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会議中の別件メール送信など“内職”を見抜くAI。日本マイクロソフトの新たな働き方改革提案

働き方改革を推進する日本マイクロソフトの社内会議室の1つ。手前にはSurface Hubもある

 日本マイクロソフト株式会社は17日、「働き方改革への最新の取り組み」と題した記者発表会を開催した。

 同社は自社主力製品のWindowsやOffice 365といったソリューションの提供だけでなく、パートナー各社や政府・自治体などとも連携して“新しい働き方”を示す啓蒙活動を行なっており、テレワークの早期導入やAI活用、先日発表されたSkype for Business Onlineによるオンライン会議の効率化などを推し進めている。

 今回、日本マイクロソフトが取り組んでいるその働き方改革の一端として、その内容や自社オフィスでの実際の仕事のやり取りなどが披露された。

経営者の働き方改革に対する注目度は高いが……

 今回説明を行なったのは日本マイクロソフト株式会社 代表取締役社長の平野拓也氏で、「ワークスタイル変革のリーディングカンパニーを目指し、テレワークの導入といった新しい働き方を提案するキャンペーンを推し進めてきた結果として、パートナー各社などからの多くのフィードバック厚生労働省からの表彰を受けることができた」と述べた。

 じっさい、働き方に対するある調査では、経営課題として働き方改革を重視するという経営者が79%と多数に上り、ついで売上・利益の拡大が69%、コスト削減が70%、顧客満足度向上が68%と、働き方に対する取り組みに注目が集まっているという。

 ただし、平野氏によれば日本企業では労働環境のデジタル化がアジア全体と比べると大きく遅れているとしており、経営者のマインドや会社の支援が不可欠という。平野氏はこれまでどおり働き方の改革は推進していくが、今後は働き方で何ができるかを考えていくことも必要であると説く。

日本マイクロソフト株式会社 代表取締役社長の平野拓也氏
日本マイクロソフトが推進してきた働き方改革
経営者の79%が働き方の改革について感心を寄せている
日本では働き方改革を促すためのデジタル環境の整備がアジア各国よりも相当遅れている

AIを使って社員の働き方に“気づき”を与える

日本マイクロソフトが社内で進めている働き方改革の例

 日本マイクロソフトで行なわれている働き方改革の取り組みとして例に出されたのが、社員自らが「働き方で改革」を行なっていくというもので、Office 365に備わっている「MyAnalytics」というAIを活用して時間の使い方を効率化するという機能。

 MyAnalyticsは、Office 365を利用している各ユーザーの時間の使い方や誰と会議に参加しているかといった動向をビッグデータとして活用し、ユーザーに対してAIが仕事の仕方を提案していく。MyAnalyticsではユーザー自身も会議時間、メール時間、フォーカス時間、残業時間などを閲覧できるようになっている。

 具体的にAIが提示する内容としては、会議中に別件のメールを出すなど誰もが経験があると思われる“内職”が頻繁に発生していた場合に、AIが「義理で招待されていませんか? ●●●さんが開催した会議でマルチタスクをこなすことが多いです。」という歯に衣着せぬメッセージを表示し、ユーザーに検討を勧める。

 また、「先週は、自分が開催者である会議の開始時に頻繁にメールを送信していました。集中を維持しましょう。メモを整理した議題を作成して、グループの関心を引き続けましょう」、「29%の会議が●●●さんと一緒でした。分担することで、両方の予定表に余裕ができます」といった提案を行なう。

 日本マイクロソフトが実際にMyAnalyticsを使い、4部門(人事、ファイナンス、マーケティング、営業)の41名で4カ月間検証を行なったところ、これまで漠然としていた問題意識が見えるようになり、会議時間が27%削減、メールに頼らなくなったことでのコミュニケーションの円滑化、集中して作業する時間の50%増加などが見られたという。これらは4部門合計で3,579時間の削減となっており、従業員2,000人相当の会社で業務時間削減効果を一般的な残業時間換算した場合に年間7億円の削減につながったとしている。

AI活用で社員の働き方の見える化を行なうMyAnalytics
ユーザーは自分の会議時間、メール時間、フォーカス時間(集中している時間)、残業時間などを確認でき、これらに基づいてAIが提案を行なう
会議で内職を頻繁に行なっていた場合に、AIはその会議への参加に疑問を呈し、「義理で招待されていませんか? ●●●さんが開催した会議でマルチタスクをこなすことが多いです」と、ユーザーに“気づき”を与える
実際にMyAnalyticsを社内で検証してみたところ、会議の効率化などが図られ、多くの時間を削減できるようになった

 このほかにも、Office 365では「Microsoft Teams」という会話ベースのプロジェクト横断支援アプリも使われており、チームが部門を横断して会話を行ないやすい環境作りを提供する。

 また、会議を設定する際にAIが調整を行なう「秘書BOT」という機能も活用されており、会議参加者を選べばあとは各人の空き時間を自動的に割り出して会議室を予約、会議が設定されたことをそれぞれに通達する。参加者が多い会議の場合、各自の時間の確認をするといった調整の手間が発生するが、AI活用でこれを省くことができるという。

会話ベースで使えるプロジェクト支援アプリ「Microsoft Teams」
会議予約を人に代わって行なう秘書BOT

 今回の発表会では、日本マイクロソフトの社内見学ツアーも用意されており、同社の55型/84型の大型ディスプレイ搭載PC「Surface Hub」を利用した仕事の仕方を見ることもできた。

 日本マイクロソフトでは社内に30台のSurface Hubが置かれており、オープンスペースや会議室で活用されている。今回はオープンスペースに置かれたSurface Hubでデモンストレーションが行なわれ、長机の先に置かれたSurface Hubで資料の内容を大画面で確認したり、Surface Hubを使って社内のメンバーを電話会議として参加させたりといった使い方が披露された。

日本マイクロソフトのオープンスペースに置かれたSurface Hub
Surface Hub上でのプレゼン
分析ソフトのPOWER BIなどを動作させている
ノートPCを使って電話会議に参加させることも可能
最近ではSharePoint上でPOWER BIを動作させられるようになった。以前より顧客からの要望が多かったという

 すでに日本マイクロソフトの働き方改革の提案を受け、実際に導入することで効率化された企業などもあるが、今後も社会全体にこういった提案を行なっていき、ビジネス創出の機会を狙う。

 平野氏は、同社は長きにわたって積み上げてきたノウハウ、デジタルトランスメーション、セキュリティ基盤を持っており、それらを活用することでパートナーなどとともに、新しい働き方のためのエコシステム構築を図っていくとしている。