%も性能低下が見られたという。

バッテリ駆動時間は大差がなかったが、AMDのシステムはバッテリ駆動時にベンチマーク結果が低かった
PCMark10 Applications性能の比較。AMDのシステムでは最大38%の性能低下が見られた

 Web関連の性能を計測する「WebXPRT v3」ではAMDのシステムは性能低下がもっと著しく48%に達する。さらに、システム全体の性能を計測する「SYSmark 25」においても、AMDのシステムは最大30%の性能低下が見られた。

WebXPRT v3では、AMDシステムでは最大48%もの性能低下があったという
SYSmark 25でも、AMDシステムでは最大30%の性能低下があった

 AMDのシステムはこうしたベンチマークのみならず、実作業でも影響は出ており、PowerPointをPDFとして保存する作業において最大29%の性能低下、ExcelのグラフをWordにインポートする作業では16%の性能低下、WordをPDFに変換する作業では14%の性能低下、Outlookのメールマージ作業で最大24%の性能低下が見られたとしている。

PowerPointをPDFに保存する作業。ちなみにこのグラフは短ければ短いほど有利なので、矢印の向きは本来上向きである
ExcelのグラフをWordにインポートする作業。こちらも実時間のグラフなので、棒が短ければ短いほど有利
WordをPDFに変換する作業。ここでもAMDのシステムは全体的に不利なだけでなく、バッテリ駆動時はさらに性能が低下
Outlookのメールマージ作業

 Intelがこうしたデータをわざわざ紹介するのは、AMDのシステムで得意としているベンチマーク「Cinebench R20」において、マルチスレッド性能でIntelを大きくリードし、バッテリ駆動時でもそのスコア低下が見られないためである。つまり「AMDのシステムはCPUコア数が多くてCinebench R20でいいスコアを出しているが、それは実際のユーザーシナリオに即したものではないため、公平ではない」と言いたいわけだ。

ところがCinebench R20では、AMDのシステムは性能に差があまり現れない

 Intelがこの原因について探ってみたところ、AMDシステムはバッテリ駆動時にCPUの電圧を引き上げる遅延が7~10秒程度存在するためだという。つまり、Cinebench R20のように、ある程度の時間一定の負荷がかかる場合、AMDのシステムでは初速が遅くても後半である程度挽回できるのに対し、処理が突発的に発生するような“実利用”では、この遅延により性能が出せていないのだという。

細かく分析していくと、AMDのシステムはバッテリ駆動時、電圧と消費電力の引き上げに遅延があるという
WebXPRTのようなベンチだと、この遅延により、本来バーストしなければならない(クロックを引き上げなければ)タイミングに間に合わない
そのため、AMDのシステムでは性能が低く出てしまう

 結果的に、Intelの第11世代Coreを搭載したノートパソコンのほうが、AC接続時でもバッテリ駆動時でも安定した性能が得られ、バッテリ駆動を考慮した実利用ではAMDシステムより優れているとした。そして、ノートパソコンの性能を評価するさいは、バッテリ駆動時の性能も測るべきだと述べている。

Intelによれば、ノートパソコンの性能はバッテリ駆動時の状態でも計測すべきだという

 もっとも、Intelが示したデータだけを見れば、AMDシステムはこの立ち上がりの遅延を改善する余地があり、アップデートによる“反撃”は期待できそうではある。