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NTT、光ケーブルの構造最適化で光ファイバ伝送特性の制御に成功
2020年3月10日 18:07
日本電信電話株式会社(NTT)は10日、1本の光ファイバでマルチモードの光信号を伝送する「モード多重伝送」における、各モード間の伝送時間差(分散)の低減に成功したことを発表した。光ケーブルの構造を操作することによって光ファイバの伝送特性を制御した世界初の実証例となる。
5Gの本格導入などにより、データ通信が指数関数的に増加することが予想されるなか、既存の光ファイバで伝送容量を拡大する「空間分割多重技術」の導入が期待されている。一方で、複数の種類の光(マルチモード)を用いた「マルチモード光ファイバ」では、モード間の伝送速度が異なるため、時間軸上で信号が分散してしまい受信処理が複雑化する問題があった。伝送速度差は光ファイバの構造条件だけでなく、曲がりやねじれといった設置条件からも影響を受けるため、光ファイバケーブルを含めた伝送路全体を通じた速度差の制御は非常に難しかった。
今回の研究では、細径高密度光ケーブルの設計を最適化し、光ファイバに加わる曲がりやねじれの制御と、低損失性とモード間伝送速度差低減の両立を実現。速度差を世界最小とした細径高密度マルチモード光ケーブルを作製した。
細径高密度光ケーブルは、直径約10mmほどのケーブルの内部に200本以上の光ファイバを高密度に収めたもの。隣りあう光ファイバを部分的かつ非連続的に接着した「間欠固定光テープ」をバンドルテープで束ねた「バンドルファイバユニット」が高密度で充填されており、テープの張力と巻きつけピッチを変えることで曲がりとねじれを制御できる。
実際に作製した光ケーブルのX線断面画像を検証したところ、バンドルテープの張力と光ファイバの曲がり量が2重らせん構造のモデルで示せることが明らかになった。
さらに、曲がりやねじれに大きく影響を受ける結合コア型マルチモード光ファイバで、2個のコアで2モードを伝送できるものも用意。張力の異なる4種類のケーブル(A~D)を作製し、伝送特性の比較を実施したところ、バンドルテープの張力と、ケーブル化したさいの損失特性およびモード間伝送時間差(空間モード分散係数)に相関性があることがわかった。
過度な張力によって損失が増加する一方で、空間モード分散係数は張力とともに低下するというもので、実験では、ケーブル化損失を抑えつつ空間モード分散係数を最大63%低減し、世界最小となる1.5ps/√kmを実現した。これは、空間モード分散による伝送距離の制限を約6倍に拡大できることを示すものとなる。
同社では、モード多重用光ファイバや光ケーブルの最適化を進め、マルチモードを利用した大容量かつ長距離対応の光伝送システムの実現を目指すとしている。