ニュース
テレワーク導入で売上2倍という事例も。日本マイクロソフトが「働き方改革週間」を実施
~今後の課題は社員の躊躇の撤廃。カラオケボックスを貸し会議室にする取り組みも紹介
2016年10月17日 18:00
日本マイクロソフト株式会社は、本日10月17日より21日までの1週間、「働き方改革週間」を実施する。過去数年来取り組んできたテレワークなどの柔軟な働き方をさらに推し進めるものだ。
17日に行なわれた会見では、同社代表取締役社長の平野拓也氏が、その狙いやこれまでの実績などを説明した。同社が働き方改革を実践開始したのは2010年。社員がいつでもどこでも仕事をできる環境を構築するのが目的で、技術面だけでなく、人事制度などにも踏み込んだ改革を行なってきた。自社調査によると、2015年までの5年間で、ワークライフバランスは40%、事業生産性は26%改善され、残業時間は5%、女性離職率は40%低減するなど大きな効果が見られたとする。
取り組みは継続的に行なわれているが、意識的に活用するための週を特設している。これまでは「テレワーク週間」という名称だったが、同社事業方針の基幹となるデジタルトランスフォーメーションの一環とすべく、2016年からは「働き方改革週間」へと改称した。それに先立ち、この5月には、就業規則も改訂し、テレワークの利用可能な場所や頻度などの制限を撤廃した。
この取り組みは同社自身が実践するものだが、他の法人や団体にも参加を呼びかけており、2016年は1年前より3割多い833社も賛同、実施する。日本航空株式会社(JAL)もその1つで、大型ディスプレイを使ったコラボレーションデバイス「Surface Hub」を導入し、Office 365やSurface Pro 4などと組み合わせ、ワークスタイルの変革を図る。
テレワークについては、出産、育児などを抱える女性社員からの関心、要望も高いが、先日、資生堂が発表したすっぴんで利用してもメークしたように映像をリアルタイム修正するビデオ会議向けアプリ「TeleBeauty」を日本マイクロソフトでもこの1週間で100名の女性社員が試用する。
また、日本マイクロソフトは、単に参加を呼びかけるだけでなく、Office 365の無料試用版の提供、無性セットアップ、マニュアル提供、事例セミナーの開催といった形で賛同企業への支援活動も行なう。
政府や官公庁との連携も進めており、8月に「働き方改革担当大臣」に就任した加藤勝信氏にも一連の日本マイクロソフトの取り組みについて平野氏自身が説明を行ない、今後もその結果報告を行なうなどノウハウを共有。総務省などが推進する「テレワーク月間」とも連携する。
日本マイクロソフト執行役常務パブリックセクター担当の織田浩義氏は、「テレワークについては時間と場所の柔軟性に目が行きがち。それも重要だが、そういった物理的な面だけではなく、業務の質や、社員の意識が変化し、新しい価値が生まれる。当社がテレワークを推進するのも、“新しい儲け”を生むことができるからだ」と、テレワークによって売上向上という分かりやすい形で効果が得られるとする。
実際、2015年のテレワーク週間参加企業からのアンケート結果では、経費や時間の削減といった効果などのほか、生産性や効率化の向上について、28%が「1割」、15%が「2割」、9%が「3割」と回答し、中には少ない例だが「2倍に向上」と答えた法人もあったという。
具体的な、働き方改革週間に賛同する企業の取り組み事例として、関西を中心に店舗展開するカラオケボックス「ジャンカラ」の取り組みについて、Skypeを使った中継という形で紹介が行なわれた。これは自社でのテレワークの活用ではなく、テレワークの普及を見据えた新たな事業展開の例だ。
ジャンカラでは、日本マイクロソフトの呼びかけに応じて2015年からテレワークに取り組んでいるが、その一環として、カラオケボックスをテレワークしたい人に対して貸し会議室として利用してもらうサービスを試験導入したところ大きな反響があった。
付帯サービスとして、ポケットWi-Fiやホワイトボードの貸出や、通常歌詞や映像を表示するディスプレイをPCの外部ディスプレイとして利用できるようにしている。カラオケボックスと言うと、遊びの場所イメージが強く、その払拭が今後の課題とするが、レシートにも貸し会議室サービス利用の場合に、明細に敢えて「カラオケ利用なし」と印刷するなどの配慮も行なっている。内密な打ち合わせを行ないたい場合にも、カラオケボックスの個室という形態はビジネスでの利用価値は高そうだ。利用料はカラオケの場合の半額となっているが、カラオケと同様に、ドリンクの飲み放題も付く。この働き方改革週間の期間中は、24店舗で2時間無料のサービスも行なう。
一方で、テレワークに早くから取り組む日本マイクロソフト社内でも、この制度に対すて「育児や介護だけに使える」といった誤解や、社員の躊躇があると指摘する。躊躇については実に4割の社員が感じているという。こういった意識、文化、制度面での改善が今後の課題となる。また、その点を踏まえ、他の企業が導入するには、なるべく早期に行なった方がいいとした。