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EA開発の「Battlefield」AIのプレイが人間と同等の領域に

Experimental Self-Learning AI in Battlefield 1

 Electronic Arts(以下EA)は22日、同社のFPSシューター「Battlefield 1 (以下BF1)」をAIにプレイさせる研究を行なっていることを明らかにした。

 これは同社の「Search for Extraordinary Experiences Division (SEED)」の研究の一環として、GDC 2018で発表されたもの。2年前に設立されたSEEDは、同社の複数の開発スタジオを跨ぐ研究部門で、実験的技術の開発などを行なっている。

 ニュースリリースにおいて、SEEDに所属する同社テクニカルディレクターのMagnus Nordin氏は、SEEDではゲームのようなインタラクティブなエンターテイメントに、3~5年後程度の近未来に影響を与える技術について研究を行なっていると説明している。

 今回公開されたAIプレイヤーは、人間のプレイヤーと同様に複雑なコントローラ操作を行なってプレイしており、人間と同じ1人称視点とミニマップの情報だけをもとにプレイを行なっており、「Counter-Strike: Global Offensive」や「Quake III: Arena」といった旧来のFPSでお馴染みのBOTとは異なる。

1人称視点の映像そのままでは情報が複雑すぎるため、AIのためのアシストとしてヘルスパックを緑、弾薬を黄色の立方体として表示している

 Nordin氏によれば、AIは深層学習を用いたもので、まず基本的なアクションを学習させるため、人間のプレイ30分間の操作を教師に模倣学習を行ない、その後、訓練には並列マシン上で、6日間BOTとAI自身のいくつかのバージョンを相手に訓練を行った。

 プレイ時間に換算すると300日間に相当するため、同氏は、AIは特段上達が早いというわけではないと語っている。

 こうして学習を積んだAIプレイヤーは、残弾数やHPが低い場合など、特定のトリガーに応じて行動を変えるよう教えられており、基本的なゲームプレイの熟練度は高いという。

 ただしBF1は、チームワークやマップの把握、クラスや武器、乗り物に精通しているかなど、多くの戦略的要素があるため、同氏は、それらに対応するには、AIの機能をさらに拡張しなければいけないと述べている。

 それでも、人間のプレイヤーを交えたテストプレイを行なったところ、参加者の何人かは、AIプレイヤーと人間を正確に区別できるようにマーキングして欲しいという要望を挙げてきたことから、現時点でもAIが人間のような自然なプレイを行なえているとした。

 映像の終盤で、AIがその場で回り始める奇妙な動作をしているが、これについては、現状のAIプレイヤーは長期的な計画を立てられないためだと説明している。

 敵プレイヤーのように、「目的地」を発見している場合には、ただしく動作するものの、視界に何もない場合に、目標を見つけるためにその場で回り始めるのだという。

 本来は、地図上や隠れている敵を探しにいくといったより良い戦略が存在するが、そこまで賢くない。ただし、より学習を積んでいくことで、その場で回りはじめるような不可解な行動は減っていくとの見解を示している。

 このプロジェクトについて同氏は、短期的な目標として、開発元のDICEでテストプレイに活用することで、より多くのクラッシュレポートを収集し、多くのバグを発見するのに役立てたいとしている。

 将来的には、同氏は深層学習技術の成熟にともない、人間とのプレイから経験を積み、時間をかけて適応・進化する、“真のインテリジェントなNPC”として、自己学習型AIがゲームの一部になることを期待しているという。