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アルバルク東京、バスケットボールロボット「CUE3」を4月10日にお披露目
~ほかのトヨタロボットともコラボ
2019年4月1日 16:03
B.LEAGUEに所属するプロバスケットボールチーム「アルバルク東京」は、AIバスケットボールロボットの「CUE3(キュースリー)」を4月10日(水)にホームアリーナである「アリーナ立川立飛」で行なわれるサンロッカーズ渋谷戦でお披露目すると発表した。
アルバルク東京はトヨタ自動車男子バスケットボール部を母体としており、同日は「トヨタロボットデー」として、トヨタ自動車が開発したヒューマノイド「T-HR3」や生活支援ロボット「HSR」とコラボしたパフォーマンスを披露する。「CUE3」のハーフタイムショーだけでなく、チアリーダーとのパフォーマンスや試乗会なども実施し、アリーナ全体でロボットとスポーツの融合や、新しいバスケットの魅力を発信する。
4月1日にはトヨタ府中スポーツセンターで先行プレス公開が行なわれた。ロボットのデモのほか、安藤誓哉選手と馬場雄大選手とのスリーポイントシュート対決や身体能力比べのパフォーマンスが披露された。
スリーポイントシューター「CUE3」とは
フリースローをするロボット「CUE3(キュースリー)」は身長204cm、体重76kg。モーターの数は21。くるぶしとひざはダブルモーター構成で速度を上げている。電源は外部電源。胸部の赤外線センサーとカメラを用いて、バスケットボールゴールの白枠を認識して、位置を決めてシュートを打つ。
背番号は93、ポジションはSG(シューティングガード)。「狙ったシュートは100%外さない。CUE2の想いを引き継いだスリーポイントシューター」だとされている。名前の「CUE」には「きっかけ」という意味が込められている。
開発したのはトヨタ自動車 未来創生センターAIアスリートロボット開発グループ。初代「CUE」は、もともとはトヨタ自動車の社内有志団体である「トヨタ技術会(通称TES:Toyota Engineering Society。1947年発足、会員数3万人)」で企画・開発された。当時の開発メンバーは17名。漫画「スラムダンク」のなかでの主人公のセリフにヒントを得て、強化学習でアームの軌道を最適化するための素材としてバスケットボールのシュートを選んで企画された。当時の開発ではシミュレーションで20万本、実機で300本のシュートを行なったという。
初代「CUE」は2017年のTESのイベント「わくわくワールド」で一般公開されて終わる予定だった。しかしながら2018年3月にアルバルク東京の試合のハーフタイムショーで、アルバルク所属の選手としてパフォーマンスを披露したところ話題となり、2020年までの予定で継続開発されている。今後も半年に1度くらいのペースで進捗を公開していく予定で開発が進められているという。2018年11月に初代にはあった台座部分をなくし、出力を上げた「CUE2」が公開され、スリーポイントシュートを決めた。
今回の「CUE3」はそのさらなる改良版で、開発期間は約半年。アクチュエータの減速比を見直し、電圧も48Vから60Vに上げ、ボールをリリースする瞬間の0.3秒間だけ大電流を流せるようにして、飛距離を伸ばした。
また、左手上に置いたボールを右手に持ち替えてシュートできるようになったほか、シュートの種類の投げ分けもできるようになった。両足裏にはメカナムホイールを2つずつ入れて、ゆっくりとだが自力で移動したり、微妙な位置調整が容易になった。現在の開発体制は8名。主たる開発場所である愛知県豊田市の広瀬工場の技能員らによる基板・配線・外装製作の技能も投入されているとのこと。
スリーポイント対決ではロボットが勝利
お披露目で行なわれたスリーポイントシュート対決では人間の選手一組とロボットが6本ずつシュートを行ない、4対3でロボットが勝利となった。対戦した安藤誓哉選手と馬場雄大選手は、最初はトヨタのパーソナルモビリティ「Winglet」に乗って登場。T-HR3と握手してからのCUE3との対戦となった。
対戦後は「前回よりも成長が見られる。このまま成長を続けてほしい」、「今後どれだけ動けるようになるか。今はまだ我々のほうが分がある」と感想を語った。プロ選手の目から見ても「CUE3」のシュートはスナップが強く、手先からの弾道がきれいに見えるという。
2020年、スリーポイントコンテスト出場が目標
いっぽう、開発チームリーダーのトヨタ自動車 野見知弘氏は、ロボットがシュートを失敗したのは「ショックだった」と語った。じつは練習では、ほぼ百発百中で成功していたそうで、「まさか本番で外すとは」と苦笑した。
ロボットは、シュート自体は毎回ほぼ正確な軌道で打つことができる。ではなぜ失敗することがあるのかというと、ボールのちょっとした置き方次第で、ボールの軌道が変化してしまうのだという。ボールの縫い目のちょっとしたおうとつがリリースのときに引っかかるかどうかで軌道が変わってしまうのだそうだ。今後は、どんな持ち方でも対応できるようにするよりは、むしろほぼ同じボールの持ち方になるようにハンド部分を改良していくとのことだ。
なお人間の選手の場合にも同じようにボールの持ち方に繊細な注意を払うのかという質問に対しては、「リリースする前の『クッ』とハマる感覚」はあるが、それは身体に染み付いたものなので試合中はそこまでは気にしていないとのことだった。
「CUE3」では150万回のシミュレーション、200回以上の実投を行なって軌道を最適化したという。今回、色々なパターンのシュートにチャレンジしたのは、学習効率が上がったためだとのこと。
2020年の目標は、スリーポイントコンテストに出ること。そのためには1分間に25回、5カ所からボールをシュートしなければならない。そのために、ロボットが自分でボールを拾って、高速に、次から次へとシュートするようにできることを目指している。現状のロボットではまだまだ足らない部分が多いが、今後も定期的に情報発信していくという。野見氏は、まずは「4月10日にはバシッと決めたい」と語った。
ほかのトヨタのロボットたち
「T-HR3」は2017年の「国際ロボット展」に出展されたトヨタのヒューマノイドロボット。身長154cm、体重75kg。トランペット演奏、バイオリン演奏ロボットに次ぐ第3世代目にあたる。全身の自由度は32+10指。そのうち29関節を独自開発のトルクサーボモジュールでトルク(力)制御しており、周囲の人やものにあたってもバランスを維持する全身協調バランス制御を実現している。またマスター操縦システムを使って遠隔操作することができる。
今回は、マスター操縦システムを使って「HSR」にボールを渡したり、選手と一緒にさまざまなポーズをとるなどして全身の運動制御技術をアピールした。4月10日のイベントではこのほかダンスを披露する予定だ。
「HSR(Human Support Robot)」は全方位台車と一本腕を持つ生活支援ロボット。重量37kg、高さは100~135cm。長さ60cmの腕は基部が上下にも動く。重さ1.2kg以下の物体を持つことができ、物を拾ったり運んだりすることで、高齢者施設などで介助や自立をサポートするほか、開発環境にROSを採用しており研究開発プラットフォームとして用いられている。
今回は遠隔操作によって、バスケットボールを「T-HR3」から「CUE3」に渡す役割を担った。
4月10日にはロボットによる公式応援ソングのダンスも披露
4月10日のイベント詳細は下記のとおり。今回の記者会見では披露されなかったパフォーマンスも行なわれる。具体的にはアルバルク公式応援ソング「フレフレ」を、ヒューマノイドロボット「T-HR3」がチアリーダーと共に踊り、観客にレクチャーするほか、モビリティの体験試乗などができるとのこと。ダンスはかなりの完成度で、見た人はみんな驚くものになっているという。
・4月10日(水)19:05 TIPOFF
アルバルク東京 vs サンロッカーズ渋谷
アリーナ立川立飛
内容
・ハーフタイム:
進化した「CUE3」のシュートチャレンジ及び、トヨタ自動車が開発したロボット(T-HR3、HSR)とのコラボレーションパフォーマンス
・プライムタイム:
アルバルク東京 2018‐19 SEASON 公式応援ソング『フレフレ』を、T-HR3とチアリーダーが共にレクチャー
・コンコース:モビリティ体験試乗会、展示コーナーなど