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MIT、低コストなペロブスカイト太陽電池の変換効率改善の仕組みを明らかに

ペロブスカイト(灰チタン石)による太陽電池

 米マサチューセッツ工科大学(MIT)は2月7日(現地時間)、低コストで柔軟性と信頼性を備えた太陽電池材料のペロブスカイト(灰チタン石)において、特定の素材を組み合わせることでエネルギー変換効率を高められる、メカニズムの解明に成功したと発表した。

 従来、太陽電池の素材にはシリコンが用いられ、1,400℃以上の高温で製造するような高価な装置が必要であることなどから、コスト面での問題がある。

 一方、ペロブスカイトでは、低コストな装置を使い、100℃以下の溶液で製造可能。また、ペロブスカイトは、プラスチックといった柔軟性の高いさまざまな素材上で被膜化でき、厚みや堅さのあるシリコンウェハでは不可能だったさまざまな新しい使い方ができる。

 ペロブスカイトは3部分からなる結晶構造となっており、それぞれの部分はさまざまな元素や化合物で構成できることから、かなり広範な構築を可能とする。研究者らは以前、ペロブスカイトに特定のアルカリ金属を混合することで、太陽エネルギーの電気変換効率が約19~22%改善することを発見したが、当時はその理由を説明できなかった。

 今回、素材の詳細マッピングに高解像度のシンクロトロン蛍光X線分析を利用することで、ちょうど髪の毛1本の幅の1,000分の1のビームで計測できるようになり、変換効率が改善されるメカニズムが解明可能となった。

 解析によれば、セシウムやルビジウムといったアルカリ金属を添加することで混合物の均質化を助け、さらにエネルギー変換効率が高められることがわかった。また、特定の濃度を超えて添加した場合、金属が凝集してしまい、導電性を妨げしまうということが発見された。そのため、最高性能を引き出すためにはスイートスポットを見つける必要があることもわかった。

 前述のとおり、シリコンよりもコストに優れるペロブスカイトだが、現状では変換効率や寿命の面でシリコンに劣っており、さらなる改善が必要とのこと。ただし、異なる金属を与えた場合のペロブスカイトの構造変化や性能の変化は解明が進んでおり、理論的には最大で31%の変換効率を達成できるため、現時点での23%からかなり改善の余地があるとしている。

 最高性能を引き出すには数年以上を要するが、すでに2社がペロブスカイトを使った生産ラインを作っており、来年以降には最初のモジュールは販売開始予定という。これらの新モジュールのいくつかは、小さく透明で色鮮やかな太陽電池となっており、建物の正面部分に組み込めるようにデザインされている。

 ひとたび、大規模な製造、変換効率、耐久性といった問題が解決されれば、ペロブスカイトは再生エネルギー産業における主役になり得、これまでよりもはるかに早く太陽光発電を広められるだろうとしている。