実録! 重役飯
20代は米国で武者修行。東欧でも試練に直面。将来は学校を建てたい~日本マイクロソフト平野拓也社長編
2016年9月15日 06:00
いつもご愛顧をありがとうございます。PC Watchは2016年をもって20周年を迎えました。20周年を記念し、PC・IT業界を代表する企業のトップの方にインタビューを行ないました。特別企画ということで、通常であれば企業の戦略や製品について伺うところ、今回はインタビューに対応いただく方の行きつけやお勧めの料理店にて会食を行ないながら、その方の趣味や考え方など人となりに焦点を当てた質問を行ないました。この企画を通じて、企業の経営を担う人の個性や考え方などを知っていただければ幸いです。基本的に全ての方に同じ質問をしていますので、みなさんの違いも面白いのではと思います。聞き手はPC Watch編集長の若杉です。
第8回目のインタビューのお相手は日本マイクロソフト株式会社代表取締役社長の平野拓也氏です。会食の場として選んでいただいたのは、軽井沢にある「エルミタージュ・ドゥ・タムラ」です。
--:本日はよろしくお願いいたします。まず、こちらのお店を選ばれた理由を教えてください。
平野:私が大手法人担当の役員をやっていた時、CIOの方を中心としたお客様で構成した「夢現会」(むげんかい)というグループを組織化しており、定期的に会合などしていたのですが、その中で年に1回ほど軽井沢でセミナーや勉強会をしたりしていました。そういった中で何度かこちらにお邪魔させていただきました。お食事もおいしいですし、雰囲気もいいんですが、何よりホスピタリティがいいんです。私はお酒が飲めないんですが、そのことをお店の方に伝えると、即席で手作りのアルコールフリーのドリンクを作っていただいたんです。
ちなみに、それはトマトジュースだったんですが、真っ白なんですね。不思議に思ってお店の方に聞いたら、1日かけてトマトジュースを何度もフィルターで濾過して、色を全部こし抜いたものだそうなんです。味はグレープジュースくらい甘いんです。一品一品にそれだけ手間暇をかけられているというのに感銘を受けました。
--:軽井沢にはその夢現会の会合以外でも頻繁に来られるんですか?
平野:個人的にはあまりないですね。過去数回ほどです。別荘の1つでも持っていると言えればいいんですが(笑)。
--:そう言えば軽井沢にはビル・ゲイツ氏が別荘を建てられているという噂がありますね。
平野:噂については聞いたことがありますが、実情については私自身も会社としても正式には分からないんです。
--:ゲイツ氏は今でも日本にちょくちょく来られているんですか。
平野:昨年は1度来ていましたね。
外見にバイアスがかからないアメリカの大学に行き、就職
--:20年前は何をしていましたか。
平野:1996年2月から働き始めたので、社会人1年生でした。その年の8月に結婚したので、個人的なイベント盛りの年でした。
--:最初からマイクロソフトだったんでしょうか。
平野:いえ、マイクロソフトは3社目です。最初は商社の兼松のカリフォルニアシリコンバレー支店に勤務して、半導体装置などを扱っていました。
--:大学もアメリカで卒業されたんでしょうか。
平野:そうです。高校までは日本にいましたが、大学はアメリカに行きました。
--:それはどのような理由から渡米されたのでしょう。
平野:その回答はロングバージョンと、ショートバージョンがあるんですけど(笑)。
--:では、中間くらいで(笑)。
平野:私のバックグラウンドは、父が日本人、母がアメリカ人ということで、このように西洋的な外見で身長も高いと、何もしなくても怒られたり、逆に何もしなくても誉められたり、とにかくスポットライトとサーチライトの両方が当たるんです。そこで、自分の本当の実力がどこにあるのか知りたいと思うようになりました。そこでアメリカに行けば、外見上は同じ条件になると考えたんです。また、母がアメリカ人なので、アメリカを体験することも必要だなと思いました。これがやや簡単なバージョンのお答えです(笑)。
--:平野さんの母国語は日本語なのでしょうか、英語なのでしょうか。
平野:日本語がベースです。高校まで日本で育ちましたし。
--:英語もネイティブだと伺いましたが。
平野:普通に使っています。
--:では、普段考える時は日本語なんですか。
平野:人ってものを考える時、あまり言葉を使わないんですよね。こうして今話している時も、意識的に考えを日本語にしてから話しているのではなく、考えがそのまま口をついて出たのが日本語という感じです。英語を話す時も、言葉についてはあまり意識をしていないです。ただ、日本語を話す時と英語を話す時では、若干性格が変わります(笑)。
--:英語の方がオープンだったり、強気になったりという感じですか。
平野:英語だと直球で話しますね。
--:僕の知り合いは、中華系アメリカ人で、母国語は英語で、中国語もネイティブとして話せるんですね。ので、普段考える時や話す時のベースは英語なんですが、頭の中で数を数える時は中国語なんだそうです。それは中国語の数が非常に規則的で簡単だからだそうです。実際、英語は数の規則性の面では、さまざまな言語の中でかなり不規則な言語です。それから発音すると長いです。一方、中国語の数はほぼ完全な十進法なので、扱いやすいんですよね。
平野:そうなんですね。中国語は大学で2年間勉強しましたが、全然できません(笑)。
--:兼松には何年ほど在籍されていたんでしょう。
平野:2年半くらいです。当時ネットバブルの時代で、周りの社員がお昼に行ったまま、帰ってこなかったりするんです。と言うのも、お昼の間に新しい仕事を見つけて、そっちに移るなんてことが結構ありました(笑)。そして、3年同じ会社にいたら無能、5年いたら化石だとまで言われてたんですね。兼松ではお世話になったし、勉強もさせてもらったんですが、日本の商社なので、ビジネススタイルはシリコンバレーの中ではちょっとタイムスリップしたような感じでした(笑)。
それで、次第にシリコンバレーでソフトウェアの世界に入ってみたいと思うようになり、Arbor Softwareという企業に転職しました。入社後1年ほどでHyperionという企業と合併しました。Arbor Softwareは小さな会社でしたが、Hyperionには日本オフィスもあり、私が日本語を話せるということで、2年間の日本行きの辞令を受けました。ただ、結局2年では済まず、計8年ほどその企業で勤めました。その最後の5年は同社で社長をやらせていただきました。
--:転職の際は、今後はハードよりソフトだという考えがあったのでしょうか。
平野:やはりソフトのメッカであるシリコンバレーにいたので、そちらの世界に行きたいという気持ちが強くなりました。
--:その頃、熱中していたことなどはありますか。
平野:20年前だと家具を直すことに凝っていました。
--:すごくアメリカっぽいですね(笑)。
平野:大きなホテルとかって、数年に1度くらい調度品を入れ替えるので、その放出品としての椅子を1脚10ドルくらいで購入できたりしたんです。その布を自分でいったん剥いで、買ってきた生地に貼り直したり。タンスを塗り直して、敢えて古めかしくしたりしていました。
その後、日本に転勤して、当時マンションに住んでいたんですが、ちょうど娘が生まれるタイミングだったんです。そこで、また家具をリファービッシュしようと思い立ち、リサイクルセンターで家具を買ってきて、バルコニーにいったん置いて、サンダーで研磨して、色を塗り直してということをちょっとずつ進めていたんです。そんなとき、出張を命じられて、出産予定日は日本にいられないことになったんです。それで、出張に出る直前もバルコニーでペンキを塗っていたんですが、その日は天気が荒れていて、突風が吹いていたんです。それで、ペンキが缶ごと吹き飛ばされて、中身をバルコニーの外に全部ぶちまけたんです。
8階に住んでいたので、2階まで壁中が緑色になり、隣家バルコニーチェアなんかも、全て緑色にしてしまったんです(笑)。そして僕は結局、「フライトに遅れるからゴメン!」と言って、全ての後始末を妻に任せて、そのまま出張に出てしまいました(笑)。それがきっかけというわけではないんですが、それ以降、家具直しはしていないです。
幸い、マンションが保険に加入していたので金銭的な損害には至りませんでした。出張から戻った後に、業者が作業して、全てきれいに落とすことができました。
--:家具直しに挑戦されていたということは、手先は器用な方ですか。
平野:自分では悪くはないと思っていますし、手先を動かすのは好きです。
--:次の質問は、これまでの職歴を教えてくださいというものですが、最初の2社についてはお伺いしたので、マイクロソフトへの入社の動機と、その後の職歴を教えてください。
平野:前職で社長職を務め、次の仕事を探していた際、唯一、売り上げ目標や競合を倒すといった話ではなく、「こういう風に世界を変えることができる」と言ったことを会う人会う人が本気で話してくれたのがマイクロソフトだったんです。そういった考え方や価値観に共感し、決定しました。肩書きや給料ではなかったですね。入社は2005年8月です。
そして最初の仕事は、日本のマイクロソフトの3年間の成長戦略を描け、というものでした。入ったばかりの人間にこんな指示は反則だと思いましたね(笑)。もう、毎日クビになると思っていました。実際、コンサルタントの人に助けてもらいつつも、ドラフトを書いて、役員会でプレゼンしたところ、後で「残念だった」と言われました(笑)。
--:その時は落ち込みましたか。
平野:いえ、ある意味、そうだよねと思いました(笑)。自分でも納得のいかないものでしたから。ただ、そのプランが数カ月後に米国本社でも提案されたんですね。そうすると、そのうちの1つのアイディアがサービス部門の成長の1つのレバーになるということで、やってみろと言われたんです。それで、執行役としてサービス部門を率いることになりました。僕は、テクニカルなバックグランドが全くなく、コンサルティングの経験もなかったんですが、それでもやらせてくれるのがマイクロソフトの面白いところだと思います。
それを数年やった後、大手法人営業担当を命じられ、それをまた数年経験したのですが、その内、大学の時と同じように日本だけのスペシャリストでは終わりたくないと思うようになりました。時々、会社の上司にもそのことを相談していたところ、「では、やってこい」という話になりました。日本とアメリカのバックグランドを持つので、足して2で割ったらAPACかなと思ったんですが、箱を空けたら、東欧中央アジアでした。確かに私の見かけは中東人ぽいかもしれませんが、ちょっと驚きました(笑)。それが2011~2014年のことです。ただし、ベースはミュンヘンでした。
--:東欧で働いて、日米とここが違うと感じたことはありましたか。
平野:今までいろんな仕事をさせてもらいましたが、あそこでの仕事が一番刺激的でやりがいがありました。管轄は25カ国です。その中には、それまでほとんど聞いたことのないような国もあるわけです。具体的には、キプロス、アゼルバイジャン、グルジア、アルバニア、ベラルーシ、そしてなぜかモンゴルも入っていたり、カザフスタン、キルギスタン、トルクメニスタンなどなどです。大体が旧ソビエト連邦なんですが、これらの国にはそれまでITというものが普及しておらず、ソ連が崩壊して初めて入ってきました。ですので、当時そこでITを仕事にしている人は、若手でハングリー精神が強く、エネルギーに溢れてました。国には力もお金もないけど、その中でインパクトを出したいと、必死になってるんです。
そういう姿勢はすごく勉強になりましたし、逆に日本はある意味贅沢な国なんだなとも思いました。日本だと、品質は高いけど、根回しして、誰のメンツも潰れないようにやって、「ホウレンソウ」ができているかとか下準備に注力するけど、東欧では一発勝負という感じなんですね。
ただ、それらの地域ではソフトウェアの海賊版のシェアが90~95%だったりするわけです。政府もナンバーワンバンクも100%海賊版を使っていた状態でした。我々は信頼を元に製品の対価を支払ってもらっています。一方、あちらの国々は、マイクロソフト製品の純粋なファンで使ってくれているんですが、ただお金を払ってくれないんですね(笑)。考え方が真逆なんです。
ある国のナンバーワン銀行のトップにアポを取って、飛行機で移動して伺った時、着いてから「頭取が出張になりました」、と言われるんです(笑)。私もどうしたものかと困ったんですが、とっさに「では出張からお戻りになるまで帰りません」と返答したんですね。そうしたら3分後に頭取が出張から帰ってきました(笑)。
別の国でのミーティングに参加していた時、通訳の人が私に「平野、手を出せ、手を上げろ」と言うんです。何だろうと思いつつも、テーブルの上の高さに手を上げながらずっとミーティングしてたんです。相手は教育関係の大臣とかだったんですが、後で聞いたら、この国は紛争が続いているので、手をテーブルの下にしまっていると、ナイフか銃を持ってると思われるんだそうです。そこで、お互い安心させるため、手を上げてミーティングするらしいのです。
それから、大体どこにいってもほとんど盗聴されています(笑)。
--:映画で見たような状況ばかりですね(笑)。
平野:おっしゃる通りです。一方でエストニアに行くと、IT先進国でWi-Fiが行き渡っていたりします。そういった、さまざまな状況で仕事をしていると、本当の意味でのダイバーシティを体験できますよね。
--:これまでの人生で、絶体絶命と思ったことはありますか。
平野:さきほどのマンションの件は絶体絶命でしたね(笑)。
--:マンションの所有者や隣人に迷惑をかけたと思いますが、結局そのまま出張に出かけて、出産間近の奥様からは責められたりしなかったのでしょうか。
平野:そりゃぁ、責められますよね(笑)。ピンチですよね(笑)。
--:その危機はどう乗り越えたのでしょうか。
平野:幸い出張時間がある程度冷却してくれました。もし、出張がなければ、より大変なことになってたと思います(笑)。
家については、ドイツにいた2012年、家族で旅行して、帰ってくると、水道が破裂していて、地下にも5部屋くらいあったんですが、それが全部水没したということもありました。冷蔵庫が水に浮いているというのを初めて目撃しましたね(笑)。消防に連絡して、ポンプ車で水を汲み上げてもらったんですが、吐き出された分だけで15万リットルありました。
その時すごいと思ったのが、ドイツの窓の丈夫さ(笑)。いろんなものが浮いてて、湾曲もしてたけど、割れないんですよね。割れていてくれたら、どれだけのものが救われていたか(笑)。
--:ドイツ製品の堅牢さがあだになったわけですね(笑)。
平野:その時は、PCはもちろん壊れましたし、家族の写真、ひな人形など、思い出の品も全部ダメになってしまいました。その後、10日くらいは住む場所がなくてホームレス状態でした(笑)。
--:そちらはもちろん平野さんには責任はないわけですよね。老朽化とかが原因で。
平野:その家は新築だったんですが、原因は工事ミスでした。ここには会社都合で引っ越してきて、手配も任せていたので、保険もやってくれているんだと思ったら、保険には入ってなかったんです(笑)。とは言え、工事ミスなので、施工会社が補償してくれることになったんですが、何度電話をかけても、全く出てもらえませんでした。結局、全部自腹になってしまいました。
--:平野さんの半生でドラマとか映画とか作れそうですよね(笑)。
1つのことにこだわらず、バランスを持って、全体感を判断する力
--:社長になられて仕事上一番変わった点はどんなところでしょう。
平野:基本的には変わっていないですが、とにかく学びが大きかったですね。
--:確か、社長交代の会見を開かれた時、樋口前社長から次期社長の打診を受け驚いたということをおっしゃっていましたが、想定外だったのでしょうか。
平野:樋口の後継の候補者として考えられているというのは感じていましたが、タイミングは想定外でした。ドイツから戻ってマーケティングとオペレーションの責任者になって半年くらいだったので、もう少し新しい役割を与えられて経験を積むのかなと思っていましたので。
社長になって、本質的な内面が変わったということはないですが、社長という肩書きを持つことで、お目にかかる人も社長級の方ということが増えました。本社でもナデラとの会合に参加する機会も増え、必然的にそういう人たちに刺激を受け、糧にさせていただいているとは思います。
それから、前までは自分に科せられた責任を果たすことに専念していましたが、社長になって人前に出てしゃべることも増える中、会社を代表して登壇するにあたり、売り上げ目標やKPIということを超えて、マイクロソフトにしかできない仕事は何なんだろうと考えるようにはなりました。
--:生活面で何か変わったりはしましたか。
平野:太って、白髪が出始めたことでしょうか(笑)。
--:仕事上のモットーや座右の銘を教えてください。
平野:「有志開道」です。目指す先を頭の中で描いて、一歩一歩地道に進んで行かなければと思います。志がないまま社長をやってはダメだと思います。もう1つは、「楽観主義であれ」ということです。アメリカのパウウェル元国務長官が語った「Perpetual optimism is a force multiplier」(永続的な楽観主義は力を何倍にもする)、という言葉に感銘を受けました。
ーー:これまでの話をお伺いして、平野さんは若い頃から、果たして今のままの形でいいんだろうかという疑問を抱き、新しいことに挑戦してきてますよね。志を持って社長職に臨むと言うのも、昔からそういう考え方だったんだろうと感じていますが。
平野:言われてみるとそういう点はあると思います。人生は一度きりですし、全ての人は人生にミッションがあると思っているので、それをとことん突き詰めるのが大切だと思います。大きい仕事よりも難しい仕事をしたいという気持ちがあります。
--:今、具体的に難しいと感じている仕事はありますか。
平野:今、マイクロソフトは大きな変革のど真ん中にいます。箱売り・ライセンス売りという形態から、お客様のデジタル変革をクラウドを通じて行なうという方向にシフトしました。そうすると、製品から、社内のオペレーション、パートナーシップなどありとあらゆることを変えていく必要があります。そして、売上は下げられないわけです。企業によっては、一度変革で落ち込んでも、そこからV字回復を狙うという場合もありますが、うちの場合はV字は許されないので(笑)。
マイクロソフトはPCの市場の成長に併せて成長してきたわけですが、今、PC市場は鈍化している中で、大きく売上を伸ばすのは困難です。そのために、新しいビジネスで牽引していかなければならないのは、抜群に挑戦しがいがありますよね。
--:どちらかと言うと日本の企業はクラウドサービスにまだ不安感があったり、ITシステムを新しくすることにも及び腰だったりするので、日本マイクロソフトの社長としてそういうミッションに取り組むのは他の地域よりも難しいとお考えですか。
平野:どんなことでも新しくするのは難しいわけですが、デジタル変革の先には市場があり、お客様にとっての価値も絶対にあると確信しています。お客様のニーズをきっちり把握し、理解していただき、お客様が予期しないことも提案して、ちょっと驚いてもらうような取り組みが必要かと思います。
--:尊敬する人物を教えてください。
平野:1人を挙げるとなると難しいですね。父親と言ったら母親に怒られそうだし、母親と言ったら父親に怒られそうだし。
--:両親というお答えでも大丈夫ですよ(笑)。
平野:やはり家族ですね。今でも考え方などで影響は受けます。母はアメリカから日本に来て4~50年が経ちますが、その中での経験は、先ほどの話を遙かに超えるようなものがあります。「楽観主義であれ」というのは、そういった家族の考え方がベースになっています。姉の人間性も尊敬しています。
--:ご自身のセールスポイントを教えてください。先ほどの楽観主義もセールスポイントの1つでしょうか。
平野:自分で言うのもおこがましいですが、1つのことにこだわらず、バランスを持って、全体感を判断する力はあるかなと思います。
--:社長という立場では、全体感というのは重要ですよね。
平野:サービスのトップをやらさせていただいてた時、テクニカルな知識は持っていませんでした。ある時は、こんな見かけの30代で酒もゴルフもやらない若造がマイクロソフトの営業責任者でした。東欧にいた時もロシア語なども話せませんでした。これって、間違った人選だと思います(笑)。そこで共通してたのは、自分の力だけでは成功しないという前提があり、周りの人に頼らないとやっていけないわけです。そういった中でやってこれたのは、バランス感覚というと格好良すぎるかもしれませんが、サバイバルスキルは持っているのかなと思います。
ところで、これは不思議な料理ですよね。中身は何なんだろう。
--:高級な料理ってたまに食べ方が分からないですよね。あとは、殻っぽかったりして、どこまで食べていいのか分からない物とか。それをお店の方に聞くのも恥ずかしいというか、はばかられたり。それから、ちょっと高級なホテルあるあるとして、お風呂の蛇口のひねり方が分からないっていうのもあります(笑)。デザインが未来的すぎて、どうひねったらいいのか分からなかったり、デザイン優先で、どっちがお湯でどっちが水なのか書いてなかったりするんですよね。
平野:あとは、シャワーヘッドが複数あって、どこからお湯が出るのか分からないとかもありますよね(笑)。
--:ですよね。ついこの間も中国の杭州に行った時、壁に掛かったシャワーからお湯が出ると思って蛇口をひねったら、天井のもう1つのシャワーヘッドから水が降ってきて、まだ服を着ていたのにびしょ濡れになりました。
平野:あるホテルは、壁掛けと、天井と、あと真横に水が出るヘッドの3つがあって、どこから出るのか、本当分かりませんでした(笑)。
--:おしゃれさを狙いすぎて、直感的に理解できないUIって良くないです。話をこっちの業界に戻すと、PCにタッチがもたらされて、触れば動くというのは、誰でも分かるUIですよね。それまでのマウスって、初めての人には分かりにくくて、最初はダブルクリックができないとか、よく聞きます。
平野:おっしゃる通り、一度タッチ画面を経験すると、非タッチには戻りにくいですよね。ちなみに、マイクロソフトでの何十年も前の笑い話があって、サポートデスクにユーザーから電話がかかってきて、デスクが小さすぎて、このマウスではダメですと言うんだそうです。どういうことかと言うと、カーソルを端に持って行きたい時に、マウスをいったん持ち上げて戻すということが分からず、一息でカーソルを移動させようとしたけど、机の幅が足りないと言うことだったらしんです(笑)。
--:これは僕が以前ネットで見かけた話なんですが、ある人が父親から「インターネットが狭いからなんとかして欲しい」と言われたそうなんです。「インターネットが狭いってどういうことだ?」と思ったら、いろんなソフトをインストールするたびに、ブラウザのサードパーティアドオンが何個もインストールされて、ブラウザ画面の8割くらいがアドオンで占拠されて、縦数cmくらいしか閲覧画面がなくなってたらしいんですね。それは確かに「狭い」なと(笑)。PCリテラシーが高くないと、ソフトインストール時に全部「はい」を押してしまってこうなるわけですよね。これはユーザーフレンドリーじゃないなと思います。今でもPCのデスクトップアプリって初心者にはインストールが難しいですよね。
平野:そう言えば、先ほど、社長になって何が変わったかという質問がありましたが、サポートデスク代わりに使われることが増えましたね(笑)。友人、知人にしてみれば、マイクロソフトの社長なんだから何でも知ってるだろうとなるわけです(笑)。
--:そのあたりはできる限りサポートされるんですか。
平野:会社の看板も背負ってますし、やりますね(笑)。
--:普段の夕食ではいきつけのお店とかありますか。
平野:会食がない場合、外食はほぼゼロです。自宅で妻の手料理をいただいています。ただ、今は家族が帰省しているので、昨日の夕食は吉野家でした(笑)。たまに食べるとおいしいですよね。時々、無性にカップ麺が食べたくなったりしませんか。
--:そうですね、たまに食べるハンバーガーって本当おいしいです(笑)。
平野:吉野家って、あの価格であの味は世界最高のファーストフードだと思います。
--:基本的に僕は食に無頓着なんですね。自分だけのために積極的においしい物を探したりしないんです。もちろんおいしい物は好きだけど、基本的に効率的に栄養素を摂取できるかという観点でしか食事を見ていないんです。なので、海外取材の時も、マクドナルドで済ませることが多いんです。すると周りからは、せっかく海外に行ったのにもったいないと言われるんですが、海外取材は時間との戦いなんで、マックは効率的ですし、逆に日本ではほとんどマックに行かないので、久々のマックはおいしいなあ、という感じなんです(笑)。
次の質問です。出社から退社までの大体の1日の仕事内容を教えてください。
平野:朝は8時頃出社します。仕事内容は社内ミーティングや海外拠点との電話会議、お客様とのミーティング、あとは日によっては外で講演なんかも多いです。
--:仕事が終わるのは何時頃ですか。
平野:会食がなければ7時半頃を目処にしてオフィスを出て、帰宅して、家でも寝る前に少し仕事をします。
--:会食も仕事の内ですし、自宅でも仕事をなさると言うことは、オンとオフって明確な区切りがなくて、いつでも仕事のことが脳裏にある感じですか。
平野:ワークバランスという言葉もありますが、個人的にそれはないと思っていて、あるのはワークライフチョイスですよね。どうしても仕事とプライベートは両立しなくて、どちらかを犠牲にしながらやるしかありません。ただ、そこで惰性でやってしまうと、ワークバランスもワークライフチョイスもなくなっくるので、そこでどう意識して、仕事と家庭の選択をその時々にしていくかだと思います。私の場合、基本的には24時間オンという感覚で、完全なオフはなくて、代わりにパワーセーブモードに入る感じですね(笑)。とは言え、家庭のために意図的に仕事をしないでおくということもあります。
--:スケジュールはどのように管理していますか。
平野:僕は全てを秘書と妻に託しています。ちなみに、先ほど1日の大体の仕事内容を答えましたが、外に出かけるために社内ミーティングはやりすぎないよう、自分のスケジュールの中で何割までという割合を決めて秘書に調整してもらってます。そして四半期ごとに、何割を何に使ったということをチェックしています。
--:当然、紙の手帳とかは使わず、オンラインで確認、調整されてるんですよね。
平野:そうですね。最近は、社長になったからか、あるいは年を取ったからというのもあるかもしれませんが、体力のリカバリーについても考えるようにしています。あるスポーツセラピストに伺った話で、「どこそこの社長は1日数時間しか寝ないと鼻高々に語っているけど、それは時間配分ができない無能さをひけらかしてるに過ぎない」、「短い睡眠時間で出社するのは、二日酔いで出社するのと変わらない」と言うんですね。それには共感します。
--:今は睡眠時間どれくらいですか。
平野:そこを突っ込まれると、無能さを露出してしまうことになるんですが、少ない方かもしれません(笑)。頑張って、7時間寝ていると言えるようにしたいと思います。
--:スケジュール管理は秘書の方と奥様にお任せと言うことは、仕事は秘書の方、プライベートは奥様に調整してもらってるということですか。
平野:いえ、妻と秘書が相談して決めます(笑)。仕事もそうですし、休みはいつにするということも2人が調整して決めています。
--:そのパターンはこの連載でも初めて聞きました(笑)。
平野:家庭に仕事は持ち込まない人がいますよね。僕はその逆なんです。もちろん機密情報とかは家では話しませんが、僕が多くの時間を仕事に割いて、妻は自分のことをしている中、なかなか共有できる時間が持てなくなると、夫婦生活が成立しにくくなるじゃないですか。ですので、どういうことをやって、どういうことを学んだというようなことは、できるだけ妻と共有するようにしています。それによって、妻から仕事に対する理解も得られやすくなります。そういう意味で、妻と秘書が話すというのは、自然な流れなんです。
--:つまり、平野さんの仕事を家庭に持ち込むというのは、家で仕事をするというより、家庭で仕事の話を共有するということなんですね。
平野:そうです。と言っても、先ほどの通り、家でもたまに仕事はしているんですが(笑)。
--:携帯電話は何を使っていますか。
平野:今は「VAIO Phone Biz」です。
--:それ1台でこなしてらっしゃるんですか。
平野:そうです。オフィスではContinuumを使ってデスクトップ代わりに使うこともあります。
--:個人的には発表会などで聞いていますが、せっかくの機会なので読者向けに、Windows 10 Mobileがビジネス用スマートフォンのプラットフォームとして、どこがいいのか、簡潔に説明してもらえますか。
平野:まずはセキュリティに関して一切心配がいらないという点が強みです。それから、Microsoft Officeなどオフィスアプリが十分な性能と高い互換性で動かせる点ですね。
--:そう言えば、日本マイクロソフトが独自に導入したLumia 830(関連記事)は使っていないんですか。
平野:はい。当時はほかに選択肢がなかったのでLumiaを社内導入しましたが、現時点では日本国内で十数機種のWindows 10 Mobile機が投入されましたので、順次それらに切り替えている最中です。
趣味は旅行。行った国の数は60超
--:プライベートではどのようにPCを使っていますか。
平野:自宅では「Surface」を使っています。個人的には仕事での利用が多いんですが、子供はお絵かきに使ってたりします(笑)。ちなみに、僕らが子供の頃は、家庭では同じTVで同じ番組を観ていましたが、今だと我が家でも、子供は自分のスマートフォンなんかで、自分の好きなコンテンツを観てますね。
それから、これも自分の話ではないですが、私が日本に帰国した直後は、4人いる子供の1人にホームスクールをさせていたんですね。毎日、PCを使ってインターナショナルプログラムを海外の先生からネットワーク越しに教わっていました。宿題もデジタルで、時には映像を作ったりもしていました。
--:今の趣味はなんですか。
平野:また難しい質問ですね(笑)。
--:難しいですか(笑)?
平野:趣味系の話は苦手なんですよね(笑)。旅行は好きです。家族でいろんな国に行きます。仕事でも東欧にいたりしましたが、過去に行った国の数は60強くらいです。それから、社長になったということで、2カ月くらい前にゴルフを再開したんですが、なるべく仕事ではなく、楽しんでやれる趣味にできたらなと思っています。
過去には法人担当だったときに樋口からやるように言われて数回やった程度です。社長になって、ゴルフに誘われた時に、適当に流してたつもりが、やるというように取られて、ある時気付いたら2週間後にゴルフの予定が入れられていたんです。それで慌ててクラブを買って、レッスンも3回くらい受けて、さあ行こうと思ったらキャリーバッグをまだ買っていなくて、慌ててアマゾンで買って臨んだという感じでした(笑)。やってみると、はまる人の気持ちは分かりますね。うまく飛んだ時とか、カップに入った時は快感ですね。まだまだへたくそなんですけど。
--:平野さんは体格がいいので、スポーツ万能だと思われませんか。
平野:走ったり体を動かすのは好きです。
--:何か特技はお持ちですか。
平野:ない!
--:バイリンガルは1つの特技では。
平野:しゃべれますが、特技としてはつまらないですよね。ちなみに、読む速度は日本語より英語の方が遅いので、大学生の時に個人の本は英語のものしか読まないと決めて、今もそれは実行中です。
--:月に何冊くらい読まれるんですか。
平野:あまり量は多くないです。月に数冊程度です。
--:ジャンルは?
平野:ビジネスもあれば、小説もあります。今読んでいるのは、Nike創業者の自叙伝です。
--:休日はどのように過ごされていますか。
平野:輝いたことはしてないですね(笑)。えらく普通に過ごしています。買い物したり、子供と遊んだり、家事を手伝ったり。
--:休日には仕事はされますか。
平野:メールを読む程度はやります。以前は休日は仕事はしないと決めていたんですが、社長になってからは、そうも言ってられなくなりました。
--:個人的なもので(家などを除く)、今までで一番高い買い物は何ですか。
平野:1つのものではないんですが、家族旅行をするとよく現地の面白い物をお土産に買って帰るんですね。絵画だったり家具だったり、絨毯だったり。なので、家の中にはそういういろんな国のものがあります。一応、全体感があまりちぐはぐにならないようには気をつけています。累計で言うと、それらでしょうか。
--:その中で一番思い出深い物はなんでしょう。
平野:選ぶのは難しいけど、1つはオーストリアの古いチェストですね。妻が気に入ったんですが、僕はあまり好きじゃなかったんですね(笑)。それで結構押し問答して、最終的には妻が折れて買わなかったんですが、日本に戻る際に、こっそり買ってプレゼントしたのは、自分でも結構イケてたなと思います(笑)。
逆サプライズもあって、トルコに行った歳、そこの名物の絨毯は結構値段が高いので、事前に妻に「買わないよね?」と何度も念を押されたんです。その時は、先に家族が現地に行ってて、僕が後から到着すると、妻が絨毯屋に行こうと言うんですね。「でも、買わないって言ったよね?」って聞くと、「大丈夫、もう3つ選んでおいたから」って言うんです(笑)。
--:僕も旅行とか出張に行くと、そこまで大きな物ではないですが、その国・地域っぽい置物とか小物を買って帰ることが多いんです。例えば中国だと兵馬俑のミニチュアとか。それをローチェストの上に敢えて雑多に飾ってあって、その無国籍さとか無秩序さが気に入ってるんですが、友達からは「何このゴミ?」って言われるんですよね(笑)。
平野:でも、それは自分だけに分かってる楽しい世界ですよね。
--:以前、ニューヨークに行った時、ある公園の中のショップで、台座がエイリアンになっている大きな鉄製のテーブルがあったんですね。そこのお店は、鉄くずをうまく組み合わせた、パンクで退廃的な雰囲気のフィギュアとかを売ってるんですが、そのテーブルのエイリアンもすごくできがいいんです。値段も600ドルと破格だったので、本当に買いたかったけど、持って帰れないので諦めました。
平野:でも、それは買っちゃうと奥さんに叱られるやつですよね。
--:独り身なので、その心配はないんです(笑)。
平野:じゃぁ、買っちゃえばよかったのに。
--:海外だったので諦めました。日本で売ってたら確実に買いますね(笑)。
--:今一番欲しいものはなんですか。
平野:有形の物ではないです。つまらない答えですが、時間ですね。
--:時間があったら何をしたいですか。
平野:自分のプロジェクトのようなものをやってみたいです。自分の知識や経験を活かして世の中に貢献できたらなと思います。元々、何かを作ったり、始めたりと言うことに面白みを感じるので。それと、再度大学に行って心理学など勉強したいなとも思います。あるいは、今度こそ本気で家具の直し方を学んで、立派な物を作ったり(笑)、楽器を習ったりもしてみたいです。実はミュージカルが好きだったりするので、ブロードウェイに行って、1カ月くらいかけて全部見倒したりもしたいですね。
--:楽器をやるとしたら、どの楽器ですか。
平野:ピアノをすこしかじったことがあるので、もう少し真剣にやってみたいですね。時間があったら、本当、いろいろ挑戦したいです。
--:睡眠時間も十分取れますね(笑)。
平野:ですね(笑)。寝てらっしゃいますか?
--:普段は6時間くらい寝てます。寝れないのは海外イベントの取材の時ですね。最初の2日間くらいは、5時起きで26時までずっと仕事だったりするので。
--:好きなブランドを教えてください。
平野:あまりこだわりはないです。強いて言うなら、靴は買うブランドが絞られます。例えばアレン・エドモンズとか。
--:それは好きな理由みたいなものはあるんですか。
平野:履き心地ですね。実は、オバマ大統領もこのブランドの靴を履いてるそうなんですが、それは後から知った事実で(笑)、僕が最初に買ったのは、たまたまディスカウントしてたので、儲けもの! と思ったからです(笑)。
--:個人的にこのヒト・モノに勝てないというのはありますか。
平野:みなさんですね。自分には尖った点がないので、1つ1つを見ると全部周りの人に負けてるんですよね。社長になる以前も、周りの部下には勝てないと思ってましたし。
--:謙遜されてる部分も多いとはあると思うんですが、優れた点がないながらも、社長になれたのには何か要因があったからだと思います。その点はご自分ではどう分析されてますか。
平野:家庭環境ですかね。やれば絶対なんとかなると思って育ってきたので。負けん気の強さもあると思います。
将来は自分で学校を設立したい
--:20年後どのようなことをしていたいですか。
平野:願わくば、20年よりも前にですが、社会貢献をできればと思います。例えば青少年の育成ですとか。
--:それはビル・ゲイツ氏の活動に感化された部分もあったりするんですか。
平野:それは関係ないですね。マイクロソフトに入る前から、自分で学校を作りたいと思っていました。元々千葉に住んでいて、千葉は東京の次に帰国子女の数が多いのに、インターナショナルスクールがないんですね。実際に、それに向けた動きもしていたんですが、マイクロソフトの入社のタイミングに重なったので、できませんでした。ので、いつしか実現したいと思っています。
--:PCは20年後どうなっていると思いますか。
平野:それが分かっている人がいたら天才ですね(笑)。とりあえず、クラウドはもう当然のものとなり、その時はクラウドとは呼んでいないかもしれませんが、コンピューティングパワーや人工知能がものすごいスケールになっていますよね。PCなどのデバイスは、もっとコグニティブになって、人と自然な形でインタラクションできるようになっていると思います。
--:20年後、人工知能は人間の知能を超えていると思いますか。
平野:それは「知能」の定義によりますね。知識だったり、情報のキャパシティという意味なら、人間を超えているかもしれません。
--:例えば、今でも女子高生AI「りんな」(関連記事)が、かなり自然な会話をして、ぱっと見だと向こう側にいるのが人間なのかAIなのか区別が付かないところまで来ていますが、20年後に、機械が人間と対等に思考するようになっていると思いますか。
平野:それには2つの視点があると思います。1つには、そういう技術がアベイラブル(実現)になっているかという意味では、可能性はあると思います。ただ、それが全ての人にアクセシブル(利用可能)になってるかは別問題だと思います。
--:そうですね。今、人工知能はホットな話題で、人工知能やロボットが人間の職を奪うのではと言う議論もありますが、将来それらを持てる人と持てない人が出てきて、裕福な人はAIに自分の生活をサポートしてもらい、そうでない人との格差がさらに広がるという観点もありますよね。
平野:人工知能と言うと、技術に感心が行きがちですが、もっと議論すべきなのは、それを利用可能にするインフラを張り巡らせて、アクセシビリティを上げていく点ですよね。
--:それから、人工知能に対するリテラシーを上げていく取り組みも必要ですよね。新しい技術が出たばかりだと、その使い方がまだ不透明ですし、包丁が料理にも人を傷つけるのにも使えるように、人工知能もいい方にも悪い方にも使えるので。ここでやり方を間違えると、例えばドローンのように、犯罪や事故など、一部のマイナスなことにばかり目が行って、普及が妨げられ、クリエイティブなことや災害調査などということに利用しにくくなるのは防がないとダメだと思います。
平野:人工知能については、もうやらないという選択肢はないところまで来てると思うので、そういう取り組みもやっていかないといけませんね。
--:これから社会人になる20歳の人に、どのような人生を歩むべきかメッセージをお願いします。
平野:自分の可能性をとことん追求するという考えをいつも持って、いろんなことに挑戦して欲しい。それに尽きます。チャンスがあったら、躊躇せず前進することが重要です。そして、現状に満足せず、敢えて自分を窮地に立たせるのも大事だと思います。きれいにまとめたり、いつも正解を出そうとしたり、いつも満点を狙うようだと、変なプライドが邪魔して、新しいことに挑戦できなくなります。若い内に、失敗するかもと恐れながらも挑戦することで、その後の人生が豊かになったり、キャリアに繋がっていくと思います。
それから、日本では伝統的なプロセスにこだわりがちですが、それに従おうと頭を悩ますのは無駄な努力だと思います。一方、失敗するかもしれないけど、例えば自分の能力を伸ばすためとか、世界を変えるという野望を持って挑戦するのは、例え成功しなくても無駄な努力にはなりません。
読者プレゼント
この企画では、登場いただく方に記念品を読者プレゼントとしてご提供いただいています。平野さんにはOffice 365 Solo(プロダクトキー)、ユニバーサルフォールダブルキーボード、ワイヤレスディスプレイアダプタをご提供いただきました。普段、ご自身でも使われているそうです。ふるってご応募ください。
応募方法
応募方法:下記リンクの応募フォームに必要事項を入力して送信してください
応募締切:2016年9月19日(月) 0:00まで
※ 応募フォームの送信はSSL対応ブラウザをご利用ください。SSL非対応のブラウザではご応募できません。