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Intel、極低温環境で動作する量子ビット制御チップ「Horse Ridge」

~スケーラブルな量子コンピュータ実現に向け開発

Horse Ridge

 米Intelは9日(米国時間)、初の量子コンピュータ向けクライオジェニック(極低温)制御チップを発表した。

 米オレゴン州でもっとも寒い地域の1つにちなみ、開発コードネーム“Horse Ridge”の名前で呼ばれる同チップは、量子ビットを制御する無線周波数プロセッサとして機能するSoC。基本的な量子ビット操作に対応した命令に対応し、命令を電磁マイクロ波パルスに変換することで量子ビットの状態を操作する。

 量子コンピュータでは量子の重ね合わせ状態を維持するため、絶対零度に近い極低温を実現する“冷凍庫”を利用して、量子ビットを生成している。

 従来の量子コンピュータでは、わずかな数の量子ビットの制御のために数百本のケーブルを冷蔵庫内に引き込み外部の機器から操作を行なっている。このケーブルや制御システムは、商業的に実用性のある数百万量子ビットのシステムのみならず、量子実用性の実証に必要な数百~数千量子ビットのシステムですら、スケーリングを阻害する要因となっていた。

 今回のHorse Ridgeは、極低温(約4K)で動作するよう設計されており、量子ビット制御を極低温冷蔵庫に(量子ビット自体にできるだけ近い位置に)統合することを目的として開発。これにより従来の量子コンピュータで必要だった数百本のケーブルを排除し、量子制御工学の複雑さを大きく軽減するという。

 Intelでは、Horse Ridgeによって複数の量子ビット(qubit)の制御を可能とし、量子コンピューティングシステムのスケーリングを実現するものとしている。

 現状の量子コンピュータはmK(ミリケルビン)オーダーで動作しているが、Intelの研究しているシリコンスピン量子ビットでは1K以上で動作するという特性を持っているため、Horse Ridgeとの組み合わせでスケーラブルな量子コンピューティングシステムへの道筋が得られたとする。

 Intelでは極低温制御とシリコンスピン量子ビットを同じ温度レベルで動作させることを目指しており、そうなれば高度なパッケージング技術と相互接続テクノロジーを活用して、量子ビットと制御を1パッケージに統合したソリューションを実現できる。

 チップはデルフト工科大学とTNO(応用科学研究機構)の共同研究企業であるQuTechとIntelの共同で開発され、Intelの22nm FinFETで製造されている。Intelでは、同社内で制御チップを製造することで、商業利用可能な量子コンピュータの設計、試験、最適化にむけた同社の能力が劇的に進むとしている。

How Quantum Computing will Answer Unsolved Problems