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こんなところに増えたコアが効く

~【2018年度版】マルチコアCPUはこう使え!

TEXT:加藤 勝明

CGレンダリングでは効果バツグン

 Core i9-9900Kのような多コアCPUのパワーがもっとも輝く用途の1つがCGのレンダリングだ。処理の内容的にマルチスレッド化しやすく、あるスレッドの処理が別のスレッドの結果を待つような複雑な処理も少ないからだ(逆にマルチスレッド化しにくいのはゲームのような処理)。

 そこでCGレンダリング系ベンチでCore i9-9900KとCore i7-8700Kの処理時間を比較。1枚絵のみの処理でも、Core i9-9900Kのほうが圧倒的に処理時間が短い。数年前はXeonクラスのCPUでないと実用的でなかったレンダリングも、8コアメインストリームCPUの登場で一気にハードルが下がった。3DCG制作には即効くCPUと言える。

プロも使うレンダラー。CGの分野ではレンダリングだけ行なう専門のツール“レンダラー”がある。「V-Ray」はプロ向けレンダラーの一つだが、このコア部分を利用しているのが「V-Ray Benchmark」だ
CPUは全コアフル稼働。CGレンダリング系処理はスレッドを分割しやすいため、コア数の多いCPUでも全コアフル稼働になる。むしろコアをフルに使わないソフトのほうがめずらしい
モデリングから出力まですべてカバー。プロ向けCG作成ソフトは1本数十万するが、「Blender」は無償で利用できるのが強み。これ1本でモデリングから最終的なレンダリングまですべてカバーできる。公式ブログで公開されている「Cycles Benchmark」のレンダリング時間を比較した
効かないソフトも。内容は3Dモデリングでも「VRoid Studio」のようにUnityベースで作られたアプリの場合は、CPU占有率は非常に低い。リアルタイム性を高めるため描画処理をCPUよりもGPUに依存するからだ。もちろん凝ったモデリングになれば負荷は高まるが、GPUパワーのほうが圧倒的に重要になる。

ゲームなら8コア&5GHzが活きる

 PCゲームのフレームレートに大きく影響するのはCPUのクロックだ。1秒間により多くのフレームを描画しようとすれば、CPU側でもゲームやドライバの処理を画面描画と同等以上のスピードで回す必要がある。2コアまで最大5GHzで動作するCore i9-9900Kの強みはPCゲームで最大に発揮されるのだ。

 そして近年のゲームではCPUのマルチスレッド化も徐々に進んでいる。とくに最新グラフィックス技術を用いた重量系ゲームであるほど、CPUコアを均等に使わなければ処理が間に合わないからだ。マルチスレッド化の進んだゲームとしては「アサシン クリード」最新作や、DirectX 12ベースの「Forza Horizon 4」などが挙げられる。

 ここでポイントになるのは、画質を落としてもCPU占有率が必ずしも下がるわけではないこと。画質を下げてフレームレートが上がると、前述のとおりCPU側の負荷も上がる。フレームレート制限などで対処することもできるが、とくに高リフレッシュレート液晶を使うならCPUパワーは必要なのだ。

最新人気タイトルはCPU負荷も高い。グラフィックスの描き込みに加えリアルなモーションの組み込み、巨大なデータ量などを扱う最新ゲームはCPU負荷が高くなる傾向にある。直近の話題作「アサシン クリード オデッセイ」は物理8コアをまんべんなく活用する低スペックマシン泣かせのゲームだ
画質“最高”。最高設定ではGPU側の負荷が大きいためCPU占有率は低めになる。ただモーション処理の多い戦闘シーンなどではCPU占有率が一気に上ることもある
中設定ではGPUの負荷が下がってフレームレートが上がるが、その分CPUも次々にデータを捌く必要が出てくるため、ここではCPU占有率は上昇した
レーシング系も高負荷傾向。レーシング系ゲームはキャラのアニメーションがあまり発生しないが、最新タイトル「Forza Horizon 4」ではマルチスレッド処理化が進んでいる。オープンワールドの要素もあることに加えDirectX 12専用のゲームであることも一因のうちだ
画質ウルトラのCPU占有率。周辺にある別の車の数でもCPU占有率は変化するが、ほとんど存在しないシーンにおいて8コア16スレッドのCPUでも各コア50%程度占有する
画質をミディアムに落とすとフレームレートが上がる分CPU負荷も上昇する。とくにGeForce系は処理の仕様上、フレームレートとCPU負荷は連動するのだ

検証環境

マザーボード:ASUSTeK ROG STRIX Z390-F GAMING(Intel Z390)、メモリ:G.Skill F4-3200C14D-16GFX×2(PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB×4 ※PC4-21300で動作)、ビデオカード:NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti Founders Edition、SSD:Western Digital WD Black NVMe WDS100T2X0C[M.2(PCI Express 3.0 x4)、1TB]、OS:Windows 10 Pro 64bit版

告知

この記事の続きは発売中のDOS/V POWER REPORT2018年12月号でお読みいただけます。12月号の特集は「CPU、8コア標準時代、到来」。Intelの第9世代Coreシリーズの登場により、2007年から2016年まで長きにわたって4コアが標準だったメインストリームCPUのコア数は、2年余りで一気に2倍の8コアに。本格的なメニーコア時代の到来です。8コアのCore i9-9900K、i7-9700Kの登場でPCの自作はどう変わるのか。さまざまな角度から解説、検証を行ないました。