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リチウムイオン電池の寿命を復活させる新再生手法
2018年1月30日 14:47
米カリフォルニア大学サンディエゴ校は25日(米国時間)、寿命を迎えたリチウムイオン電池の新たなリサイクル手法を開発したことを発表した。
リチウムイオン電池は、スマートフォンやノートPCなどで利用されている、リチウムイオンの陽極と陰極間の移動を利用した二次電池。リチウムやコバルトなどの希少金属がカソード(陰極)、グラファイトなどがアノード(陽極)の材料として使われている。
リチウムイオン電池が消耗すると、カソード材料のリチウム原子の一部を失ってしまい、カソードの原子構造も変化することで、イオンを出し入れする能力が低下する。
開発された新たなリサイクル手法は、カソード材料(リチウムコバルト酸化物)を回収したあと、元の状態に復元するという。対象となるカソードは、ほとんどの電気自動車に使用されている、ニッケルやマンガン、コバルトを含む「NMC」となる。
まず、使用済みリチウムイオン電池からカソード粒子を回収し、リチウム塩を含む高温のアルカリ性溶液中でカソード粒子を加圧し、800℃まで加熱する。
その後、時間をかけてゆっくりと冷却する焼きなまし(アニール)処理を行なうと、またカソードが電池材料として利用できるという。なお、前述のアルカリ性溶液は、カソードの復元処理に使いまわせる。
研究者らが、この再生した粒子から新しいカソードを作製し、実験を行なったところ、オリジナルと同じエネルギー貯蔵容量、充電時間、寿命を持つことが確認されたという。
Chen氏によれば、このリサイクルプロセスは、新品のカソード粒子を作るのと本質的に同じものであり、使用後の材料も、同じ処理を行なうだけで元に戻せることを示しているとする。
1kgのカソード材料をリサイクル処理するには、ガソリン約4分の3カップ分に相当する5.9MJ(メガジュール)のエネルギーを消費するが、現在開発中のほかのリチウムイオン電池のリサイクル処理では、少なくともその2倍のエネルギーを消費してしまうため、優位性があるとしている。
同校のナノエンジニアリング教授であるZheng Chen氏は、「電気自動車の台頭などにともなって、何百万トンものリチウムイオン電池が廃棄される見込みであるほか、リチウムやコバルトなどの貴重な資源のさらなる採掘が行なわれれば、それらが水質/土壌汚染につながってしまう」と述べ、使用済み電池を継続的に回収し、再利用ができれば、そういった環境への損害や廃棄を防げると語っている。
現状では、使用済みのリチウムイオン電池のうち、リサイクルされているのは5%未満に過ぎないという。
またChen氏は、「リチウムやコバルト、ニッケルの価格は大幅に上昇しており、そういった高価な材料を回収することで、電池価格の低下にもつながる」と述べている。
将来的には、産業規模でこのプロセスを最適化することが目標となるため、研究チームはアジアの電池会社と協力する予定。
とくにカソードの回収工程について、現状では手作業でバッテリから取り出さなければならないため、この工程を単純化し、プロセス全体を自動化して工業的に実現できるようにしていくという。
また、NMCに加えて、あらゆるタイプのカソード材料をリサイクルできるようにリサイクルプロセスを改良し、すべてのカソードで利用できる一般的なリサイクルプロセスにすることを目標としており、使用済みアノードのリサイクルプロセスについても開発に取り組んでいくとしている。