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千葉工大fuRo、変形する搭乗型ロボット“Ridroid”「CanguRo」
~身体を拡張する人機一体の乗り物を目指す
2018年7月4日 19:12
千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター(fuRo)とプロダクトデザイナーの山中俊治氏は2018年7月4日、変形する搭乗型・知能ロボットRidroid(ライドロイド)シリーズ「CanguRo(カングーロ)」を開発したと発表し、記者会見を行なった。
パートナーロボットとして人をアシストし、移動するさいには乗り物に自動変形する。シリーズ名の「Ridroid」は、Ride(乗り物)+Roid(ロボット)を組み合わせた造語。「CanguRo」はイタリア語でカンガルーを意味する。
全長は550mm(ロイドモード)/750mm(ライドモード)。幅は440mm。重量64kg。時速10km。バッテリはリチウムフェライト(52.8V)。駆動時間は公開されていないが現時点では短時間に留まる。構成はインホイールモーターによる前輪駆動、後輪操舵。搭載されているセンサー類は3次元レーザーセンサー、広角カメラ、距離センサー、慣性計測装置、床反力センサーなど。
fuRo独自の高速処理が可能なSLAM技術「scanSLAM」機能により、自己位置同定と地図生成を行い、自律移動することができる。レーザーセンサーを使った人への追従移動や、タブレット端末を使った操作も可能。ライドモードでは障害物検知による自動ブレーキ(スマートストップ)によって停止することができる。
また乗車した人の体幹移動をサスペンション部に内蔵したフォースセンサーで感知し、二足歩行ロボットなどに用いられるZMP規範を用いて最適な姿勢にボディを傾けることができる。これによって、まるでスキーやスケートのように身体の動きで小回り旋回を実現できるという。
「人と馬」のような関係を構築できる機械生命体が目標
fuRo所長 古田貴之氏は、「AI時代のイノベーティブな乗り物」がプロジェクトテーマだと話を始めた。乗り物は進化したのか、人と乗り物との関係は変わっていないのではないかと述べ、乗り物をA地点からB地点への移動機械から再定義できないかと考えたと述べた。人と馬は時に乗り物であり、パートナーでもあった。そのような機械生命体を生み出したいと考えたと述べて「RidRoid」を紹介した。
搭乗しているときは、振動スピーカーによるボディソニックを使って、モーターの回転数をまるで馬の鼓動のように感じることができるという。歩行者の空間に寄り添えるサイズになっており、タブレットやスマホから呼べばやってきてくれる乗り物だという。ハンドルにはアクチュエータが入っていて、操作の重さをコントロールできる。
使われている技術はほかのロボットにも使えるように、ハードウェア、ソフトウェアともにユニット化されている。あらゆる乗り物を知能化できると今回の技術統括を行なったfuRo 主席研究員の大和秀彰氏は語った。
とくに小型軽量な駆動ユニットは、日本トムソン株式会社と共同開発したもの。「耐久性そのほかの試験を経て、使えるものになってきている」と大和秀彰氏は述べた。
2015年にアイシン精機とfuRoが共同開発した「ILY-A」に用いられていたモーターと減速機は2kgくらいのサイズだった。日本トムソン株式会社が新規に開発した今回の駆動ユニットは同社が得意とするベアリング技術を活用した小型のサイクロイド減速機を用いてモーターと減速機を一体化したことで、ほぼ同等の性能で1kg前後まで小型化できた。これによって人機一体を目指す乗り物にとって重要と考えたインホイールの構成を取れたと大和氏は述べた。
フレームに駆動ユニットとセンサーをつけるだけで、さまざまなものをロボット化できるという。なお、日本トムソン株式会社 取締役執行役員の笠原信氏によれば、このユニットはまだ試作品であり、今後の製品化などの予定は未定とのこと。
古田氏は最後に、「RidRoid」はシーンに応じて変形する「未来のパートナー」であり、ふだんは生活を支援するパートナーであり、ちょっと離れた場所に行くときには乗り物として乗り回せる機械としたいと述べた。
「自分の足が電動駆動になったような乗り物」としてデザイン
プロダクトデザイナーの山中俊治氏は、fuRoが既に開発していた「ILY-A」をよりアクティブにすることからスタートし、さらに踏み込んで、人間の体により近づき、人の身体を拡張するような乗り物ができないと考え、大和氏らと議論を重ねて、「2つの前輪のあいだに足を載せることで、自分の足が電動駆動になったような乗り物」としてデザインを行ったと述べた。
山中氏は「構造自体がわかりやすく美しく、それ自体が人との関わりがよくわかるような表現を意識した」という。フレーム構造それ自体がデザインとなるようなスタイリング、機能美を重視したという。1つ1つの部品が磨き上げるようにして設計とデザインが同時になされているのが「RidRoid」の特徴であり、あらゆるディテールに美的感覚が込められているという。
米国「ジャパンハウス」でデモ
「CanguRo(カングーロ)」は2017年8月15日から米国・ロサンゼルスで開催される外務省の展示企画「ジャパンハウス」でデモを行なう予定。また、8月17日から10月10日に開催される山中俊治企画展「Prototyping in Tokyo 先導するデザインの制作絵巻」でもデモを行なうとしている。
実際に乗ってみた
実際に乗ってみた。基本的な動きは簡単で、ハンドルを握って手前にひねると前進、ブレーキをかけると止まる。後進はハンドルをいったん引き出してひねる。ただし現在はプロトタイプということで、かなりピーキーな反応だった。事前に言われていたので気をつけて操作したものの、いきなりグイッと加速する。今回開発された小型駆動ユニットにそれだけのパワーが十分にあるということでもある。
高速ターンをしてみようと思ったのだが、ロボット本体が64kgとかなりの軽量であり、かつ、なまじっかサドルに座っているせいか、「セグウェイ」や「ウィングレット」などのように機械を信じて体を任せることが難しく、慣れが必要のようだった。今後、初心者向けモードや熟練者モードなども導入を検討するとのこと。また、部材の剛性などについてもまだ改良が必要のようだった。