ニュース
東大ら、有機半導体の分子形状を0.1nm精度で制御することに成功
2020年1月24日 17:49
東京大学、東北大学、大阪大学、筑波大学、広島大学、米スタンフォード大学、産業技術研究所(産総研)・東大先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ、物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(WPI-MANA)らの研究グループは、有機半導体単結晶超薄膜が基板に吸着するさいの分子形状を0.1nmの精度で明らかにし、その制御に成功した。
同グループでは、厚さ約10nmの有機半導体結晶超薄膜を大面積に印刷する技術を以前に開発(東大、印刷で作れる厚さ約10nmの有機半導体単結晶膜ウェハを開発参照)している。この技術で作製された有機半導体結晶超薄膜は、電子の動きやすさで半導体の性能を示す移動度が平均で10平方cm/Vs以上を達成し、実用化が可能な性能を有していると示されている。
印刷によって基板上に半導体インクが塗布されると、インクの表面に薄膜が形成され、インクの乾燥とともに基板に貼りつく(物理吸着)。この薄膜中では、1平方cmあたり100兆個を超える分子が自ら集合して高品質な単結晶を形成する。これら分子1つ1つの形状は電子の輸送に影響を与えるのだが、精密な計測が困難だった。
今回同グループでは、有機半導体単結晶の単分子薄膜を印刷で作製し、物理吸着させた薄膜に対して、X線の反射や吸収を利用した気密計測を行ない、分子形状の解析を試みた。
その結果、基板界面の分子形状を0.1nmの精度で計測することに成功。基板に薄膜が物理吸着すると、単結晶に存在するすべての分子の形状が同様に変化することが世界ではじめて確認された。
加えて、この分子形状の変化は、1分子層(厚さ4nm)からなる膜のみで観測されており、薄膜の厚さによって物理吸着時の分子形状の変化を抑制し、電子状態を変化させると、移動度が40%以上改善されることも確認された。
有機半導体は分子骨格の特性上、分子の形状は変化しないと考えられており、高性能化には分子結晶自体を最適に設計する手法が一般的だった。しかし、今回の研究結果はそれを覆すもので、半導体作製時の異種材料界面の制御などといった新たな手法を用いた有機半導体材料の高性能化や高機能化につながるとしている。