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マザーボードのフェーズの話
2018年11月9日 06:00
CPU VRMって何?
CPU VRMの役割
・電源ユニットが供給する電圧をCPUが必要とする電圧に変換する回路・PWM方式で制御されている
PCが内蔵する電源ユニットは家庭用交流電源(日本ならAC100V)をPC内部で使用する直流電源に変換し、マザーボードにはDC12V、5Vそれに3.3Vの電圧を供給している。現在のCPUの動作電圧は1.5V以下であり、電源ユニットから供給される電圧とは適合しない。そこでDC12VをCPUが動作する電圧に変換するためにVRM(Voltage Regulator Module)が用いられる。
現在のCPUでは、個体ごとにVIDという電圧が設定されており、この値をUEFIが読み取って動作する。CPUを定格で動作させるだけならVRM回路は小規模でよいが、発熱の低減を狙ったり、オーバークロックへの対応を謳ったりするマザーボードではより大規模のものがある。
CPU VRMの基本構造はスイッチングレギュレータと呼ばれる回路だ。電流量が変化しても安定して任意の電圧を供給するため、PWM(Pulse Width Modulation)という制御方法を使い、スイッチング回路をON/OFFする時間の比を変えることで出力電圧を調整する。たとえば、電流が増え電圧が低下しそうになるとスイッチがONの時間を増やし、電圧を低下させずに電流を増やす。このスイッチの働きをするのがMOSFET(Power MOSFET)と呼ばれる部品である。
マルチフェーズとは
マルチフェーズ回路の特徴
・大出力化できる・負荷変動時の応答性が向上
・部品数の増加で高価になる
・変換効率は大差なし
CPU VRMの大半はその回路構成からマルチフェーズ同期整流回路と呼ばれる。同期整流はスイッチング回路で現在主流の方式で、変換効率の高さが特徴だ。マルチフェーズとは、この同期整流のスイッチング回路が複数並列されたもの。1つのスイッチング回路を1フェーズとし、このフェーズ数が多くなると1つあたりのスイッチング回路がONになる時間を短くできることから、1回路あたりの出力は小さくてよく、なおかつ回路全体としては大きな出力に対応できる。
最近のCPU VRMは出力電圧は1Vでも電流は100Aになったりする。Power MOSFET単体の大出力化にも限度はあるし、仮に実現できたとしても大電流を1つのスイッチング回路で流すのでは発熱も大きくなるし、応答性も悪化する。
応答性とは、CPUの負荷変動に応じて出力電流を調整する能力のことで、電源のキモとなる部分である。負荷が増えると、当然ながら多くの電流が必要になる。どんな電源でも高い負荷がかかると電圧低下が起きるのだが、応答性が悪いとその時間が長くなり、装置の動作に悪影響が出る。さらに、負荷が減ってからも大きな電流を流し続けて、電圧が上がり過ぎて装置を壊すということもある。VRMのマルチフェーズ化によって、応答性を確保しつつ大出力化にも対応できる。
VRMを制御するICをPWMコントローラと呼ぶが、最近のものは内部処理がデジタル化されていて、出力電圧を細かく調整することはもちろん、負荷変動に応じて動作させるフェーズ数を調整したりして、マルチフェーズ電源を効率よく利用できる。高機能な部品で構成されたVRMはこのようにメリットが多いが、その分回路構成が複雑で高価になる。
最近のVRMの実装
最近の動き
・Z390マザーでは10フェーズを超えるCPU VRMが一般的に・それに伴い、フェーズダブラー採用製品も増加中
発熱などの問題からCPUのTDPは一定の値に抑制されている。2010年頃までのマザーボードではスペック競争的な意味合いでフェーズ数を増やした製品も見られたが、最近はオーバークロック向け製品を除けばハイエンドマザーボードでもフェーズ数を競うようなことはなくなっていた。
しかし、8コアモデルがラインナップされる第9世代Coreシリーズが登場したことで、またCPU VRM競争が加熱し始めているようだ。95WというTDPの範囲で動く定格時はおとなしいが、8つものコアをオーバークロックし高いクロックで動かすには電源の大出力化が必要ということで、ハイエンドマザーボードは、フェーズダブラーを使って10フェーズ以上のCPUコア電源を構成した製品が主流となっている。
フェーズダブラーは各フェーズのPWM信号のタイミングを、さらに2つのスイッチング回路のタイミングに合わせた信号に作り直して出力している。これにより、たとえば6+2フェーズを制御可能なPWMコントローラを用いて、12+2といったフェーズ構成のCPU VRMを実装することが可能になる。
大出力化を必要とするユーザーは一握りだが、応答性の向上は安定動作につながるため、一般ユーザーにもメリットはある。