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阪大、高性能で低毒な太陽電池素材を開発

 科学技術振興機構(JST)のもと、大阪大学 大学院工学研究科は9月6日、光電素子材料として高品質なビスマス系薄膜を作り出す新たな薄膜生成プロセスを開発し、光応答性を従来よりも6~100倍に高めることが可能になったと発表した。

 今日、光を電気エネルギーに変える光電変換素子は、高価なものから有毒なものまでさまざまあり、安価、低毒、安定で、なおかつ高性能な新規光電変換材料が世界中で研究開発されている。

 次世代の材料として低毒性元素のビスマスが期待されているが、硫化ビスマス(Bi2S3)の多結晶薄膜作製において、素子性能に影響する「膜平坦性」と「光電気特性」の両立が困難であり、結晶サイズが大きく平坦な薄膜の作成法が求められていた。

 今回、大阪大学研究グループは、ビスマス(Bi)を含む化合物と硫黄(S)を含む化合物を前駆体とする溶液調整の検討からはじめ、プロピオン酸を溶媒として前駆体をスピンコートして熱処理することで、平坦で均一なアモルファス性の薄膜を形成できることを発見。さらに、希釈した硫化水素ガス(H2S)雰囲気下で熱処理するとことで硫化・結晶化が起こり、光電気特性と膜平坦性を兼ね備えた高品質な硫化ビスマス薄膜を形成できた。

 この方法で作成された硫化ビスマス薄膜は、ビスマスと硫黄の割合が理想的な2:3に近く、硫黄の結合が層構造を形成して基板に平行に積み上がっていることを確認。従来の方法で作られた硫化ビスマス薄膜に比べて、素子の光応答性能が6~100倍に向上したほか、大気中(室内)で3カ月放置したあとも性能を維持しており、長期安定性に優れていたという。

 この成果は、同様の開発プロセスでほかの硫化物(カルコゲナイト)にも適用できるなど、さらなる低毒性化合物太陽電池材料の探索に有用としており、今後も優れた次世代太陽電池材料を開発する予定。