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Pepperがアップデートで高速化。Microsoft Azureによる業務分析にも対応

~ソフトバンクロボティクス清掃ロボット業界参入も発表

 ソフトバンクロボティクス株式会社は11月20日、「Softbank Vision Fund」が出資した米Brain Corporationの技術を使って清掃ロボット業界に参入することと、法人向けモデル「Pepper for Biz」に関する取り組みを新しく開始すると発表、記者会見を行なった。

 ソフトバンクロボティクスグループ株式会社代表取締役社長兼CEOの冨澤文秀氏は同社のロボット事業が「第2フェーズに入った」と挨拶。ソフトバンクグループは最新技術、差別化されたビジネスモデルを持った企業とコミュニケーションをとって新技術の発掘をしており、ソフトバンクグループ、またはソフトバンクの「Softbank Vision Fund」などから投資を行なっていると紹介。新たなロボットをソフトバンクグループから紹介していきたいと述べて、Brain Corporationとの取り組みを始めると発表した。冨澤氏は「ロボットは日本から世界に向けて広めていきたい分野だ」と考えているという。

発表から2年経った「Pepper for Biz」が進化したとアピール
ソフトバンクロボティクスグループ株式会社代表取締役社長兼CEOno冨澤文秀氏
2018年夏から清掃ロボット事業に参入する

「お仕事かんたん生成2.0」を11月30日にリリース予定、Microsoft Azureで業務分析

ソフトバンクロボティクス株式会社事業推進本部本部長の吉田健一氏

 続けて、ソフトバンクロボティクス株式会社事業推進本部本部長の吉田健一氏が、具体的な取り組みについて紹介した。

 まずはPepperに関する事業の新発表が行なわれた。2015年10月の「Pepper for Biz」(法人向けモデル)発表から2年が経過、いまでは2,000社以上に導入されており、客寄せから業務自動化へと進んでおり、さらに今後は、AIを活用してさらなる業務効率化、業務改善へと進もうとしているとアピールした。

 たとえばホームセンターのグッデイではGoogleの音声認識技術と商品データベースと連携して、探している商品場所を案内している。イオンモールでは「IBM Watson」と連携して、チャットをボットを使った顧客対応をしている。当初は4割弱しか答えられなかったが、いまでは7割程度の質問に答えられるようになっているという。ホテルマイステイズ(Mystays)ではPepper単独ではなく人間のスタッフによるテレプゼンス技術と組み合わせて、Pepperが人と対応している。飲食や小売など、業務別に成功事例を積み上げることができているという。

ホームセンターでの案内
イオンでのチャットボット連携
人と連携してコンシュルジュとしての活用
Pepper活用は3段階目に

 11月30日からは「お仕事かんたん生成2.0」をリリースする。Pepperの反応が速くなり、業界別テンプレートから簡単に設定が可能になった。またMicrosoft Azureを使った顧客のデータ分析が可能になったという。既存の利用者は無償で使える。

 業界別パターンは小売、飲食、金融、自動車、病院など10業種・業界で、合計100パターン。商品紹介、会員登録、クーポン配布、レクリエーション、受付、館内案内などのテンプレートが用意される。Pepperに複数の台詞を設定して顧客体験を向上させる台詞を判定するテスト(A/Bテスト)も簡単に行なえる。

 Microsoft Azureを基盤としており、Pepperの接客業務を数値化しデータを集積・分析・可視化することで、オペレーションの最適化と売上向上を実現できるという。

「お仕事かんたん生成2.0」
Microsoft Azureで分析
10業界に対応してテンプレートを用意

 継続的に向上させていくためにPepper for Bizユーザーのグループをもとにした業界別コミュニティ「パイオニアクラブ業界別研究会」も立ち上げる。たとえば小売、飲食などで事例やKPIを共有。テンプレート自体を発展させていく。業務活用アワードもソフトバンクで立ち上げる。表彰企業には特典として、北京で行なわれる世界ロボット大会の視察ツアーに招待する。

業界コミュニティ、アワードを設立

 吉田氏は「Pepperはソフトバンクだけではなくパートナー企業と一緒に発展させている」と語り、とくにPepperを使った顧客行動データを蓄積し分析するための基盤であるMicrosoft Azureをあげて、日本マイクロソフト株式会社業務執行役員パートナー事業本部コミュニケーションズパートナー本部本部長のの辻純氏を壇上に呼び込んだ。

 日本マイクロソフトの辻氏は、ロボットを顧客との接点に活用して、蓄積・分析、サービス品質を向上させ、ビジネスインパクトをどう生み出すのか、そのサイクルを作り出すためにAzureは有用だと語った。

 具体的にはトレーニングを実施、ロボアプリパートナー with Microsoft Azure認定企業を2018年10月までに30社とすることを目指す。Microsoftとしても、コミュニティを活性化できるよう努めていくと語った。

日本マイクロソフト株式会社業務執行役員パートナー事業本部コミュニケーションズパートナー本部本部長の辻純氏
PepperとMicrosoft Azureとの連携を深める

POS、ホテル向けチャット、医療でのPepper活用

PepperとICカードリーダー、小型プリンタを使って決済までできる「レジ for Pepper」

 続けてほかの技術についても紹介された。ソフトバンク株式会社開発リーダーの窪田和泰氏は、人材不足、訪日外国人増加を背景として「クラウドPOS」というソリューションについて紹介。ロボットアプリ「レジ for Pepper」を導入することで、顧客呼び込み・受注から決済までがPepperだけで完結する。

 決済方法はQRコード、カードリーダを使った非接触型ICカードなどに対応する。注文後は待ち札がPepperの横に設置された小型プリンタからプリントアウトされるので、それを持ってレジカウンターに行くと、商品が提供される仕組み。言語は日本語、英語、中国語に対応する。サービス開始は12月4日から。費用は月額15,000円/ID(税別)。12月初旬からは原宿竹下通りのカルビープラスで先行導入される。

ソフトバンク株式会社開発リーダーの窪田和泰氏
カルビープラスで先行利用される

 ホテル向けソリューションを提供するtripla株式会社代表取締役の高橋和久氏は、Pepperを使ったチャットでの問い合わせサービスを導入する。簡単な質問はチャットボットが答え、それでは無理な複雑な質問は人間が答える。同社のサービスはHISの「変なホテル」のWebサイトなどに導入されている。

 今回のリリースは、「旅前」だけでなく、「旅中」の顧客からの質問に対してPepperが答えるというもの。2018年1月から本格導入する予定。費用は、1セッション対応につき250円となっている。

自動回答できないことは人間が回答
tripla株式会社代表取締役 高橋和久氏

 株式会社フィリップスジャパンの代表取締役社長の堤浩幸氏は、同社は一気通貫のヘルスケアサービスを提供していると紹介。超高齢化、医療の過疎化など医療を取り巻く多くの問題に対して、IoT、AI、ロボティクスを活用しようとしていると述べた。

 とくに注目しているのが潜在患者が多い睡眠時無呼吸症候群(SAS)。同社では9つの病院にPepperを設置しており、SASの啓発に用いているという。Pepperが注意喚起を行なったことで実際に受診を行なった人もおり、予防に活用できているとした。今後さらに活用を拡大し、ヘルスコミュニティの一環としてPepperを活用していきたいと語った。

株式会社フィリップスジャパン 代表取締役社長 堤浩幸氏
全国9カ所の医療機関でPepperを疾患啓発に利用中
Pepperを使うことでSASの可能性が高い人を顕在化できた
中には検診の予約を行なう人も

Brain Corpの技術で自律走行できる床洗浄ロボット事業に参入

ソフトバンク吉田氏の語るロボットの進化

 吉田氏はソフトバンクではロボットの進化は顔(接客)、脚(移動技術)、手(マニピュレーション)の3段階で進むと考えていると述べた。手はもっとも難しいが、移動技術のなかにはいまでもすでに使える段階のものがあるとし、まずはビル内清掃を手がけると発表した。ビル清掃員の平均年齢は52.2歳で、雇用難が進んでいる。Brain Corporationの技術を清掃技術にまずは活用する。

移動を伴う仕事
高齢化し人手不足になっている清掃業界

 Brain Corporationはサンディエゴに拠点を置くソフトウェア会社。Brain Corporationの創業者でCEOのDr. Eugene M. Izhikevich氏は、同社について、Qualcommとソフトバンクの「Softbank Vision Fund」の出資を受けており、屋内移動ロボットの「脳」を作っている会社だと自己紹介した。

 同社は屋内の業務用自律移動ロボットを主なターゲットとした「EMMA (Enabling Mobile Machine Automation)」と呼ぶ自動運転技術を持っている。Softbank Vision Fundからは、7月に1億1,400万ドルの出資を受けている。

 QualcommとDARPAでの研究開発をもとに2009年に起業された当時は、2005年に視床-皮質モデルをシミュレートしたIzhikevich氏の研究をもとに脳型コンピュータの開発を行なうとされていたが、2015年に「BrainOS」というロボット用ミドルウェアを発表し、現在は商用機器の自動化に注力している。今回の清掃ロボットにもBrainOSが用いられている。

ショッピングモールや空港などの床を洗浄しながら移動するロボット
Brain Corporation ファウンダー、CEO Dr. Eugene M. Izhikevich氏
オレンジ色がBrain Corporationによる開発部分
今回のハードウェアは中国ICE社製
中にBrain社製のボードが追加されている

 Izhikevich氏はホームセンターで業務中に自律移動している清掃ロボットの動画を紹介した。顧客が店内に大勢いるなかでも、問題なく自律移動して掃除を続けているという。

Brain Corporationの清掃ロボット

 同社はロボットハードウェアを開発しているわけではなく、あくまで頭脳のソフトウェアを開発している。低速で移動し、止まることがもっとも安全である状況、つまり屋内で使われている。今回のロボットも、ハードウェアは中国ICEが開発している搭乗型スクラバー(床洗浄機)だ。

 ロボットの導入は、まずは人間の清掃員が手動で掃除をし、そのデータを使ってロボットがマップを作り、経路を生成し、清掃を行なう仕組み。環境に変化があったり突然の障害物の出現にも対応する。サーバーとイベントごとにLTE通信しながら移動して掃除を実施する。設定には外部PCなどは必要なく、比較的簡単にルート学習を行なえる点が他社に比べるとアドバンテージだという。

 日本に導入されるのは2018年夏。ソフトバンクロボティクスから、自動運転スクラバーとして発売される。発売予定台数や利用料金は未定だが、米国では500ドル/月でサービスされているという。

最初に人が乗って手動で掃除をする
その後、ルートを自動生成して自律掃除する

Pepperの教育現場での活用も拡充

教育現場に入り込むPepper

 ソフトバンクグループ株式会社CSRグループグループマネージャーの池田昌人氏は、2017年4月から展開している、Pepperを小学校に導入する社会貢献プログラムについて紹介した。17自治体282校で、2,000体のPepperが活用されている。

 全国12カ所でプログラミング授業体験会が行なわれており、今回、Scratchベースの専用ソフトを提供する。2020年度の新学習指導要領に沿ったカリキュラムを展開。プログラミング教育以外での活用として、反復学習用にPepperを活用する。学研のロボドリルをPepper用にアレンジする。英語教材も開発する。2018年4月以降に展開する。

ソフトバンクグループ株式会社CSRグループグループマネージャーの池田昌人氏
専用ソフトウェアを提供
新学習指導要領に沿ったカリキュラムを提供
ログラミング教育だけでなく一般科目でも活用する

 なお同社では「SoftBank Robot World 2017」を11月21日、22日の日程でベルサール汐留で開催する。WebサイトではBrain製自動清掃ロボットのほか、株会社BRAVEROBOTICSの人型から車型へ変形するロボットの展示・実演、Boston Dynamicsのロボットの展示などが告知されている。