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理研、シリコン内単一電子スピンの「量子非破壊測定」に成功
2020年3月4日 14:45
理化学研究所(理研) 創発物性科学研究センター量子機能システム研究グループと東京工業大学による共同研究グループは、シリコン内の単一電子スピンにおける量子非破壊測定に成功した。
量子コンピュータでは量子力学的な重ねあわせ状態を利用して情報を符号化するが、この重ねあわせ状態は観測(情報の読み出し)のさいに影響を受けてしまうため、誤り検出/訂正機能の実現には量子の非破壊測定が必要となる。シリコン中の単一電子スピンを利用した量子コンピュータでは、量子情報保持時間や量子演算が高精度で行なえることがすでに実証されており、現在の半導体に用いられている集積エレクトロニクス技術の応用が見込める一方で、量子非破壊測定は実現できていなかった。
これまで単一電子スピンの読み出しに用いられてきた観測対象の電子スピンを電荷へ変換する手法の場合、電子スピンを高速に検出することは可能なものの、電荷を検出するさいに電子スピンに影響を与えてしまうため、非破壊性が維持できない問題があった。
そこで研究グループでは、読み出したい電子スピンの情報を一度別の電子スピン(補助電子スピン)に転写してから読み出す手法を試みた。局所的な磁場を加えて電子スピン間にイジング型の相互作用が働くよう設計することで、転写時のスピン量への影響を防いでおり、情報の読み出しは補助電子スピンを使って従来どおりの手法で行なう。
実験の結果、非破壊性が99%、情報の読み出しが80%の精度で機能しているのに加えて、これら2つの機能を組みあわせて電子スピンの向きを確定する「初期化」についても、80%の精度で行なえていることがわかった。さらに、単一電子スピンを繰り返し測定できる量子非破壊測定の特性を利用すると、読み出し精度が最大95%まで引き上げられ、観測結果から精度の高い事象を予測する手法を用いると、下向きスピン状態への初期化の精度も最大99.6%まで高められると実証された。
同グループでは、すでに実現可能だとされている量子情報保持時間や超高精度な量子演算に加え、今回明らかとなった量子非破壊な測定手法によって、量子誤り訂正などに基づいた量子情報処理が可能なシリコン量子コンピュータの開発が期待されるとしている。