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Intelら、-272℃の"高温"で動作可能な量子ビットを実証

 IntelQuTechは4月16日(現地時間)、1ケルビン(約-272℃)を超える温度で、量子コンピューティングの基本単位である“量子ビット”の実証に成功したとの論文がNature誌に掲載されたと発表した。

 量子コンピューティングを現実的環境で導入するには、高レベルの忠実度で同時に数千の量子ビットを制御する必要があるが、現在の量子システムのデザインでは、システム全体のサイズや量子ビットの忠実度、とくに大規模な量子を管理可能にする電子機器制御の複雑さが障害となっている。

 制御機器とスピン量子ビットを同じチップ上に統合して小型化すれば、それぞれの相互接続が大きく簡素化されるものの、同時に動作温度を上げて量子ビットを運用可能にすることも実用に向けて絶対に不可欠という。

 通常、量子ビットに含まれる量子情報は、ほぼ絶対零度(0K=-273℃)で冷却しないかぎり即座に失われてしまうが、IntelとQuTechは高温・高密度でコヒーレントな量子ビットの動作をはじめて実証した。

 以前は、量子コンピュータはmK(ミリケルビン)の範囲(絶対零度をわずかに超える温度)で運用できることが証明されたのみだったが、QuTechはシリコンスピン量子ビットが現行の量子システムよりも少し高い温度で運用可能な能力を備えているとの仮説を証明。また、Intelは量子コンピューティングの実用化に向けた極低温で動作する量子ビットの制御チップ「Horse Ridge」を昨年末(2019年)に発表しており、実践可能なフルスタックの量子システムの開発に取り組んでいる。

 シリコン量子ドットを使った1Kを超える1量子ビットの制御方法は、今回のやり方と同時に証明されているが、その一方で2量子ビットの制御については、40mKの温度でしか達成されていなかった。

 今回、IntelとQuTechは1.1K(約-272℃)という"高温"で動作する量子回路において、完全な2量子ビットのロジックを示すとともに、最大99.3%の1量子ビットの忠実度とシステムの正確な調整を測定するための、2量子ビットシステムの電子スピンを制御する能力も実証。そして、スピン量子ビットの性能が45mKから1.25Kの範囲のなかで最小限に作用することも明らかにした。