ニュース

レノボとNTT、教材や管理ツールを含めた「GIGAスクールパック」を1台あたり44,990円で提供

左から、NTTコミュニケーションズ 代表取締役常務取締役の菅原英宗氏、アドビシステムズ マーケティング本部 バイスプレジデントの秋田夏実氏、グーグル アジア太平洋地域 マーケティング統括部長のスチュアート・ミラー氏、東京書籍 教育文化局教育文化総轄本部の長谷部直人本部長、日本マイクロソフト 執行役員 コンシューマー&デバイス事業本部 デバイスパートナー営業統括本部長の梅田成二氏、レノボ・ジャパン 執行役員副社長の安田稔氏

 レノボ・ジャパンNTTコミュニケーションズは、GIGAスクール構想に対応した「GIGAスクールパック」の提供を開始する。3月3日に都内で記者会見を行ない、その内容を発表した。

 Windows 10を搭載した「Lenovo ideapad D330」あるいは、Chrome OSを搭載した「Lenovo 300e Chromebook 2nd Gen」と、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)のクラウド型教育プラットフォーム「まなびポケット」、端末設定やセキュリティ管理を行なう「端末管理ツール」のほか、東京書籍とレノボが共同開発した学校用プログラミング教材「みんなでプログラミング」、アドビシステムズのクリエイティブツール「Adobe Spark」をパッケージ化。1台あたり44,990円で提供する。

 GIGAスクール構想では、PC 1台あたりの補助の上限額が45,000円となっており、その予算枠のなかで、PC本体、管理ツール、学習コンテンツを調達できるようになる。販売対象はGIGAスクール構想の対象となる小学校、中学校となり、学習塾などや個人には販売しない。

Lenovo 500e Chromebook 2nd Gen
Lenovo 10e Chromebook Tablet
Lenovo 300e Chromebook 2nd Gen
Lenovo 300e 2nd Gen
Lenovo ideapad D330
まなびポケットの画面

 レノボ・ジャパン 執行役員副社長の安田稔氏は、「レノボ・ジャパンは、Smarter technology for all studentsを掲げ、GIGAスクール構想を効率的、効果的に実現するための支援を行なう。1人1台時代に向けて必要十分な端末を低価格で提供すること、クラウドをフル活用し、教職員の負担を軽減する提案を行なうこと、利活用効率を向上させるための教育コンテンツを含めた提案を行なうことを、レノボ・ジャパンの3つのコミットとし、GIGAスクール構想を加速させたい。また、入学から卒業まで使用できる1人1ID環境の実現も支援する。今回のGIGAスクールパックは、これらのレノボ・ジャパンのコミットを実現するための製品になる」と述べた。

 レノボ・ジャパン 教育ビジネス開発部の武者 超マネージャーは、「OSごとにスタンダードなデバイスをコンテンツとのワンパッケージで提供するとともに、学校現場の運用負荷を軽減することができるクラウドベースの管理も提供する。さらに、初期設定やコールセンター、保守サービス、バッテリ交換などの運用支援サービスをオプションで提供する。これまでに経験をしたことがない台数のPCを子供たちが利用することになり、学校では、それを管理しなくてはならないという課題がある。クラウドをフル活用することで、教職員の負担を軽減したい」とした。

 レノボ・ジャパンでは、教育機関での利用に適したPCとして、「GIGAスクールパック」で提供するChrome OS搭載の「Lenovo 300e Chromebook 2nd Gen」のほかに、同じくChrome OS搭載の「Lenovo 10e Chromebook Tablet」、「Lenovo 500e Chromebook 2nd Gen」と、Windows 10を搭載した「Lenovo 300e 2nd Gen」の4機種を発表した。

 いずれの製品もスペックは、GIGAスクール構想の標準仕様に準拠している。なお、「GIGAスクールパック」で提供する「Lenovo ideapad D330」は、従来から教育分野向けに販売している(レノボ、GIGAスクール構想準拠のChromebookなど参照)。

 レノボ・ジャパン武者マネージャーは、「今回新たに発表した4機種は、児童生徒1人1台時代のための専用デバイス。MIL-STD-810に準拠した堅牢性と、キーボードを取り外して利用することができる機種を含むマルチモード2in1の実現、クラウドデプロイへの最適化を図った製品になる」とした。

 レノボは、2019年10月~12月の全世界のK12(小学校、中学校、高校)市場において、21.6%のシェアを獲得してナンバーワンとなっているほか、インドにおいて学習用PCを1四半期だけで150万台以上を導入した実績もある。日本においては、大分市教育委員会に、11,000台のLenovo ideapad D330を納入するなどの実績を持っている。

 安田副社長は、「現場のニーズにあわせて、2つのOSを搭載したモデルを用意した。これまでWindows環境でPCを導入し、教材アプリなどを利用していた学校ではWindows 10搭載モデルを選択し、簡単に運用をしたいというニーズが高い学校では、Chromebookを選択することになるだろう」と述べたほか、「レノボは、グローバルシェアナンバーワンであり、大量生産ができる。今回の製品は、教育現場向けに大量に導入できることから、通常のコンシューマ向けPCよりも安く提供できる」と、低価格化を実現した理由を語った。

 一方、NTT Comでは、「GIGAスクールパック」において、「まなびポケット」を提供。シングルサインオンや学習履歴管理などの基本機能に加えて、授業支援システムや学習コンテンツ、授業記録システムを提供する。また、オンライン研修を組み合わせることで、教育現場への導入を円滑化する考えも示した。「まなびポケット」は、全国60以上の教育委員会、400以上の学校、20万人以上の児童生徒、教職員が利用しているという。

 NTTコミュニケーションズ 代表取締役常務取締役の菅原英宗氏は、「NTT Comは、2014年から総務省が実施した先導的教育システム実証事業をはじめとして、総務省、文科省、内閣府などと数多くの実証実験を行なってきた。自治体における個別案件への対応、サービスとしてのまなびポケットの提供を加えた三位一体により、教育ICT化の支援を行なってきた。

 GIGAスクール構想を価値あるものにするには、実際に使われることが重要であり、そのために、レノボ・ジャパンと協業した。まなびポケットを活用した提案はレノボ・ジャパンに限定したものではないが、教育のICT化においては最高のパートナーだと思っている」と述べた。

 NTTコミュニケーションズ スマートエデュケーション推進室の稲田友担当課長は、「教育現場におけるPCの使用率は、日本は最低の水準にあり、導入されても使われていないというのが実態である。GIGAスクール構想において、もっとも恐れているのは、電子機器が使われずに置かれてしまう状況。これまでと同様に、使われない状況を生まないようにする必要がある。

 各自治体では、各クラスで1日に1~2回以上、PCを使用する活用計画を打ち出すことになるが、NTT Comが100以上の自治体に導入した結果から見ても、平均値でここまでの利用をしている自治体はない。GIGAスクールパックは、基本機能に加えて、先生の利用を促進するシステムを提供し、基本的には、物事に慎重な姿勢である現場の先生たちに、日常的に使ってもらうようにしたい」と述べた。

 まなびポケットでは、基本機能に加えて、2,000本の映像授業の提供や、5,000問の動画と連動したプリント教材により、基礎や基本の学習、復習、学び直しができる学習サイト「eboard」、授業実践を簡単に記録し、教員同士で授業記録を共有できる「BANSHOT」などを提供。情報端末を遠隔設定したり、セキュリティ管理を行なったりする「Intune for Education Windows Autopilot」および「Chrome Education Upgrade」も提供する。

 また、東京書籍では、学校用プログラミング教材「みんなでプログラミング」を、GIGAスクールパックを通じて、2020年8月から提供を開始する。

 東京書籍 教育文化局教育文化総轄本部の長谷部直人本部長は、「2020年4月から、小学校でのプログラミング教育が必須化されるが、PCの整備状況などから、その姿が想像できないという声が現場から上がっていた。だが、GIGAスクール構想によって、1人1台の環境が整備される。まさに『山が動いた』という状況にある。あとは、どう利用するかが大切である。『みんなでプログラミング』は、運用、利活用を重視したツールであり、小学校のプログラミング教育を支援できる」と位置づけた。

 「みんなでプログラミング」は、東京書籍とレノボ・ジャパン、NECパーソナルコンピュータが共同で開発したもので、学校でプログラミングを取り入れた授業を実施するための教材と、教師の指導ガイドなどをパッケージ化した。

 具体的には、トレーナーズガイドや他校の事例紹介などを冊子およびWebで提供する「教師用入門書」、技術や専門用語、プログラミング的思考基礎知識などを理解し、学習するための「児童生徒用教材」、学習指導要領に則ったプログラミング学習用実践ツールなどの「専用プログラミングコンテンツ」で構成する。

 なお、開発には、子供向けコンテンツやイベントで実績のあるキッズプロジェクト(エンジンズ)も協力した。

 アドビシテスムズは、クリエイティブツール「Adobe Spark」をGIGAスクールパックで提供する。

 Adobe Sparkは、ビジュアルプレゼンテーションを簡単に作成できるクリエイティブツール。Spark Postでは、ポスターなどの作成ができ、Spark Videoでは、調べ学習のまとめなどに、ナレーションつきの動画を制作。Spark Pageにより、コーディング不要でWebページを作ることができる。豊富なテンプレートを活用できるのも特徴だ。

 アドビシステムズ マーケティング本部 バイスプレジデントの秋田夏実氏は、「Adobe Sparkは、アドビのなかでは新しいツールの1つであるが、クリエイティブで、品質の高いプレゼンテーションを、細かく教えることなく、楽しく使えることができるプレゼンテーション作成ツールとして高い評価を得ている。すでに、全世界の学校で1,800万人以上の児童、生徒が活用している。学校での学びが、よりクリエイティブなものになることをサポートしたい」と述べた。

 会見には、日本マイクロソフトおよびGoogleの2社がゲストとして登壇した。

 日本マイクロソフト 執行役員 コンシューマー&デバイス事業本部 デバイスパートナー営業統括本部長の梅田成二氏は、「マイクロソフトは、教育分野にも強いパッションを持っており、2019年12月にGIGAスクール構想が閣議決定されたのと同時に、米本社、アジア、日本をまたぐバーチャルチームを作り、同構想に最適化したライセンスやプログラム開発を行なってきた。

 今回のGIGAスクールパックでは、端末管理ツールとOffice 365の無償版で構成されるMicrosoft 365 Educationを提供している。日本の子供たちが、Teamsを使って海外の子供たちと会話ができる。画面の下には字幕のように日本語や英語を表示することができ、海外に対するアレルギーも払拭できるだろう。日本マイクロソフトは、GIGAスクール構想を全力で支援していく」と述べた。

 Google アジア太平洋地域 マーケティング統括部長のスチュアート・ミラー氏は、「1人1台環境に移行することは正しいことであり、すでに1人1台環境によって学習効果が上がることが証明されている。GoogleはGIGAスクール構想を支援していく。レノボから発売されるChrome OS搭載のLenovo 300e Chromebook 2nd Gen、Lenovo 10e Chromebook Tablet、Lenovo 500e Chromebook 2nd Genは、教育のために開発されたデバイスで、使いやすく、丈夫であり、安全で、高速に動く。

 また、Chrome Education Upgradeにより、管理に関わる時間や作業、費用をかなり節約でき、GIGAスクール構想の条件を満たす無料のクラウドベースの学習プラットフォームであるGSuite Educationによって、学習効果をあげることができる。レノボとともに、日本の教育改革を支援していく」と語った。